2019年03月31日

朗ら朗ら(ほがらほがら)

[副詞]
朝がしだいに明けて、明るくなっていくさま。

なんともゆったりとした響きのいい語だと思いました。
残念ながら、古語です。

◇しののめの ほがらほがらと 明けゆけば おのがきぬぎぬ なるぞかなしき
(よみ人知らず)

◇秋の夜の ほがらほがらと 天のはら てる月かげに 雁なきわたる            
(賀茂真淵)

「朗らかな人」など、よく使う語ですが、
改めて、辞書を引いてみると発見がありました。

「朗らか」
1、心にこだわりがなく、晴れ晴れとして明るいさま。
2、日差しが明るく、空が晴れ渡っているさま。

「朗らか」は天気に対しても使うんですね。
・朗らかな春の一日

「朗」の原意は、月が明るいこと。
月光がよく澄んで通ること。

「朗」=「良」+「月」
「良」は中に穀物を入れて風を送り、
もみ殻を取り去って実だけを残す道具の形。
穀物をより分けてよいものを選び出す → “よい”
風を通して実と殻をより分ける → “よく通る”

「朗」
1、曇りなく澄んで、明るい。
2、気持ちが明るく、わだかまりがない。
3、声がはっきりとしていて、よく通る。

「朗朗」(ろうろう)
音声が澄んでよく通るさま。
・朗朗と声明文を読み上げる
・音吐朗朗たる声で演説する

「朗らか」と「晴れやか」は意味が似て言いますが、
「月」と「日」で、対照的ですね。
「晴」の字源を見ると、
「日」=太陽
「青」の古い字体は「生」の下に「丹」
「丹」は井戸の中に石がある様子を描いた形で、
ここでは青丹(あおに)と呼ばれる青い鉱物を意味しています。
「晴」は、澄み切った青空に太陽が見える様子。

「ろうろう」には「朧朧」という語もあります。

「ろうろう」(朧朧)[形容動詞]
ぼんやりとかすむさま。おぼろなさま。
・朧朧たる月

「朧朧」は「おぼろおぼろ」とも読みます。
「おぼろおぼろ」(朧朧)[副詞]
はっきりしないさま。ぼんやり。

「朧」ロウ・おぼろ
おぼろ。月の光のぼんやりしたさま。

この時期、「春霞」という語も思い浮かびます。










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2019年03月24日

絆される(ほだされる)

[動詞] 動詞「ほだす」の受身の形から。
1、情に引きつけられて、心や行動の自由が縛られる。
・彼の熱意に絆されて取引を決めた。
・情に絆されて承諾してしまった。
2、身体の自由を束縛される。

平安・鎌倉時代の古文によく見られるそうです。
当時の人々は辛い現世に絶望していました。
そんな庶民の夢は出家して極楽往生を遂げること。
でも家族がいては出家したくてもできません。
この情に縛られて動くに動けない感覚が「絆す」でした。

古語「絆す」(ほだす)
動けないようにつなぎとめる。束縛する。情でからめる。

「絆」(きずな)は東日本大震災後、
「家族の絆」「夫婦の絆」などと使われることが増え、2011年の流行語にもなりました。
人との強い繋がり、情愛をイメージさせる語ですが、
原意は束縛するという意味でした。

「絆」の旁「半」は牛を表し、
「糸」を合わせて、
牛や馬などの足をつなぐ綱を表わしています。
その後、人をつなぐ意味にも使われるようになりました。

ちなみに、
「繋ぐ」(つなぐ)は、綱(つな)の動詞化したもの。

「絆」の字のことで、
Webに半の字の上は八でなければならないのですか?
という質問がありました。
答え>>
「判・畔・伴 | 袢・絆」など、
半の上の部分が「ハ」になっているか「ソ」になっているかは、書体の違いにすぎない。
http://osito.hatenablog.jp/entry/2011/12/14/065038

情がからむといえば、
「しがらみ」という語を思い出しました。
「しがらみ」の漢字が「柵」と知った時は、目が「!」になりました。

「しがらみ」(柵)
1、水流をせき止めるために、川の中にくいを打ち並べて、
それに木の枝や竹などを横に結びつけたもの。
2、引き留め、まとわりつくもの。じゃまをするもの。

動詞「しがらむ(柵)」の連用形が名詞化したもの。

「しがらむ」(柵む)
絡みつく。まとわりつく。また、絡みつける。

水流を止める柵 → せき止めるもの → まといつくもの
江戸時代以降、
「義理のしがらみ」「浮世のしがらみ」などと、
身を束縛するものという意味でも使われるようになりました。

誰もが何がしかのしがらみの中で、
うっとうしいなーと思いながら生きていると思います。
でもそれが社会的動物である人間のあるべき状態なのかも。
もし、一切のしがらみがない−何ら繋ぎとめるものがなかったとしらどうでしょう。
無重力で暮らすような不安定な状態かもしれません。








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2019年03月17日

おめかし(御粧し)

化粧をしたり着飾ったりすること。おしゃれ。

「めかす」(粧し)の名詞形「めかし」+ 丁寧語の「お」

「めかす」(粧す)〔動詞〕
1、身なりを飾りたてる。
2、それらしく振る舞う。外見をつくろう。

「めかす」は接尾語として語を作っています。
「ほのめかす」「ときめかす」「秘密めかす」
「冗談めかす」「色めかす」
「めかす」は「色めかす」 の 「色」 がとれたもの。
「めかす」は
「春めく」 「色めく」 「ざわめく」 などの 「めく」 から派生。
「〜めく」は “〜らしくなる”

「めかしこむ」(粧し込む)
特別に身なりを飾る。おしゃれをする。

「そんなにおめかしして どこへ行くの?」
昔はよく耳にしたものですが、懐かしい語になりつつあります。

「普段着」に対する「よそ行き」という語も現代では消えつつある感覚かもしれません。

「おしゃれ」(御洒落)の語源もみてみます。
「晒れ」(され)、「戯れ」(され)が転じた語。
「晒る」は、風雨や日光にさらされて白っぽくなる意。
「戯る」は、たわむれる意。
「おしゃれ」は、「晒れ」よりも「戯る」に基づくとされています。
室町時代以降に「され」が「しゃれ」となり、
漢語の「洒落」(しゃらく)が意味も音も似ていたため、
江戸時代前期頃から、「しゃれ」の当て字として使われるようになりました。

古語「戯る」(さる)の意味をみると、
1、たわむれる。はしゃぐ。
2、才気がある。気が利く。
3、色気がある。
4、しゃれている。風情がある。趣がある。

「戯ればむ」(さればむ)
あか抜けした風である。風流めく。しゃれている。
「ざればむ」とも言う。

「戯ればむ」(あざればむ)
ふざけた態度を見せる。好色な振る舞いをする。

同じ「戯れ」でも言葉が分れていたんですね。










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2019年03月10日

わざわざ

〔副詞〕
1、他のことのついでではなく、特にそのためだけに行うさま。
2、しなくてもよいことをことさらするさま。故意に。

「わざわざ」の語源は何だろうと思いました。
漢字が「熊熊」だったのが意表を突きました。
パンダの名前みたいです。

「態」タイ・テイ・わざ
物の形や姿。様子。ふるまい。
“故意に” は日本のみの意味です。

語源は 「態々し」(わざわざし)という古語。
古語「わざわざし」を引くと、
「わざとがまし」に同じ。
とありました。

古語「わざとがましい」〔形容詞〕
ことさらに意識したようすである。わざとらしい。

古語「わざと」〔副詞〕
1、わざわざ。
2、格別に。取り立てて。
3、正式に。本格的に。

古語「わざと」には、今にない意味があります。
“格別に” や “本格的に” という意味。
こういうのを「古今異義語」(こきんいぎご)って言うんですね。

古語 「わざとめく」 〔動詞〕
格別に心配りしているように見える。

古語「わざとならず」
副詞「わざと」+ 断定の助動詞「なり」+ 打消の助動詞「ず」
ことさらでない。さりげない。自然だ。

「わざと」(態と) [副詞]
名詞「業」(わざ)+ 格助詞「と」
意図的に。故意に。ことさら。
多く悪意を伴った行動に用います。

現在の「わざわざ」に戻ります。
私は「わざわざ」にネガティブなイメージがあるため、
あまり使いたくないと思っているのですが、
「わざわざ」は相手の厚意に対して謝意を伝える時にも使われます。
・わざわざ来てくれてありがとう。
・わざわざお越しいただいたのに、
ゆっくりお話しする時間がなくて申し訳ありませんでした。

自分の行動に使う際は、
(わざわざしてあげたのに)という恩着せがましさが出ます。
・わざわざ迎えにいってあげたのに。
・わざわざ遠回りして買ってきたケーキよ。
・相談があるといふからわざわざ出かけて来たんだ。

「わざわざ」は(しなくてもいいものを・・)
というニュアンスで受け取られる場合もあるので、気をつけたいところです。
感謝を表す時に使う場合も、
私のように「わざわざ」に抵抗がある人は、
「ご丁寧に」
「お手数をおかけして」
「ご足労をおかけして」「遠路お運びいただき」
「お忙しいなか」「お寒いなか」
といった言葉で言い換えてもいいですね。








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2019年03月03日

然り(しかり)

そのようである。そのとおりである。そうである。

「然り」は、奈良時代の和歌集「万葉集」に出てくる、古くからある語です。
時代劇で耳にしたり、年配の方が話されているのを聞くことはありますが、日常で使うことはほとんどありません。
例文を見ながら、使い方を理解したいと思います。

<「然り」の使い方>
◆「○○もまた然り」
・地震は忘れたことにやってくる。火事もまた然り。
・現代人は油分を摂り過ぎている。塩分もまた然り。

◆「◯◯然り、△△然り」
例をいくつか並べる際に使います。
・芸術は人の心を打つものだ。絵画然り、音楽然り、演劇然り。
・結婚には多くの要素が必要だ。愛然り、経済力然り、忍耐力然り。

◆「逆もまた然り」
「逆もまた同様である」という意。
・英米にも大陸哲学的な手法や研究をしている哲学者はいるし、逆もまた然りである。
・関東でも関西型の包丁を使う料理人はおり、その逆も然りである。

「然り」は「さり」とも読みます。

「然り」(さり)
そうである。そのとおりである。そのようである。

<「しかり」と「さり」>
「然り」(しかり)
副詞「しか」+ 動詞「あり」=「しかあり」の音変化。

「然り」(さり)
副詞「さ」+ 動詞「あり」=「さあり」の音変化。

「しかり」が主に漢文脈で用いられるのに対し、
「さり」は和文脈で用いられます。

「然りながら」(さりながら)接続語。
そうではあるが。しかしながら。

「然りとも」(さりとも)接続語。
そうであっても。それでも。

◆「〇〇然」という表現
この「然」(ぜん)は接尾語。
名詞に付いて、そのものの様子を表します。
・紳士然とした振る舞い
・学者然とした風貌
・母親然とした仕草

<「然」の字源>
「然」=「肉月」+「犬」+「火」(れっか)
生贄の犬の肉を焼く形。
「然」だけでも “もえる” 意があります。
ところが、
「しかり」「しかるに」といった意味で使われることが多くなり、「燃える」意味が薄れていきました。
そこで「火」を加えた「燃」という字が新たに作られました。









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