2017年09月25日

共感(きょうかん)

人の意見や感情などにそのとおりだと感じること。

日経「こころの経済学」のコーナーで、「共感」のことが目に留まりました。
「sympathy」の訳が戦前・戦後・現在で変化していたというものです。
戦前は“同情”と訳され、
戦後に“同感”
そして最近は“共感”の訳が増加。
「同情」は戦前、他人の喜びと悲しみの両方を対象としましたが、戦後は他人の不幸への気持ちのみを表すようになり、「共感」という新語が登場したのです。

「同情」「同感」「共感」は
誰もが混同することなく使い分けていると思いますが、改めてその違いに注目してみたいと思います。

「同情」
Webにズバリと核心を突いた説明がありました。
< 憐れみに支えられた
一方的な
得てして上から目線の
マイナスの出来事に関する共感 >

「同感」
「私もそう思う」「わかる」といった同意を示す気持ち。
同じ価値観を持っている人には持ちやすいが、異なる価値観を持つ相手には持ちにくい。

「共感」
他者の立場になって思いを感じ取ろうとする気持ち。    
異なる価値観を持つ相手に対しても持つことができる。

心理学上の意味を見ると、
「sympathy」
他人の体験する感情を自分のもののように感じとること。
「empathy」
人・物への感情移入。

同情の類語に「惻隠」「憐憫」という難しい語があります。
「惻隠」(そくいん)
かわいそうに思うこと。あわれむこと。
由来は、
孟子の句「惻隠之心仁之端也」「無惻隠之心非人也」等から。

「憐憫」(れんびん)
かわいそうに思うこと。あわれむこと。

「憐」レン・あわ-れむ
1、気の毒に思う。あわれむ。
2、かわいく思う。いとおしむ。

「憫」ビン・ミン・あわ-れむ・うれ-える
気の毒に思う。あわれむ。




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「かわいそう」と「かわいい」は遠くない感情?

前回「共感」の類語で出てきた「憐憫」の「憐」に
“かわいく思う” “いとおしむ” という意味が含まれていて、
「んっ?」と思った方がいらっしゃったのでは?
というわけで、今回に繋がりました。

「可愛い」は当て字です。
「かわいい」は、もともと“不憫”や“気の毒”という意味で、
それが中世以降に変化して“かわいい”になったようです。

▼「かわいい」の変遷
かほはゆし (顔映し)
↓ かははゆし 音変化
↓ かはゆし 短縮
↓ かわゆい 口語
↓ かわいい

「映し」(はゆし)
1、まばゆい
2、きまりが悪い。恥ずかしい。照れくさい。

「面映ゆし」(おもはゆし)
きまりが悪い。

「かははゆし」
恥ずかしさに顔が赤らむ思い。

「かはゆし」
1、恥ずかしい。気まりが悪い。
2、見るにしのびない。かわいそうで見ていられない。
3、かわいらしい。いとしい。

平安時代には「かはゆし」は “恥ずかしい” という意味で使われていて、
鎌倉時代に “可哀想でみていられない” という意味になり、
江戸初期までは “かわいそう” でしたが、
江戸から明治にかけて “愛らしい” “いとおしい” に変化します。
方言には古い言葉が残っていることが多いですが、
飛騨の方言では「かわいい」は “かわいそう” の意味だそうです。

“哀れみ”の感情から手を差し伸べたいという気持ちになり、
寄り添うことで “いとしい” という気持ちに変わっていく。
愛情が芽生えれば “かわいく” 見えてくるもの。
そんな風な流れを想像しました。

若い子がなんでもかんでも「カワイー」と言ってるのを
なんだかなーという思いで聞いていましたが、
「かわいい」が “憐憫” に根差した語だと知ってしまうと、
私の中で、許容範囲がぐっと広がりました。
今や「カワイー」は世界に通用する語になっています。

ちなみに、
「愛しい」(いとしい)は「いとおしい」から。
「愛おしい」
1、たまらなくかわいい。
2、気の毒だ。
3、つらい。

「愛しい」は「厭う」からの派生という説があります。
「いとおしい」もまた、他人に対して “かわいそう” と思う気持ちから、“かわいい” 意が生じています。

「かわいい」「いとしい」いずれにしても、根底に憐憫の情がありました。




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2017年09月24日

多幸感(たこうかん)

多幸感ってよく聞きますが、変換できないんですね。
念のためと思って辞書を引いてみると

「多幸感」(たこうかん)
非常に幸せな感じ。
特に、薬物などがもたらす過度の幸福感についていう。

“薬物”の文字が。
多幸感って、盛られた幸福感なんですね。
それが一般に使われるようになって、
単に“幸せがいっぱい”と思っている人も多いかもしれません。
「多幸感に包まれる」と言わない方がいいかもしれません。

・皆様のご多幸をお祈り致します
「ご多幸」は正しい使い方です。

文書でよく見られるのが「幸甚」(こうじん)。
“幸いなること 甚(はなは)だし”です。
ちょっと「甚だし」という表現に違和感を覚えます。
「甚だしい」(はなはだしい)は、
“普通の度合いをはるかに超えてる”意で、よくないことに使います。
“幸せすぎて怖い”といった気持ちの表れでしょうか。
・ご出席いただければ幸甚に存じます
・お会いできましたことは幸甚の至りでございます。

私が「射幸心」とういう語を知ったのは遅くて、カジノ誘致がメディアで騒がれた頃。
ギャンブル依存症が心配されるといった声があがるなかで、
「射幸心」という語が耳に入ってきました。

「射幸心」(しゃこうしん)
幸運を得たいと願う感情のこと。

「射幸」(しゃこう)
偶然に得られる成功や利益を当てにすること。


「幸」のつく熟語を見ていて、「幸」が天皇を表す語になっていることに気づきました。

「行幸」(ぎょうこう)
天皇が外出すること。御幸(みゆき)

「還幸」(かんこう)
天皇が出先から帰ること。

「潜幸」(せんこう)
天皇がひそかに行幸すること。

「臨幸」(りんこう)
天皇が行幸してその場に臨むこと。臨御。
・式典に臨幸される

「行幸啓」(ぎょうこうけい)/「還幸啓」
天皇・皇后がご一緒に外出されること/お帰りになること。

天皇を表す特別な語があります。

「玉体」(ぎょくたい)--- 天皇の身体
「玉音」(ぎょくおん)--- 天皇の声、歩行
「玉顔」/「龍顔」(りゅうがん)--- 天皇の顔
「宸襟」(しんきん)--- 天皇の心
「叡慮」(えいりょ)・「聖慮」--- 天皇の考え・気持ち。
「御真影」(ごしんえい)--- 天皇の写真
「御親覧」(ごしんらん)--- 天皇の出席

「宸」シン
天子の住まい。また、天子に関する物事に冠する語。



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2017年09月23日

おかんむり

機嫌が悪いこと。怒っていること。不機嫌なさま。

・今日の部長はおかんむりだ。
・彼女はちょっとおかんむりだった。

「おかんむり」は、
「冠(かんむり)を曲げる」を縮めた言い方です。
冠とは頭にかぶるものの総称で、特に公家などが正装でかぶった物。
日本人が公の場で冠をかぶるようになったのは、推古天皇の時代(554〜628)とされます。
公家の中には反発心からか、わざと曲げてかぶる者もいて、ここから「冠を曲げる」という言葉が生まれ、
転じて“反発”や“腹を立てる”という意味で使われるようになりました。

「おかんむり」はおっとりとした響きで、角を感じませんね。

「つむじを曲げる」「へそを曲げる」も似た表現で、
「曲げる」は本来の形をゆがめることから、
“気を損じた”さまを表します。

「ご機嫌斜め」
機嫌が悪いこと。

この“斜め”もおもしろい表現ですよね。

日本人は円形・垂直・水平をよしとする考えがあり、
三角形など傾いたものを好まず、よくないとしたことから、
古語「なのめ」には “いいかげんだ” “おろそかだ” という意味がありました。
これが「ごきげんななめ」という言い方に残ったとされています。
辞書を引くと、
「斜」には“傾いてる”意の他に、人の気持ちなどが普通とは違っていること。わるいこと。
とありました。

Webにおもしろい解釈がありました。
・腹を “立てる” ほどではない、その途中の斜め程度。
・斜め → 気分が下り坂。

斜といえば、「斜に構える」という語があります。
1、剣道で、刀を斜めに構える。
2、身構える。改まった態度をする。
3、物事に正対しないで、皮肉やからかいなどの態度で臨む。

「しゃに構える」 「はすに構える」
2つの言い方がありますが、どちらも正解です。
剣道からきた語で、語源的に言えば「しゃ」です。
剣道には上段・中段・下段という構えがあり、中段の構えは胸元から相手に向かって斜めに刀を突き出す形で、一番隙のない構えになります。
ここから “身構える” “態度を改める” といった意味になりました。
現代では “皮肉な態度” の意味で使われていますね。




posted by 空凛 at 11:23| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月22日

不貞腐れる(ふてくされる)

不平・不満があって、投げやりになったり反抗的になること。
どうして「不貞」?
何か不貞と関係する話でもあり?
残念ながら「不貞」は当て字でした。
紛らわしい当て字はやめてほしいわ。
「ふてくされる」は「ふてる」+「くさる」
動詞「ふてる」は、“投げやりな行動をする”“強情をはる”意。
「ふてぶてしい」の「ふて」と同じで、「太い」からとされます。
「ふてくされる」の「腐る」は
相手の動作に対して軽蔑やののしりの気持ちを表すものです。
・いばりくさる
・まじめくさる
・言いくさる
・寝くさる
「・・くさる」は方言だと思っていました。

「ふてぶてしい」
開き直っていてずぶとい。大胆不敵である。

「ふてぶてしい」には
いくぶんかの“感嘆”のニュアンスも感じます。
太い神経。動じない強さ。
小心者にはこのふてぶてしさが羨ましく映ります。

「やけ」「やけくそ」「やけっぱち」
「自暴自棄」「破れかぶれ」「捨て鉢」
崖っぷちの言葉です。
捨て身で当たって道が開けることもありますけど。

「やけ」の漢字は「自棄」です。
動詞の「焼ける」から。
火事などの災難にあって全財産を焼き、がっかりしてしまう「焼け」から転じて、自暴自棄のふるまいを指すようになりました。

「自暴自棄」(じぼうじき)は孟子由来でした。
<<自ら暴(そこな)う者は、ともに言(かた)ること有るべからず。自ら棄つる者は、ともに為すこと有るべからず>>
不満や失望などが原因で、やけになって自分の身を粗末に扱うこと。

「捨て鉢」の「鉢」は、托鉢の僧が持っている鉢のこと。
修行の厳しさに耐えられず、ヤケを起こして鉢を捨てて逃げ出したことから。

小僧さん、よっぽど辛かったんですね。
情景が浮かんで「捨て鉢」に哀愁を感じます。

「落とし前」(おとしまえ)
もめごとの後始末。そのための金品。

「落とし前をつけてもらおうか」
ドラマでよく聞きますね。
香具師(やし)・的屋(てきや)の間で使われていた隠語で、露店などで商品の値段について客と話をつけること。
「落とす」は“決着させる”意、
「前」は分け前の「前」と同じく金額のことで、
“決着させる金額”というのが原義。
そこから、もめごとなどの“仲に立って話を付ける”意に。
さらに“後始末をつけること”をいうようになりました。




posted by 空凛 at 12:02| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする