2019年04月21日

言葉クイズ

Q 間違いがあります。正しい漢字は?

1、 時機を得た発言
2、 論戦を張る
3、 印籠を渡す
4、 厚顔無知
5、 異句同音
6、 舌の先の乾かぬうちに
7、 目鼻が利く
8、 頭に乗る
9、 鼻にもかけない
10、怒り心頭に達する





<答え>
1、 時宜(じぎ)
2、 論陣
3、 引導
4、 無恥
5、 異口
6、 舌の根
7、 目端
8、 図
9、 歯牙
10、発する

「歯牙にもかけない」
問題にしない。無視して相手にしない。

由来は「史記」叔孫通伝。

儒者の叔孫通が秦に仕えていた頃。
秦の圧政に耐え兼ねて陳勝・呉広らが蜂起し、
各地で呼応する反乱が起きていました。
その報告を受けた秦の二世皇帝は
家来を集めて陳勝を討つために議論を交わします。
ここで、叔孫通は言います。
「此特群盗、鼠窃、狗盗耳、何足置之歯牙間」
(これただ群盗・鼠窃・狗盗なるのみ、
なんぞこれを歯牙の間に置くに足らん)
この言葉を聞いた二世皇帝は討伐を中止。
後に陳勝・呉広の乱は鎮圧されますが、
反乱の火は中国全土に広がり、
秦は劉邦と項羽によって滅ぼされます。

叔孫通は、二世皇帝を見限っていました。
このあたりの歴史 ↓
https://www.y-history.net/appendix/wh0203-081.html

「歯牙」は、“口先”“言葉”を指し、
「歯牙にもかけない」は、
“わざわざ取り上げて議論の対象にしない”意。

「図に乗る」
いい気になって勢いづく。調子に乗る。つけあがる。

仏教僧が教文を唱える声明には独特の節があり、
経文の調子が変わるところに印がついています。
これが「図」です。
図の転調通りにうまく唱えることが
「図に乗る」ことでした。

「怒り心頭に発する」(いかり しんとうに はっする)
激しく怒る。

多くの人が間違って覚えている慣用句です。
その原因は、この語にある “頭” にあると思います。
怒りで髪が逆立っているイメージがありませんか?

「怒髪天を衝く」(どはつ てんをつく)
という語があります。
「怒髪」は、怒りのあまり逆立った髪の毛のこと。

今回、“心頭” についての解説を見つけました。
「怒り心頭」の「頭」は、
中国語で名詞、動詞などの後に付けて名詞を作る軽い接尾語。
“頭”という意味はないんです。
中国語で「石頭」「木頭」は、
“石のような頭” “木でできた頭” の意ではなく、
単に「石」「木」を意味します。
「心頭」も単に “心” という意味で、
“心から怒りがこみあげる” ということ。
怒りが頭に達するイメージなら「達する」ですが、
心から湧き上がる怒りならば「発する」となりますね。








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2019年04月13日

令和(れいわ)

「令和」発表後に最初に思ったのは、
えっ、“命令する” の「令」?!
そういう方、多かったのでは。
万葉集由来と聞いて納得しましたけど。
新元号の「令」は “よい” “めでたい” という意味で使われています。
歌の意味など令和に関する記事を読んで理解を深めました。

<出典元歌の一文>
于時 初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香

▽書き下し文
時に 初春の令月にして
気淑く風和ぎ(きよく かぜやわらぎ)
梅は鏡前の粉を披き(きょうぜんのこを ひらき)
蘭は珮後の香を薫す(はいごのこうを かおらす)

▽現代語訳
春の初めの良い月に
空気は美しく風は和やかで、
鏡の前の美人が白粉で装うように
梅の花が咲き、
蘭は身を飾る衣にまとう香のように薫らせる。

※「珮」は、腰に下げる飾りの玉。

「令和」は、この歌の「令月、風和ぐ」から取られました。
この歌に出てくる「令」は、
“よい” “めでたい” という意味なんですが、
「令」にそんな意味があったとは。
その後、
「令」を解説する記事を日経とWebで見つけました。
歌の中の「令」は借字で、本来は「靈」とのこと。

「靈」の原意は、
祈りの言葉を並べて雨ごいする巫女。

「靈」は「霊」の旧字。

「霊」 レイ・リョウ・たま
1、たま。神のみたま。
2、人知でははかりしれない。
3、よい。すぐれた。

靈 → 霊 → 令
当て字的に「令」が使われていたのでした。

Webには「令和」の読みにかんする疑問もありました。
Q.「令和」は「りょうわ」と読まないの?
「大宝律令」は「たいほうりつりょう」と読みますね。
「令」の読みは、
呉音「リョウ」、漢音「レイ」
「和」の「ワ」は呉音。
「リョウワ」とならなかったのは、
常用漢字表に「令」で「リョウ」の読みがないため。
公用文書では常用漢字表が使われますので、
元号の読みとしては「レイワ」なのでした。

最後に「令」について確認しておきます。

「令」の原意は、人を集めて命ずる意。
1、言いつける。命ずる。
命令・発令・令状
2、おきて。のり。
条令・法令
3、長官。
4、よい。りっぱな。
令色・令名
5、相手の親族に対する敬称。
令嬢・令息・令夫人

「令」にも “よい” という意味が載っていました。

「令色」(れいしょく)
相手に気に入られようとして顔色をつくろうこと。

「巧言令色」(こうげんれいしょく)
言葉をうまくかざり、顔色をうまくつくろうこと。

「令名」(れいめい)
よい評判。名声。令聞。

Webに「令夫人」に関するおもしろい質問がありました。
大使館員からの質問で、
今回 初めての女性大臣。
パーティーの招待状を出すのに、
配偶者(夫)の敬称がわからないというもの。
令夫人 ⇔ ?
外務省の文書を探してみると、
「〇〇国首相△△閣下 および 同夫君」
という書き方を見つけたそうです。

「令夫人」の対になる「夫」の敬称語はないんです。

招待状の宛名を書く時、
ご夫婦ともお名前がわかっていれば、
お名前を書くのが一番丁寧なのですが、
奥様の名前がわからない場合は、
「令夫人」と書きます。
「令夫人」はこれ自体敬称なので、
「御」や「様」などは付けません。
また、「様」より格上の敬称なので、
目上の方の奥様に対して使います。










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2019年04月07日

「柔弱」と「軟弱」

「柔弱」って語を知らなかったんですが、
単に “よわい” だけではなく、弱い中にも折れない強さがあるのかと思いました。
というのも「柔」に “しなやか” というポジティブな印象が強かったからです。

「柔弱」(にゅうじゃく)
気力や体質が弱々しいこと。じゅうじゃく。

単に弱っちいだけで、「軟弱」とほぼ同じ意味でした。

「軟弱」(なんじゃく)
1、質がやわらかく弱いこと。
2、意志・態度などがしっかりしていないこと。
相手の言いなりになりやすいこと。

「柔」と「軟」の字源を見てみます。

「柔」ジュウ・ニュウ・やわ-らか
木の枝がしなやかな様を表しています。
1、やわらかい。しなやか。
2、やさしい。おとなしい。
3、よわよわしい。しっかりしていない。
4、やわらげる。てなずける。

「軟」ナン・やわ-らか
旁の「欠」の元の字は、「而」+「大」(上下)
蒲(がま)で車を包んで振動をやわらげた車のこと。
1、やわらかい。
2、よわよわしい。
※goo辞書には“おだやか”という意味も載せています。
対義語は、
柔 ⇔ 剛
軟 ⇔ 硬

「柔らかい」--- しなやかで弾力性がある。穏やか。
「軟らかい」--- ぐにゃりとしている。手ごたえがない。

「柔らかい」と「軟らかい」の書き分けは悩むところです。
文化庁編集の「言葉に関する問答集 総集編」によれば、
昭和23年の旧音訓表では、
「柔」だけに「やわらかい」という訓があり、
「軟」には「ナン」という音だけでしたが、
昭和48年に音訓表が改定されて、
「軟」に「やわらか・やわらかい」の訓が掲げられました。
・柔らかい毛布。
・身のこなしが柔らかだ。
・物柔らかな態度。

・表情が軟(柔)らかい。
・軟(柔)らかい話。
・軟(柔)らかな土。

「柔」の方が代表的な表記で、使用範囲も広いのでした。

“ひ弱” という意味で「ヤワ」って言いますが、
漢字表記は「柔」だったんですね。
「ヤバ」「キモ」「ウザ」的な略語か造語かと思っていました。

「柔」(やわ) 〔形容動詞〕
やわらかいさま。こわれやすいさま。ひよわなさま。

・私はそれほどヤワじゃないわ。
・これはヤワな仕事じゃないよ。
・ヤワな造りのドア。


「柔」より「ヤワ」のほうがピッタリな気がします。











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2019年03月31日

朗ら朗ら(ほがらほがら)

[副詞]
朝がしだいに明けて、明るくなっていくさま。

なんともゆったりとした響きのいい語だと思いました。
残念ながら、古語です。

◇しののめの ほがらほがらと 明けゆけば おのがきぬぎぬ なるぞかなしき
(よみ人知らず)

◇秋の夜の ほがらほがらと 天のはら てる月かげに 雁なきわたる            
(賀茂真淵)

「朗らかな人」など、よく使う語ですが、
改めて、辞書を引いてみると発見がありました。

「朗らか」
1、心にこだわりがなく、晴れ晴れとして明るいさま。
2、日差しが明るく、空が晴れ渡っているさま。

「朗らか」は天気に対しても使うんですね。
・朗らかな春の一日

「朗」の原意は、月が明るいこと。
月光がよく澄んで通ること。

「朗」=「良」+「月」
「良」は中に穀物を入れて風を送り、
もみ殻を取り去って実だけを残す道具の形。
穀物をより分けてよいものを選び出す → “よい”
風を通して実と殻をより分ける → “よく通る”

「朗」
1、曇りなく澄んで、明るい。
2、気持ちが明るく、わだかまりがない。
3、声がはっきりとしていて、よく通る。

「朗朗」(ろうろう)
音声が澄んでよく通るさま。
・朗朗と声明文を読み上げる
・音吐朗朗たる声で演説する

「朗らか」と「晴れやか」は意味が似て言いますが、
「月」と「日」で、対照的ですね。
「晴」の字源を見ると、
「日」=太陽
「青」の古い字体は「生」の下に「丹」
「丹」は井戸の中に石がある様子を描いた形で、
ここでは青丹(あおに)と呼ばれる青い鉱物を意味しています。
「晴」は、澄み切った青空に太陽が見える様子。

「ろうろう」には「朧朧」という語もあります。

「ろうろう」(朧朧)[形容動詞]
ぼんやりとかすむさま。おぼろなさま。
・朧朧たる月

「朧朧」は「おぼろおぼろ」とも読みます。
「おぼろおぼろ」(朧朧)[副詞]
はっきりしないさま。ぼんやり。

「朧」ロウ・おぼろ
おぼろ。月の光のぼんやりしたさま。

この時期、「春霞」という語も思い浮かびます。










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2019年03月24日

絆される(ほだされる)

[動詞] 動詞「ほだす」の受身の形から。
1、情に引きつけられて、心や行動の自由が縛られる。
・彼の熱意に絆されて取引を決めた。
・情に絆されて承諾してしまった。
2、身体の自由を束縛される。

平安・鎌倉時代の古文によく見られるそうです。
当時の人々は辛い現世に絶望していました。
そんな庶民の夢は出家して極楽往生を遂げること。
でも家族がいては出家したくてもできません。
この情に縛られて動くに動けない感覚が「絆す」でした。

古語「絆す」(ほだす)
動けないようにつなぎとめる。束縛する。情でからめる。

「絆」(きずな)は東日本大震災後、
「家族の絆」「夫婦の絆」などと使われることが増え、2011年の流行語にもなりました。
人との強い繋がり、情愛をイメージさせる語ですが、
原意は束縛するという意味でした。

「絆」の旁「半」は牛を表し、
「糸」を合わせて、
牛や馬などの足をつなぐ綱を表わしています。
その後、人をつなぐ意味にも使われるようになりました。

ちなみに、
「繋ぐ」(つなぐ)は、綱(つな)の動詞化したもの。

「絆」の字のことで、
Webに半の字の上は八でなければならないのですか?
という質問がありました。
答え>>
「判・畔・伴 | 袢・絆」など、
半の上の部分が「ハ」になっているか「ソ」になっているかは、書体の違いにすぎない。
http://osito.hatenablog.jp/entry/2011/12/14/065038

情がからむといえば、
「しがらみ」という語を思い出しました。
「しがらみ」の漢字が「柵」と知った時は、目が「!」になりました。

「しがらみ」(柵)
1、水流をせき止めるために、川の中にくいを打ち並べて、
それに木の枝や竹などを横に結びつけたもの。
2、引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの。

動詞「しがらむ(柵)」の連用形が名詞化したもの。

「しがらむ」(柵む)
絡みつく。まとわりつく。また、絡みつける。

水流を止める柵 → せき止めるもの → まといつくもの
江戸時代以降、
「義理のしがらみ」「浮世のしがらみ」などと、
身を束縛するものという意味でも使われるようになりました。

誰もが何がしかのしがらみの中で、
うっとうしいなーと思いながら生きていると思います。
でもそれが社会的動物である人間のあるべき状態なのかも。
もし、一切のしがらみがない−何ら繋ぎとめるものがなかったとしらどうでしょう。
無重力で暮らすような不安定な状態かもしれません。








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