2017年08月16日

逸物

群を抜いて優れているもの。
昔は、多くは馬について言ったようです。
(いちもつ/いちぶつ/いつもつ/いつぶつ)
読みかたが 4つも存在して悩ましいですね。
「逸」の字は略体で、
元の字は兎が走り逃げる様子を表していました。

「逸」イツ・イチ・そ-れる・はや-る
1、はしる。にげる。 逸走
2、それる。 逸脱
3、うしなう。なくなる。 散逸
4、気まま。気楽。 安逸
5、すぐれる。 逸材・逸品・秀逸

「逸話」(いつわ)
世間一般にあまり知られていない話。

「逸失利益」(いっしつりえき)
事故などで死んだ人が何事も無く労働可能な年齢まで生きていたら、その間に得たであろうと推定される収入。

「秀逸」の類語を見ると、
秀抜・卓抜・卓越・出色・傑出・突出

でも最後の「突出」は同心円の外かもしれません。
他の語はいずれも辞書に“優れている”が入っていますが、
「突出」には入っていません。
1、高く、長く、または鋭くつき出ること。
2、つきやぶって出ること。
3、他より目立って多いこと。
しかも「とくしゅつ」と入力しても変換されません。

「抜群」(ばつぐん)
バツグンってカタカナのイメージがあって、ちょっと子供っぽい言い方のように感じていました。
でも、漢字でみるとパッと抜きんでていることがわかります。

「兎」といえば、
「兎に角」(とにかく)は当て字です。
「とにかく」の「と」は「ああ(だ)」、
「かく」は「こう(だ)」の意を表す古語の指示副詞。
「に」は助詞。
「とにもかくにも」は、「とにかく」を強めた言い方。
無用な誤解を生むから当て字はやめてもらいたいですが、夏目漱石が使ったところから広まったようです。
紛らわしいのが「兎角」とういう語があること。
「兎角」は仏教語の「兎角亀毛」(とかくきもう)から。
この世にあり得ないもののたとえで、もとは戦争の起こる兆しのことを言いました。
でも現在では「兎角」はほとんど使われていないようです。



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2017年08月15日

汽水(きすい)

淡水と海水がまじり合った塩分の少ない水。
深く入り込んだ湾や河口部の海水。
「汽水湖」は淡水中に海水が侵入している湖。

私は海沿いの町で育ったのに汽水という語を知りませんでした。

「汽」
流れる水の象形 + 湧き上がる雲の象形
水が蒸発して“枯れる”“水蒸気”“ゆげ”の意。

今回は、水に関する語を拾ってみました。
水には上水・中水・下水とありますが、
「中水」(ちゅうすい)とは何でしょう。
下水を殺菌・消毒して、再び給水するもの。
水洗トイレの水・公園の噴水・工業用水などに使用。
「上水」(じょうすい)は飲料に供給されるきれいな水。
同じ音で「浄水」。
「うわみず」と読めば“水の上のほうの部分”
「上澄み」という語もあります。

「水文学」(すいもんがく)
“地球上における水は全地球を循環している”とみた立場から研究する分野で、水にまつわる森羅万象を科学する学問。
ひとつの製品ができるまでに、どのくらいのCO2を排出しているかを表す「カーボンフットプリント」のように、どのくらいの水を必要とするかを表すのが「ウォーターフットプリント」。
今回、はじめて水文学の存在を知りましたが、地球規模で水不足が深刻化する中で、注目度が上がってくるのでないでしょうか。

「水火」(すいか)
1、水と火。洪水と火事。
2、洪水や火事のように、勢いが激しいこと。
3、水におぼれ、火に焼かれるような苦しみ。
4、水と火のように、互いに相容れないこと。氷炭。

・水火も辞さない
どんな苦痛や危険もいとわず、物事に力を尽くす。

・水火を踏む
非常に苦しい状況にある。また、危険をおかす。

「君子の交わりは淡きこと水のごとし」
才徳ある人の交際は、淡々とした水のようにあっさりしているようだが、長く変わることなく続くということ。

「知者は水を楽しむ」
知者が物事に固着しないで順応し、円滑自在に事を処理するさまを、水が一か所にとどまらずに流れ去るさまにたとえたもの。

「水媒花」(すいばいか)
花粉が水によって運ばれて受粉する花。
虫媒花・風媒花・鳥媒花

松濤・怒濤・波濤・風濤などの
「濤」は“大きな波”の意。

「松籟」(しょうらい)は
松の梢(こずえ)に吹く風。また、その音。松韻。松濤。

「松濤」(しょうとう)は
松の梢を渡る風の音が、海岸に打ち寄せる海の濤(なみ)のように聞こえることから。

「松濤」といえば東京渋谷区の高級住宅地が思い浮かびますが、
昔は松林が広がっていた場所なんですね。
松林といえば、
佐賀県唐津市の「虹の松原」は故郷の近くの景勝地です。
http://www.asobo-saga.jp/search/detail.html?id=87
日本三大松原の一つ。
残り2つが、
静岡県清水市の「三保の松原」(みほのまつばら)
福井県敦賀市の「気比松原」(けひのまつばら)

写真を眺めていたら、波の音を聞きたくなりました。




posted by 空凛 at 09:54| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月14日

身近な漢字の字源

今回は身近な漢字の成り立ちを紹介します。

「川」
両岸の間を流れる水の形を象った字。

「永」
川の流れがいくつにも分かれている様子を象った字。

「牛」
角の生えた牛の頭を象った字。

「羊」も頭。
象・犬・鳥・亀・馬は体全体の形。

「生」
植物の芽を象った字。

「主」
火が灯ったロウソクの形。
火が重要だった時代、
火を管理したのが家の主だったことから。

「集」
木の上に鳥が集まっている様子の会意文字。

「進」
小さい鳥は後ろに下がることができない。
前に進むだけ。

「冬」
下の2つの点は氷。
上の部分は食べ物をぶら下げている形。

「夏」
お面を付けて踊る人の姿を象った字。
元は夏祭りの踊りの名前を指していましたが、
転じて夏を意味するように。

「原」
崖から水が湧き出る様子を象った字。
がんだれは崖を表しています。

「卵」
鶏の卵ではなくて、カエルの卵を象ったものです。

「蟹」
分解しやすいのがカニ。

「解」
牛と刀と角に分解されます。
牛を解体することを意味していました。

「田」
中国では田んぼも畑も「田」
「畑」は国字です。
木や草を焼いた後に作物を育てたことから。
田んぼで力仕事をするのが「男」
女偏はあるのに男偏はありません。
婿(むこ)も女偏です。
漢字の世界では男は存在感が薄いですね。

「旅」
会意文字
方偏(かたへん)は“のぼり旗”、
旁(つくり)は人が多数従う様を表していて、
旗をもった人の後ろに多くの人がつき従っているさまを表しています。
旗は軍旗で、旅は戦争に出かける兵士の集団を意味します。
古代中国では軍隊の単位が「旅」、
兵士500人集団を「一旅」と呼びました。
旅団 < 師団
旅の原意が戦争に行くことだったとは。
現在でこそ旅はレクレーション的なものですが、
昔は目的のための移動で、危険や苦難を伴なうものでした。

「月極駐車場」(つきぎめちゅうしゃじょう)
この「月極」看板で多くの人が勘違いをしました。
江戸時代から「極」には「きめる」という意味と読みがあり、
戦前まで「きめる」は「決」と「極」両方が使われました。
戦後に「決める」だけと定められて、
「極」は「きわめる」に限定されました。
今も駐車場の看板には慣用的に使用されていますが、
北海道と高知には「月決め駐車場」という表示があるそうです。




posted by 空凛 at 13:11| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月13日

対義語を考える

石黒圭著「語彙力を鍛える」という本に、
“対義語を考えることは語彙力強化になる” とありました。
確かに、比べることで元の語の理解が深まりますよね。
私は対語を見てハッとすることが少なからずあります。
対義語は必ずしも1対1の対応になっているわけではありません。
複数の意味をもつ「多義語」の場合は、複数になります。
高い・・・低い/安い
薄い・・・厚い/濃い
冷たい・・熱い/優しい
破壊的・・創造的/建設的/生産的

対義語には3つの形があります。
1、対立関係
内−外、大きい−小さい、笑う−泣く

2、対(つい)の形
男−女、歩く−走る

3、否定の関係
可能−不可能、完成−未完成

以外とスルリと出てこない対義語。
試しに3問。
Q1、ケチ
Q2、貸切バス
Q3、生産



A1、気前のいい
A2、乗り合いバス
A3、消費

Webには面白い対義語が披露されています。
赤の他人・・・・・白い恋人
鳥貴族・・・・・・漁民
天使のブラ・・・・鬼のパンツ
やせ我慢・・・・・デブ大暴れ
鶴の恩返し・・・・亀の逆ギレ
進撃の巨人・・・・撤退の阪神
花咲かじいさん・・除草ばばあ
プラダを着た悪魔・しまむらを脱いだ天使
クスっと笑えます。
頭を柔らかくする言葉遊びとしていいかもしれません。
最後に、
社会人として確認しておきたい対義語を集めました。
故意・・過失
懐柔・・威圧
玄人・・素人
抽象・・具象
隠蔽・・暴露
引力・・斥力
永住・・仮寓
栄転・・左遷
穏健・・過激
温厚・・酷薄
快諾・・固辞
華美・・質素
寡黙・・多弁
閑職・・激職
貫徹・・挫折
更正・・堕落
斬新・・陳腐
拾得・・遺失
譲歩・・固執
尋常・・非常
杜撰・・緻密
精巧・・粗雑
清浄・・汚濁
正論・・曲論
刹那・・永劫
促進・・抑制
派遣・・召還
繁忙・・閑散




posted by 空凛 at 08:44| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月12日

様子がいい

書家・篠田桃紅(しのだ とうこう)氏が
「“様子がいい”と言う言葉を聞かなくなった。深みのある日本語がだんだん減って行く」
と語られていて、気になる言葉になりました。
桃紅氏は1913年(大正2年)3月28日生まれの104歳。
枯れてなお凛としたたたずまい、
芯の通ったキッパリとした話しぶり、
渋くて個性的な着物の趣味も洗練されています。
日本にこんなカッコいい女性が活躍されていたとは。
私は数年前にNHKのドキュメントで知りました。
さて、
「様子がいい」ですが、
残念ながら、辞書には載っていませんでした。
落語には出てきますから
落語好きな方には馴染みの語かと思います。
・お前は背中に筋があって様子がいいよ
・あの人はほんとに様子がいいねぇ

「様子」には“状態・事情・風采・外観・気配”などの意味がありますが、
「ありさま」との比較で、
外見だけでなく、そこから受ける印象も「様子」には含まれる。
とあります。
「ありさま」は“物事の状態”“境遇”の意で、印象は含まず。

「様子がいい」は、
人柄が現れたものとしての
“身なり”や“ふるまい”や“しぐさ”などが
好ましいということでしょうか。

落語には「料簡」もよく出てきます。
・どういう料簡だい
・とんだ料簡違いだよ
・悪い料簡を起すな
・料簡が狭い

「料簡」も捉えずらい語ですね。

「料簡/了見」(りょうけん)
1、思いをめぐらすこと。考え。思案。
2、こらえて許すこと。

「料」は米とますの合字で、“米をますで量る”意。
「簡」は“分別する”“選ぶ”意。
「料簡」(りょうかん)は本来“はかり選ぶ”
という意味ですが、日本では「りょうけん」と読み、
あれこれの事情をはかり、その中から適切な考えを選ぶこと。
→ 深く考える → 考え

桃紅氏は100才になって何冊も本を上梓されています。
* *
「この歳になると、誰とも対立することはありませんし、
誰も私とは対立したくない。百歳はこの世の治外法権です」
* *
「ひとりひとり違うのだから、
理解しあえなくて、モトモトなのです」
* *
「あきらめられないから 悩みが尽きず、
あきらめられないから 希望も続く。」
人生は、その繰り返し」
* *
「歳相応という言葉がありますが、
人を批評するのに年齢はたいへん便利な言葉です。
私は歳には無頓着です。
これまで歳を基準に物事を考えたことは一度もありません。
何かを決めて行動することに歳が関係したことはありません。
自分の生き方を年齢で判断する、これほど愚かな価値観はないと思っています」
* *
など、独自の物の見方や言葉に説得力があります。
なんといっても104歳を生き抜いてこられた方の言ですから。





posted by 空凛 at 09:02| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする