2018年11月11日

よしなに

(副詞)
うまいぐあいになるように。よいように。よろしく。
大和言葉。

先日、ラジオから「よしなに」という語が聞こえてきました。
久方ぶりに耳にしました。
年配の方にはまだ現役かもしれませんが、若者には古語かもしれません。
幾つ位までの人がこの語を使っているのでしょう。

ほとんど “よろしく” と同意義で使われています。
使用例
・どうかよしなにお願い致します。
・この先もどうぞよしなにお付き合い下さい。
・どうぞよしなに。
・よしなにお取り計らい下さい。
・よしなにお伝えください。
やわらか言い方ですね。
関西の「よろしゅう」も優しいいい方で、耳に心地よい言葉です。
・よろしゅうおたの申します。
・これからもよろしゅうに。

「よしな」をWebで調べていて、
Wikipediaで「老人語」というものを見つけました。
高齢者の言語主体に特徴的な語彙・表現。
児童語や若者語といった、言語を位相的に捉えた時の分類の一つ。
新明解国語辞典の「老人語」の定義:
すでに青少年の常用語彙の中には無いが、
中年・高年の人ならば日常普通のものとして用いており、
まだ文章語・古語の扱いは出来ない語。
例として取り上げられた語:
日に増し・平に・ゆきがた・よしなに・余人(よにん)
これに対して複数の知識人が、
「自分の常用語に怪しからぬレッテルを貼られた」
として老人語に反論。
その後、
新明解国語辞典は第7版(2012年)で
「老人語」という説明を削除しました。

「老人語」、なんと感じの悪いネーミング。
反発を買うとは想像しなかったのでしょうか。

老人語とされていた語をいくつか紹介します。
・いかつい --- ごつい
・いかばかり(如何許)--- どれほど
・行きしな(いきしな)--- ゆきがけ
・肉置き(ししおき)--- 肉付き
・退る(すさる)--- しりぞく
・空音(そらね)--- うそ
・たんと --- たくさん
・はすかい --- 斜め

「いかつい」「たんと」「はすかい」は普通に使いませんか?
「肉置き」「空音」は言葉拾いで取り上げました。

goo辞書の「よしな」の上に
「よしない」という語がありました。
「よしな」とは関連のない語でしたが、
「よしなしごと」という古語を知りました。

「由無し事」(よしなしごと)
つまらないこと。とりとめもないこと。

「由無し言」(よしなしごと)
意味のないおしゃべり。つまらない話。

「由無し」(よしなし)
理由のないさま。

Webを見ると
「由無し事」はブログで現在も使われていました。











posted by 空凛 at 08:00| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月04日

形容詞「ない」と助動詞「ない」

「おぼつかない」と「とんでもない」は形容詞ですが、
「ない」の部分を
「走らない」「動かない」などの否定の助動詞「ない」と混同した使い方が見られます。

◆「おぼつかない」(形容詞)
×これでは成功はおぼつきません
×これでは成功はおぼつかぬ
○これでは成功はおぼつかない
「おぼつく」という動詞はありません。
おぼつかないの「ない」を「おぼつかぬ」のようにはできません。
「おぼつかない」は一つの独立した単語です。
「覚束無い」と書きますが、これは当て字。
動詞------「おぼつかながる」
形容動詞--「おぼつかなげ」
名詞------「おぼつかなさ」

◆「とんでもない」(形容詞)
×とんでも−ありません
×とんでも−ございません
○とんでもないことです
○とんでもないことでございます

「とんでもない」も一塊の語です。
「ない」の部分だけを
「ありません」「ございません」に変えることは文法的に誤っています。
丁寧に言う場合は、
「とんでもないことです」
「とんでもないことでございます」
という言い方になります。
とはいえ昨今は、
「とんでもありません」
「とんでもございません」はよく耳します。
H19年発表の文化審議会答申の「敬語の指針」には、
相手からのほめ言葉に対して謙遜しながら打ち消す表現として、
「とんでもありません」
「とんでもございません」を使っても、問題ないとしています。
ほめられた場面で、
「とんでもないことでございます」と言うと、
“あなたのほめたことはとんでもないことだ”
という意味にも受け取られかねません。
「とんでもございません」と
「とんでもないことでございます」は、
使うべき場面が違ってきているようです。

形容詞「ない」と助動詞「ない」の見分け方は、
●「ない」を「ぬ」に置換えて読む
「落ち着か-ない」 → 「落ち着か-ぬ」 ○
「美しく-ない」 → 「美しく-ぬ」 ×
●「ない」の前に「は」などの助詞を入れる
「落ち着か-ない」 → 「落ち着か-は-ない」 ×
「美しく-ない」 → 「美しく-は-ない」 ○

「ない」とつく形容詞を拾ってみると、
▽------(1)
そっけない
味気ない
意気地ない
限りない

▽------(2)
あどけない --- あどけなげ(形動)/あどけなさ(名)
せわしない --- せわしなげ(形動)/せわしなさ(名)
切ない --- 切なげ(形動)/切なさ(名)/切ながる(動)
やるせない --- やるせなげ(形動)/やるせなさ(名)
はしたない
滅相もない

「無い」と強調の「ない」を見分けるのは難しいですね。










posted by 空凛 at 08:00| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月28日

語源特集7

◆みみっちい
細かくて、けちくさい。しみったれている。

「みみっちい」の「みみ」は
「微々たるもの」の「微々」が転じたものではないかと言われています。
「寒い」が「さぶい」、
「寂しい」が「さみしい」など、
マ行とバ行の音が入れ替わることがあります。
「微々」も「みみ」と転じて、
“わずか” や “小さい” 意として用いられたものとされています。
「ちい」は「ぼろっちい」「弱っちい」など、
「いかにも〜のように見える」という形容詞を表す語。
「みみっちい」には、ほんとにちまちま感。貧乏臭さが漂います。


◆しどろもどろ
乱れたさま。特に話の調子や論理が整わないさま。

「しどろ」は “秩序がなく乱れている” 意の
形容詞「しどけなし」の「しど」に
接尾語の「ろ」が付いた語。
「もどろ」は “まぎれる” “まどう” 意の
動詞「もどろく」の「もどろ」で、
「しどろ」に語呂を合わせることで、意味を強めたもの。
古くは口調に限らず、
広い意味で何かが乱れたさまを言いました。

「もどろく」
漢字にすると、「斑く」
1、まぎれる。まどう。くらむ。
2、まだらにする。特に、からだに入れ墨をする。


◆すったもんだ
物事がまとまらず、さんざんもめること。ごたつくこと。

漢字で見るとわかりやすいです。
「擦った揉んだ」
摩擦+揉め事。


◆ごまかす
目先をまぎらかし、取りつくろう。

江戸時代にあった胡麻胴乱という胡麻菓子からきています。
胡麻菓子は小麦粉に胡麻を混ぜて焼き膨らましたもので、
中が胴乱のように空洞でした。
胡麻菓子が見かけ倒しだったことから
“偽る” “欺く” という意味に変わりました。
「誤魔化す」「胡麻化す」は当て字。
それにしても、
1つのお菓子から生まれた言葉が今に残っているなんてすごい。
胡麻胴乱にとって名誉のような不名誉のような。

「胴乱」(どうらん)
薬や印などを入れて腰に下げる長方形の袋。

◆けしからん
道理にはずれていて、はなはだよくない。不届きであること。

本来の形は「けしからず」で、
形容詞「異し」(けし)の未然形に
打ち消しの助動詞「ず」が付いた語。
「ず」の連用形「ぬ」の終止法が広まるにつれて「けしからぬ」と変化し、
さらに「けしからん」となりました。
「異し」は、“異様だ” “変だ” という意味で、
「けしからず」はそれを打ち消したものですが、
否定の意味ではなく、
“変であること” を強めています。
→ “とても異様”
→ “とんでもない、不届きだ” の意になりました。









posted by 空凛 at 08:00| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月21日

「は」と「わ」どっちが正しい?

Webの質問が目に留まりました。
Q「飲むわ騒ぐわ」「泣くわ喚くわ」は、「は」か「わ」か?

回答は、
詠嘆の終助詞なので「わ」が正解。

戦後の「現代仮名遣い」で、
「は/わ」の使い分けを明確にしたことで、
現代日本語では「飲むわ騒ぐわ」と書くようになっています。

<内閣の定めた現代仮名遣い>
助詞の「は」は、「は」と書く。
あるいは/または/もしくは/
いずれは/さては/ついては/
ではさようなら/とはいえ/
惜しむらくは/恐らくは/願わくは/
これはこれは/こんにちは/こんばんは
〔注意〕
次のようなものは、この例にあたらないものとする。
いまわの際/すわ一大事/
雨も降るわ風も吹くわ/来るわ来るわ/きれいだわ

「あわれ」と発音するのに「あはれ」と表記する
歴史的仮名遣いは明治時代まで使われていましたが、
昭和21年(1946)に、発音に通りの書き方にする現代仮名遣いになりました。
ただし、一部に歴史的仮名使いを残し、
助詞の「は」「へ」「を」は元のまま。

ここで、助詞について復習です。

◇こんにちは/私は/これは/もしくは
この「は」は「副助詞」です。
「は」と書いて「わ」と読みます。
副助詞 はいろいろな語に付いて、さまざまな意味をそえます。

◇〜したわ/疲れたから寝るわ
この「わ」は「終助詞」です。
終助詞は主に文末について文を完結させ、
疑問・詠嘆・感動・禁止などの意を添えます。
出るわ出るわ/飛ぶわ飛ぶわ/話すわ話すわ/
泳ぐわ走るわ/飛ぶわ跳ねるわ/歌うわ踊るわ/
騙すわ盗むわ/蹴るわ殴るわ/高いわまずいわ/
ポンポンと弾む言い方です。
これが、
・こぐわ泳ぐわ走るわ
3つ繋がるとテンポが落ちますね。

言わずもがなですが、
「こんにちは」は、
・今日はご機嫌いかがですか?
・今日はお元気ですか?
・今日は良いお天気ですね。
「こんばんは」も
・今晩は良い晩ですね。
・今晩は寒いですが、いかがお過ごしですか?
などの後半部分が省略されたもので、副助詞の「は」です。

終助詞:
な(なあ)・や・よ・わ・こと・な・ぞ・ぜ・ 
とも・か・の・ね(ねえ)・さ・
かしら・もの・ものか

終助詞によって語調の強さなどが伝わり、
話し手の人物象なども浮かびあがってきます。
例えば、男女の違い。
男:
きれいだね/これだね/見るんだね/
行こうな/行こうぜ/行くかい
女:
きれいね/これね/見るのね/下さいな/
行くわよ/行きますわ/行こうかしら






posted by 空凛 at 08:00| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月14日

諾なう/宜なう(うべなう)

1、願いや要求を引き受ける。同意する。うけがう。
2、服従する。
3、謝罪する。わびる。

「転ぶ」(まろぶ)、
「服ふ/順ふ」(まつろう)に続く、
読めなかった古い言い方。

副詞「うべ」に活用語尾「なう」の付いた語。

「宜/諾」 うべ
なるほど。いかにも。むべ。
あとに述べる事柄を当然だと肯定したり、満足して得心したりする意を表す。
平安時代までは「うべ」、以降は「むべ」と表記される。

以前に「むべなるかな」で取り上げたことがあります。
昔、天智天皇が近江八幡市の方へ行幸されたときのこと。
老夫婦に長寿の秘訣を尋ねたところ、「この地で秋に採れるアケビに似たムベという果実を
食するからでしょう」と答えたそうです。
それに対して天智天皇が「むべなるかな」と云われたのが始まりとされています。

「うべなう」も現代小説で使われていました。
「真鶴」川上弘美  
女に聞いてみる。女は首をあいまいにふる。
うべなっているのだか、いなんでいるのだか、それともまた、どちらでもないのか。

「うべなう」の対義語が「いなむ」です。

「否む/辞む」(いなむ)
「いなぶ」の音変化
1、断る。嫌がる。辞退する。
2、否定する。

「うべなう」は「雅語」と呼ばれます。
雅語とは、
日常表現には使わないような、風雅な趣のある言葉。
特に平安時代、和歌などに遣われた洗練された上品な言葉。
雅言。対義語は「卑語」。

雅語はめったに見ないので新鮮に感じます。

雅語をいくつか拾ってみました。

「肯う」(うけがう)
承諾する。肯定する。

「肯んじる」(がえんじる)

「購う/贖う」(あがなう)
1、(贖う)罪のつぐないをする。
2、(購う)あるものを代償にして手に入れる。
また、買い求める。

「誘う」(いざなう)
「いざ」は勧誘する意の感動詞。「なう」は接尾語。
さそう。勧める。

「労しい」(いたわしい)
1、気の毒で同情しないではいられない。
2、気苦労である。気づかわしい。
3、大切に思っている。いたわって大事にしたい。
4、病気で苦しい。

「無みする/蔑する」(なみする)
そのものの存在を無視する。ないがしろにする。あなどる。

しっとりと耳に届く言葉たちです。
廃れさせるのはもったいないですね。










posted by 空凛 at 08:00| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする