2017年10月20日

「ぞっとする」と「ぞっとしない」

「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定と思っていました。
間違いです。

「ぞっとしない」
面白くない。あまり感心しない。
× 恐ろしくない

「ぞっとする」 は、
恐ろしいものを見たり体験した時などの恐怖の感情で、
「ぞっと」は恐ろしさで身の毛がよだつさま。
一方、「ぞっとしない」の「ぞっと」は、
恐怖の感情ではなく、強い感動が身体を走り抜けるさま。
整理すると、
「ぞっと」には2つの意味がある。
1、寒さや恐ろしさのために、全身の毛が逆立つように感じるさま。
2、強い感動が身体の中を通り抜けるさま。

ということで、
「ぞっとしない」は
特に驚いたり感動していないことを表し、
そこから “感心したりするほどではない” という意に。

「ぞっとしない」使用例
・それはいささかぞっとしない案で、できればやりたくなかった。
・このまま一時間、太陽の下でぼうっとしているのはぞっとしない。
・ぞっとしないことだが、選択の余地はないのである。
・この二つの役廻りはどちらに廻ってもぞっとしない。
・部屋にママの写真を飾る男って、ぞっとしないわ。

意味を知っても、
私はどうしても怖いほうの「ゾっとする」がかぶってしまいます。

感嘆した時に「すごい!」といいますが、
「すごい」は、
度を超していることを表す「過ぐ」から来ています。
古くは、
“寒く冷たい” “骨身にしみる” といった意味でも用いられました。
「ぞっと」と似た体感ですね。
漢字は「凄い」で、ひらがなとまた違った印象を受けます。

「凄」セイ
1、肌寒い。
2、すさまじい。すごい。

「凄」だと、悲惨なほうにすごいというイメージがあり、
「酷い」に近いものを感じます。

「酷」コク
1、容赦がなく、きびしい。むごい。
2、程度がひどい。

「酷く」(ひどく)は、
物事の善し悪しにかかわらず、程度のはなはだしいさま。とても。非常に。

・兄はひどく喜んだ。
・ひどく疲れ切ってアパートに戻った。
・二人ともひどく空腹だった。
・ひどく気にいったらしい。

「ひどい」は「非道」が形容詞化された「非道い」から。
“非常識だ” → “残酷だ” “むごい”
など悪い意味になり、形容詞「ひどい」に。
でも副詞の「ひどく」は良いほうにも悪いほうにも用います。

「やばい」も “あぶない” という意味でしたが、
今や “すごい” の意で、若い子たちの会話ではじけています。



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2017年10月19日

蕩めく(とろめく)

1、眠けを催してとろとろする。うとうとする。
2、うっとりする。

「とろめく」の漢字が「蕩」だったのが意外でした。
「蕩」ですぐ思いつくのは「放蕩息子」。

「蕩」トウ・とろ-ける・とろ-かす
1、揺れ動く。ゆらゆら動かす。
2、酒色などにおぼれる。しまりがない。
3、豊かに広がっている。
4、洗い流す。

「たゆたう」は 漢字にすると「揺蕩う」です。
1、ゆらゆらと揺れ動いて定まらない。
2、気持ちが定まらずためらう。心を決めかねる。

「揺蕩」(ようとう)の意味のところに「動揺」があって、
えっ?という思いでした。
改めて「動揺」の意味を見ると、
他からの作用で、動き揺れること。
転じて、気持などが不安定になること。不安。
とありました。
現在は “心の揺れ” で使っていますが、元の意味は “動き揺れること” で、
「揺蕩」と根は同じでした。

「たゆたう」という音から春の日向のような、
のどかさを感じていましたが、
いくぶんネガティブ感漂う語なのだと気づきました。

「とろ」と読む漢字を探すと、
「瀞む」(とろむ)という語がありました。
水面が波立たないで油を流したように静まる。
私は初めて目にしましたが、漁師さんが使っていそうです。

“とろりとした状態” の「とろみ」はひらがな表記です。
話しは料理にそれますが、
あんかけ料理のとろみはデンプンの熱結合を利用しています。
デンプンに水を加えて加熱すると糊状になります。
でも時間が経つと具材から水分が出て、とろみが消え水っぽくなってしまいます。
とろみをキープするには、水溶き片栗粉を入れてからもグツグツとしっかり沸騰させ、よく掻き混ぜないといけません。
コーンスターチを使うという手もあります。
コーンスターチはトウモロコシのデンプンですが、片栗粉に比べて温度が下がっても粘りに変化がありません。



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2017年10月18日

「ねぎらう」と「いたわる」

「ねぎらう」と「いたわる」はどちらの漢字も「労」なんです。
恥ずかしながら読めませんでした。

「労う」(ねぎらう)
苦労や骨折りに感謝し、いたわる。
現代では、同等または下の人に対して用いる。

「労」は労働・労務・労災など、“働く” のイメージが強くて、
「ねぎらう」「いたわる」に結びつきませんでした。

「労わる」(いたわる)
同情の気持ちを持って親切に接したり、気を配って大切に世話をすること。

「労わる」の語源は、奈良時代の「労ぐ」(ねぐ)から。

「労ぐ」(ねぐ)
1、神の心を慰め、加護を願う。
2、慰労する。ねぎらう。

古語辞典を見ると、

「労ぐ」(ねぐ)
ねぎらう。いたわる。

「祈ぐ」(ねぐ)
祈る。祈願する。

本来、「ねぐ」は神を慰め恵みを祈るという意味でした。
そこから「禰宜」(ねぎ)「ねぎらう」「ねがう」などの語が生じています。

※「禰宜」は神職のこと。

「労」は「勞」の略体で、
「勞」は、力を出しつくして燃え尽きた様を表します。
改めて「労」を見ると、
単に “働く” ではなく、“精を尽くして” 働く。
“精が尽きて” 疲れるという意味でした。
労働は、力を出し尽くして働く。
功労は、力を出し尽くし成果をあげる。

▽労(ろう)を使った表現

「ろうをねぎらう」は漢字にすると
「労を労う」で妙な感じです。

「労を取る」
骨をおること。
・仲介の労を取ってくれた
・調整の労を取る

「労多くして功少なし」
苦労した割には効果が少ないこと。

「労を多とする」
相手の苦労を評価し、ねぎらい感謝すること。

「多とする」(たとする)
ほめる。ありがたく感謝する
ねぎらいや感謝の気持ちで使います。

・関係諸氏の労苦を多とするものである
・チームの努力を多としたい
・委員会の協力を多としたい




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2017年10月17日

勘違いの多い語

「気が置けない人」(きがおけないひと)
気遣いする必要がない人。遠慮がない人。
× うちとけられない人
気が置けない(気遣いをしない)/ 気が置ける(気遣いをする)


「御の字」(おんのじ)
非常に結構なこと。きわめて満足なこと。
× ひとまず納得する


「奇特な人 」(きとくなひと)
特別にすぐれていること。行いが熱心なこと。殊勝。
× 風変りな人


「うがった見方」
物事の本質を捉えようとする鋭い視点で見る。
「穿つ」は “穴をあける” 意。
× 疑ってかかるような見方


「琴線に触れる」(きんせんにふれる)
「琴線」は物事に共鳴する胸奥の心情。
× 怒りに触れる
「逆鱗に触れる」からの連想か。


「憮然」(ぶぜん)
失望してぼんやりするさま。
失望や落胆、驚きのためにぼんやりしたり呆然とする様子。
× 腹を立てた様子
最近の辞書は、変わってしまった意味も載せています。
思い通りにならなくて不満なさま。不機嫌なさま。不興なさま。


「他山の石」(たざんのいし)
中国「詩経」にある故事。
よその山から出た粗悪な石も自分の宝石を磨くのに利用できる。
→ 他人のつまらぬ言行からも自分の人格を育てる助けとなる。
「人の振り見て我が振り直せ」に近い意味。


「対岸の火事」(たいがんのかじ)
自分には関係のないこととして、傍観すること。
× そうならないように参考にしたり、教訓とすること。
「他山の石」と「対岸の火事」で混乱したものか。


「姑息」(こそく)
しばらくの間 息をつくこと。
転じて、一時の間に合わせに物事をすること。
一時しのぎ。その場のがれ。
× 卑怯
「姑息」の類義語は「弥縫策」(びほうさく)


「話が煮詰まる」
議論や考えがなどが出尽くして結論を出す段階になること。
×行き詰る


「敷居が高い」(しきいがたかい)
不義理・不面目なことがあって、その人の家に行きにくいこと。
× ハードルが高い


「さわり」
話しの最も重要な点や感動的で印象深いところ、曲の聞かせどころなど。
浄瑠璃用語。
× 話の導入部分


「破天荒」(はてんこう)
誰もできなかったことを初めて成し遂げること。
×八方破れで乱暴者のイメージ


「天荒」とは、何も無く混沌とした世界の始めの状態をいいます。
昔、中国の科挙試験で、
まだ誰も合格者の出なかった土地から初めて合格者が出たとき、
「天荒を破る」と言われたことから。





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2017年10月16日

撞着(どうちゃく)

1、つきあたること。ぶつかること。
2、つじつまが合わないこと。矛盾。

「矛盾」の類語を見ていて見つけた、見知らぬ語でした。

「撞」 トウ・シュ・つく
1、つく。
2、つき当たる。さしさわる。

「自家撞着」(じかどうちゃく)
同じ人の言動や文章などが前後で矛盾していること。
自分で自分の言行に反することをすること。

「矛盾撞着」(むじゅんどうちゃく)
二つの事柄が論理的に食い違って、つじつまが合わないこと。

矛盾に類する語はまだありました。

「二律背反」(にりつはいはん)
哲学で、相互に矛盾する二つの命題が同等の妥当性をもって主張されること。

「形容矛盾」(けいようむじゅん)
論理学で、ある語をその語のもつ性質に矛盾する語で形容すること。

「両義性」(りょうぎせい)
ある概念や言葉に相反する二つの意味や解釈が含まれていること。

「撞着語法」という修辞法はご存じでしょうか。
私は「撞着」も知らなかったくらいですから、「撞着語法」もさっぱりです。
でも、難しい名前は知らなくても、この言い回しは知っていました。
きっと誰にも馴染みの表現です。
「矛盾語法」ともいいます。
用例を見れば “このこことか” とすぐ納得です。
・慇懃無礼
・有難迷惑
・公然の秘密
・永遠の一瞬
・生きた化石
・無慈悲な親切
・残酷な優しさ
・細マッチョ
・ブサかわいい
・ツンデレ
・うれしい悲鳴
・このろくでもない素晴らしい世界

ピタリとはまるとおもしろくて刺さる表現が生まれますね。
英語だと「oxymoron オクシモロン」
ギリシア語の「oxys」(鋭い)と「moros」(愚かな)を合成した語。
相反する言葉を結びつけて効果を与える言い回しですが、
厳密に対義語になっている必要はありません。

☆撞着語法の効果
* 興味をひく
* 刺激的・衝撃的
* 意表をつく
* 新しい考え方
* 真理に迫る深遠さ
* 皮肉・風刺

似ていて紛らわしいのが「逆説法」
一見、真理にそむいているようにみえて、実は一面の真理を言い表している表現。
・急がば回れ
・負けるが勝ち
・損して得取れ

「撞着語法」--- 矛盾した内容の語を組み合わせる
「逆説法」----- 一見常識に反する表現を用いて真意を伝える

逆説法はよくことわざや成句に使われます。
ことわざには、相反する内容のものが並存していて、
人の世はそう単純にはできていないと気づかされます。
例えば、
善は急げ / 急がば回れ、急いてはコトをし損じる
君子危うきに近寄らず / 虎穴に入らずんば虎児を得ず
蛙の子は蛙 / 鳶が鷹を生む
立つ鳥跡を濁さず / 旅の恥はかき捨て
一石二鳥 / 二兎を追う者は一兎をも得ず
三人寄れば文殊の知恵 / 船頭多くして船山に上る




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2017年10月15日

語感を感じてみる

黒川伊保子著「語感対決77」という面白い本を見つけました。
誰しも言葉の音から何かしらのイメージを浮かべていると思いますが、それはぼんやりとあいまいなもの。
この本は、語感対決というおもしろい切り口で、言葉の持つイメージを表現してみせます。

発音体感は小脳を経由して潜在意識に作用。
語感は脳に様々なイメージをもたらしています。
言葉の音は絶対的な感覚もたらすものではなく、受け手の脳の状況によって違ってくる相対的なもの。
語感が受け手の脳の生理状態に合っているときに、よい言葉と感じます。
言葉の音を長く研究してきた黒川氏は
「爽やかS音」「癒しのM音」「華やかなR音」「相手を威嚇するI音」など、
音を分解して語感をスパっと分析してみせます。

例を1つ紹介します。

〇コシヒカリ vs ササニシキ <ツヤ対決>
− KoSHiHiKaRi −
しっかりしたK音ではじまり、
湿り気のSHi(シ)、
温かさを感じさせるHi(ヒ)、
語尾のRi(リ)が放つ輝きとかたさ。

− SaSaNiSHiKi −
湿度を持つSが3つもあり、十分な水分量を感じさせ、
語尾のKi(キ)が弾力を伝える。

どちらも優劣つけがたいが、
ササニシキにはないR音が米のツヤ感をだして、
コシヒカリの勝ち。


音のイメージをこんな風に表現した学者もいました。
あ --- 広厚
か --- 堅牢
さ --- 窄小
た --- 剛直
な --- 和順
は --- 混沌
や --- 進前
ら --- 形状
わ --- 操曲

「窄小」という語は中国語辞典に載っていました。
狭くて小さい。せせこましい。

「窄」は “せまい”“せばめる”意。
「狭窄」という語があります。

「操曲」という語は、どの辞書にもWebにも見つかりませんでしたが、
「操典」(そうてん)の説明に「騎兵操典」という語が出てきました。
旧日本陸軍が作成した、各兵種の教育および戦闘についての典拠書。


以前、怪獣の名前を集めてみたことがありました。
怪獣のネーミングは「ラ」と「ゴン」を展開していました。
語感はどうなっているでしょう。
「ラ」は “華やかなR音”そして “形状”
「ゴ」は喉を絞め出す音で、脳がストレスを感じる音。

☆「ラ」のつくネーミング
ゴジラ (ゴリラ+クジラ)
エビラ
モスラ (蛾=moth)
キングギドラ (モスラの幼虫)
ガメラ (亀)
原始鳥 リドラ
冷凍怪獣 ペギラ
四次元怪獣 トドラ
古代怪獣 ゴモラ
海獣 ゲスラ

☆「ゴン」のつくネーミング
ナメゴン
カネゴン
ステゴン
レオゴン
ゴダイゴン

☆「ドン」のつくネーミング
ガヴァドン
テレスドン
メガドン
スカイドン

ゴジラのヒットで、怪獣の名前に「ラ」をつけるようになったそうです。
どれも怖いというより、かわいさを感じます。



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2017年10月14日

相克と相生

「相剋/相克」(そうこく)
1、対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うこと。
2、五行説で互いに相手に勝つ関係にあること。
対語: 「相生」

「剋」 コク・か-つ
重い兜を身に着けた人の象形。
原意:重さに耐える・打ち勝つ。刀で打ち勝つ。殺す。
1、耐え抜いて打ちかつ。=克
2、きびしい。むごい。
剋薄=刻薄=酷薄

「相生」(そうせい/そうじょう)
五行説で、木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生じるということ。

「相生」は「あいおい」と読むと、
1、一緒に生育すること。
2、1つの根元から2つの幹が分かれて伸びること。

「あいしょう」とも読みますし、ややここしいですね。


「そうせい」と読む熟語に「早世」「早逝」がありますが、
どちらも “若くして死ぬこと” = 夭折(ようせつ)
「早世」は古くからある語ですが、
「早逝」は後から自然発生的に生まれた語で、辞書によっては載っていません。
「逝去」「急逝」などの「逝」と「早く」が結びついて「早逝」となり、広まったようです。

「相」の読みは ソウ・ショウ
読み別に熟語を並べてみました。
「ソウ」
手相・家相・骨相・死相・人相・面相・
形相・血相・滅相・瑞相・真相・世相・
「ショウ」
首相・宰相・相国寺(京都にある禅寺)
「ショウ」と読むものは限られていて悩まずにすみます。

「五行説」
世の中のすべての事象は、
木・火・土・金・水という5つの要素で説明できる。
という考え方。
互いが相乗効果で良い相性を生む「相生」(そうじょう)
もうひとつはお互いに力を弱め合う「相剋」(そうこく)
陰陽説は古くから存在したのに対し、
五行説は陰陽説よりも後から出来たもので、
当初から陰陽説と一体となり「陰陽五行説」といわれます。
「陰陽五行説」は風水をはじめ中国のあらゆる占い、漢方医学や鍼灸医学などでも用いられています。

◆相生の関係
木をこすりあわせると火が生まれる
→ 火は燃えて土に還る
→ 土の中から金が生まれる
→ 金を冷やすと水が生まれる
→ 水は木を育てる

◆相克の関係
木は土を破って出、
土は水をせき止め、
水は火を消し、
火は金属を溶かし、
金属は木を切る、
それぞれ支配し合う関係。

↓ わかりやすい相関図
http://bikancha.com/wp/wp-content/uploads/2012/09/%E4%BA%94%E8%A1%8C%E5%9B%B3.png




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2017年10月13日

ちょっと懐かしい言葉

今回は最近拾ったちょっと懐かしい語を紹介します。

「得恋」(とくれん)
恋愛が成就すること。失恋に対していう語。

失恋の対語を想像したこともありませんでしたが、
こんな語があったんですね。
でも、ほとんど使われていないような・・・
・得恋話し
・お礼参りで、得恋感謝
・失恋より得恋が多かった

「片思い」の逆は「両思い」(りょうおもい)と言ってますが、
対語は「相惚れ」(あいぼれ)とありました。
片思いに似た語に「岡惚れ」があります。
時代劇でたまに出てきます。

「岡惚れ」(おかぼれ)
親しくしたことのない人や他人の恋人を、わきから恋すること。
自分のほうだけがひそかに恋していること。

なぜ「岡」の字なのでしょう。
「おか」は “傍ら(かたわら)” の意味。
小高いところの意の「岡」と同源。
人々の生活の中心であった平地。その傍らには岡。
平地と岡 = 中心と傍ら → “わき” の意味が生じたもの。
「岡目八目」や出前用の箱「岡持ち」の「岡」も同じです。

「秋の扇」も失恋に類する語です。
知らない語でしたが、なんとなくイメージできました。
帝の寵愛を失ったわが身を秋の扇にたとえて嘆いた妃の故事から。
愛を失って捨てられた女のたとえ。
とても優美なたとえですけど、ひっそりとした哀しみが痛々しい。

「近劣り」(ちかおとり)
近くで見ると遠くで見るよりも見劣りがすること。
対語は「近優り」(ちかまさり)

「お平らに」
「膝を崩して」お楽にして下さいという意味。
とても柔らかな言い方ですね。

「お膝送り」は、昔 法事などで聞いた覚えがあります。
座ったまま膝を動かし詰めることです。
後から来た人のために、
「お膝送りをお願いします」と声をかけて譲ってもらいます。
「膝行」(しっこう)という語もあります。
「いざる」とも言います。
椅子の生活が多くなって、あまり聞かれなくなりました。




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2017年10月12日

粘稠(ねんちゅう)

ねばりけがあって密度の濃いこと。
「稠」は “びっしり集まる” 意。
「稠」の読みは「チュウ」なのですが、
多くの人が「ちょう」と誤読して、多くの人がそれに気づかず、誤読が広まっている語です。
日常で耳にすることはまれですが、専門的な分野で使われていました。
・大量の砂糖を溶解させたものは粘稠な液体となる。
・濃硫酸も粘稠な液体であるが、発煙硫酸はそれ以上に粘稠である。
・化膿は、組織の損傷部が炎症を起こし、好中球を主とした白血球の浸潤と炎症組織の溶解により、粘稠な浸出液を形成すること。
組織内に貯留するものは膿と呼ばれ、上部気道炎症では痰として排出される。

痰・血液・唾液などの医学的形容で使われています。
唾液もストレスがあるとネバっぽくなるそうです。

「稠」の熟語に「稠密」(ちゅうみつ)があります。
一つのところに多く集まっていること。こみあっていること。
稠密も使ったことがないので、どんな風に使われているか見てみました。
・狭小な国土に稠密な人口。
・人口が稠密な大都市圏の出生率は低い。
・様々な生きものが稠密にひしめいていた。
・稠密な乗合バス路線が運行されている。

旁が「周」で「ちょう」と読む漢字には「調」と「凋」があります。

「凋落」(ちょうらく)
草木がなえてしぼむ。勢いが衰える。
こちらは「しゅう」と誤読されることが多いようです。

間違いも多くの人が使うようになると辞書に登録され、受け入れられていきます。
「耳ざわり」も変化の兆しがある語です。

「耳障り」(みみざわり)
聞いていて不快に感じること。
“差しつかえる” “じゃま” の「障る」ですが、
最近は「耳触り」も載せている辞書があります。
肌触り・舌触り・手触り・歯触りなどに加えて、
「耳触り」が “聞いたときの感じ・印象” の意で使われています。
・キーキーというひどく耳障りな音がした。
・耳触りのいいメロディ
・耳触りの良いことばかり口にする政治家は信用できない。

「目障り」「耳障り」「気障り」は眉根の寄るものですが、
「耳ざわり」は嫌悪/好感の両方に用いられるようになっています。





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2017年10月11日

刹那(せつな)

きわめて短い時間。瞬間。
仏教用語で時間の最小単位を意味します。
本来「短い時間を大切に過ごしなさい」と言う教えで、
「刹那主義」は、現在の瞬間を生きることに全力を尽くすという考え方。
それが今では一般に、
一時的な快楽を求めようとする考え方になっています。

一方「快楽主義」は、
「人生の目的は快楽であり、快楽こそが最高の善である」
というエピクロスという哲学者が説いた考え。
一見、自堕落なことのように思えますが、
ここでいう「快楽」とは、
肉体において苦しみのないことと、魂において乱されないということ。

仏語の「快楽」は「けらく」と読み、
煩悩から解放されて得られる安楽。
けっして酒池肉林的な快楽ではありません。

仏語には時を表す難しい語がいくつもありました。

「弾指」(だんし/だんじ)
指を1回弾いて出る音の長さ。
曲げた人指し指の爪を親指の腹にかけて強くはじくこと。
密教系や禅系で使われる所作で、
許諾・警告・不浄の除去などに使われます。
「指弾」「爪弾き」はこの所作から来ています。

「須臾」(しゅゆ)
短い時間。しばらくの間。
仏語では一昼夜の三十分の一の時間。
見慣れぬ語ですが、以前は小説などでも多く使われていたようです。
・槍は兵士を追い、かれらを須臾の間に血まみれの骸と変えていった。
・その巨大・強力な勢力には、須臾の弛みも許されない。
・須臾にして、五感が一つ一つ、嗅覚を先にして恢復して行った。
・20世紀なんてものは、人類生存の年限からいったら、ほんの須臾のあいだだ。

「玉響」(たまゆら)という珍しい語も時を表します。
漢字といい音といい神秘的な感じしませんか。
なんだかいわくありげに見えます。
玉が触れ合ってたてる微かな音のこと。
転じて “ほんのしばらくの間”
あるいは “かすか” を意味する古語。
・日々のたまゆらの慰めになった
・たまゆらのよろこびに浸っている
・たまゆらの充足をもとめて、永遠のむなしさに陥ってしまう。

○時を表す熟語
一瞬・ 瞬間・瞬刻・瞬時・瞬息・瞬目・咄嗟・片時・
寸時・寸隙・寸刻・寸陰・
永遠・永久・永劫・久遠・恒久・長久・悠久・無窮




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2017年10月10日

禿頭(とくとう)

はげ頭

いつも「ハゲ」「ハゲ」と言って笑いのタネにしていますが、
「禿頭」という真面目な?熟語があったんですね。
他に「ハゲ」の固い表現はないようです。
「はげちゃびん」「はげちょろ」「はげちょろけ」「はげちょろける」
などの語が辞書に載っていました。

「はげ」は「剥ぐ」の名詞形から。

禿髪(とくはつ)
髪の毛が抜けてはげること。

「禿」(かぶろ/かむろ)
「古くは「かぶろ」で、近世以降「かむろ」に。
1、はげ頭。
2、おかっぱの童子の髪型のこと。
3、遊郭の太夫が側におい身の回りの世話をさせた少女(かむろ)

「禿」のところに「禿びる」という語がありました。

「禿びる」(ちびる)
先がすり切れて短くなる。
「ちびる」は、「禿ぶ」(ちぶ)の口語的表現。
元は小さいものを意味する「粒」(つび)から。
「ちび」は「ちびる」の連用形が名詞化した語。
ちび ← ちびる ← 禿ぶ ← 粒
“小さい” が “ちょっと” 何かをするという俗語的な表現になり、
<ちょっと小便を漏らす> → <小便をちびる>に。
「禿」という漢字は私には凛々しく映るのですが、
「チビ」と「ハゲ」2つの意を含んでいました。

「髢」(かもじ)はご存知でしょうか。
髪を結う時、自分の髪に添え加える毛。

「毟る」(むしる)という漢字もほとんど目にしませんね。
日本で作られた国字です。
意味はそのものズバリ、毛をむしりとって少なくする。
薄毛の方々には「むしり取るなんてありえなーい」
と叫ばれることでしょう。
抜け毛に悩んでいる人には 目に突き刺さる漢字かも。



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2017年10月09日

囲繞(いじょう/いにょう)

まわりを取り囲むこと。

「繞」 ニョウ・ジョウ
めぐる。かこむ。

あまり聞かない語かと思いますが、不動産業界の方はご存知ですね。

「囲繞地」(いにょうち/いじょうち)
民法上、袋地を囲む周囲の土地。
袋地所有者は公路に出るためこの土地の通行権をもつ。
→「囲繞地通行権」

「袋地」(ふくろち)
道路に面していない土地。
http://allabout.co.jp/gm/gc/419539/

実は、この語にたどり着いたのは、
しんにょうの点が1つと2つの違いが気になったことからです。
しんにょうは「之繞」と書くんですね。
「繞」(にょう)は、
漢字の構成部位のうち、左から右下にかけて囲む部分。
「之」(し)の字に似ていることから
「之繞」(しにょう)の名がつき、
なまって「しんにょう」、さらに「しんにゅう」とも。
最近は「えんにょう」などと統一するため、
「しんにょう」と読む傾向にあります。

点が1つと2つの経緯はややこしいです。
歴史と国語審議会と書体の問題が入り組んでいます。
1716年清の康煕帝(こうきてい)の勅命によって作られた康煕字典は、最も正当な規範と考えられていますが、康煕字典に載っている漢字はすべて二点しんにょうです。
二画目以降の筆の運びが続いているかいないかの違いで、本来は同じものということです。
常用漢字に関しては「一点しんにょう」が正しいとなります。
2010年に新常用漢字表が告示され、
「遡」「遜」「謎」はそのまま二点しんにょうが正体となりました。
どんなこだわりで3つ漢字が残ったのでしょう。
ただ、一点しんにょうで書いても良いことになっています。
とりあえず全て一点しんにょうでOKと覚えておきます。

「しんにょう」は道や歩く事に関するもの。
○3画のしんにょう
込 辺 迅 近 迎 逆 迷 逐 連 逓 通 逸 遅 道
違 遠 遺 遮 遍 遣 遵 還 返 述 迭 迫 送 退
追 逃 逝 造 速 途 透 週 進 逮 運 過 遇 遂
達 遊 遭 適 選 遷 避 迪 遥 遼
○4画のしんにょう
辻 迄 迂 這 逗 辿 遁 逼 遡 遜
遽 邏 邁 逍 逞 逅 迸 逢 迦 邂

○えんにょう 延 建 廻
○そうにょう 赴 起 越 超 趣 赳 趙 趨
○かんにょう 凶 凹 出 凸 函
○きにょう 魅 魁 魃 魑 魍 魎
○ばくにょう 麺 麩 麹
○ふうにょう 颱 颶
○すいにょう 処
○そうにょう 爬

「繞」の付く語に
「纏繞」(てんじょう)という語がありました。
まといつくこと。からまりつくこと。
「纏」は “まとわりつく” “身に着ける” という意味で、
中国の「纏足」(てんそく)の漢字でした。



posted by 空凛 at 20:08| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月08日

これ、読めますか?

神仏に関する語です。
「手水」 「直会」 「御神籤」 「山車」 「地車」

「手水」(ちょうず)
てみずの転。
てみず → てうづ → ちょーず
1、手や顔などを水で洗うこと。また、その水。
2、トイレへ行くこと。

「直会」(なおらい)
祭事が終わってのち、
供え物のお酒や飲食物を下げて酒食する宴。
「直り合い」(なほりあひ)から。
祭祀のため行った斎戒を解き、平常に直るという意。

「お御籤/御御籤/御神籤」(おみくじ)
神仏のお告げを得て吉凶を知るために引く、くじ。
おみくじの「お」「み」は、
「おみき」「おみこし」などと同じ接頭語で、
「み」を「神」と書くのは当て字。

籤(くじ)の語源は、諸説あります。
〇串(くし)説。
串のような棒状の物を使うことが多かったため。
〇抉る(くじる)説
箱などに入った物を引く
→ 中の物をえぐって取り出すことから。
〇公事(くじ)説。
神仏による審判と考え、
裁判を意味する「公事(くじ)」から。

「山車」(だし)
祭礼のとき、引いて練り歩く装飾を施した屋台。

「山車」は当て字で、
屋台の鉾につけた竹籠の編み残し部分を
垂れ下げてだした「だし」から。

「地車」(だんじり)
日本の祭礼に奉納される山車(だし)に用いられる
西日本特有の呼称。

「楽車」「壇尻」「台尻」「段尻」とも表記されます。

こちらも由来が諸説あります。
〇屋台をじりじりと動かすことから「台じり」説。
〇台にじり説。
〇祭場を意味する「壇」を引きづる説。

最後は神仏ではありませんが、最近気づいた、私の間み間違い。
「引数」を「いんすう」と読んでいました。
引火・引水・引責・引退などの読みは「イン」なので、
何の疑いも持っていませんでした。

「引数」(ひきすう)
プログラム中で、関数に引き渡すデータ。
引数=parameter(パラメーター)

般若心経の 「波羅蜜多」はパーラミターの音を漢字にしたもの。
サンスクリット語のパーラミターの意味は “完成した状態”

長いこと誤って覚えていた語は、
知った後も、間違った方が口に出るんですよね。
気をつけねば。



posted by 空凛 at 09:23| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月07日

揶揄(やゆ)

からかうこと。なぶること。

日常よく見聞きしているわりには、書けない「揶揄」です。

「揶」ヤ
からかう。あざける。

「揄」ユ
なぶる。からかう。

どちらも“からかう”という意味でした。
他での使用は見られず「揶揄」として生き残っています。

“あざける” “なぶる” は悪意のみですが、
“からかう” には、おふざけの軽さもあります。

「からかう」
冗談を言ったりいたずらをしたりして、相手を困らせたり、怒らせたりして楽しむ。揶揄する。

「おちょくる」も “からかう” “ばかにする”という意味ですが、明るくおどけた感じです。

「嘲る」(あざける)
人をばかにする。

「嬲る」(なぶる)
1、弱い立場の者などを、おもしろ半分に苦しめたり、
もてあそんだりする。
2、からかってばかにする。愚弄する。
3、手でもてあそぶ。いじりまわす。

「弄ぶ/玩ぶ」(もてあそぶ)
「持て遊ぶ」から。
1、手で持って遊ぶ。いじくる。
2、心の慰みとして愛する。
3、思いのままに操る。
4、人を慰みものにする。なぶる。

Wikipediaには、
「揶揄」は社会的立場が強い人に対して用いられ、
風刺の意図が強い言葉として定義する。
とありました。
言い方が直接的でないということでは、
「あてこする」や「皮肉る」もあります。

「当て擦る」
ほかの話にことよせて、遠回しに悪口や皮肉をいう。

「皮肉る」
「皮肉」の動詞化で、
遠まわしに意地悪く相手を非難すること。

「風刺」
遠まわしに社会・人物の欠陥などを批評すること。

スマートで切れのいい「揶揄」や「皮肉」には、
小気味いいものを感じます。

話しはそれますが、
「揶揄」のように同じ偏の熟語って、繰り返しのリズムがあって印象的です。
齟齬(そご)なんて、ヘンテコな絵に見えます。
同じ偏の熟語を探してみると けっこうありました。

纏繞(てんじょう)・紛糾(ふんきゅう)
髑髏(どくろ)・軋轢(あつれき)・標榜(ひょうぼう)
咄嗟(とっさ)・叱咤(しった)・
蹂躙(じゅうりん)・躊躇(ちゅうちょ)
逃避(とうひ)・迅速(じんそく)・迂遠(うえん)
狡猾(こうかつ)・獰猛(どうもう)
指揮(しき)・指摘(してき)・揶揄(やゆ)
惨憺(さんたん)・憔悴(しょうすい)・憤慨(ふんがい)
忸怩(じくじ)・憧憬(どうけい)
淘汰(とうた)・潤沢(じゅんたく)
徘徊(はいかい)・傀儡(かいらい)
贈賄(ぞうわい)・齟齬(そご)
寛容(かんよう)・罵詈(ばり)・蘊蓄(うんちく)



posted by 空凛 at 09:34| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月06日

間違いやすい語

間違いシリーズは何度かやってますが、
身近にいくらでもあるものですね。

× 後仕末
○ 後始末

× 一睡の夢
○ 一炊の夢

× 極め付けの芸
○ 極め付きの芸

× お求めやすい価格
○ お求めになりやすい価格

× 世におもねた態度
○ 世におもねった態度

× 足下をすくわれる
○ 足をすくわれる

× 枯れ木も花のにぎわい
○ 枯れ木も山のにぎわい 

× 焼けぼっくりに火がついた
○ 焼けぼっくいに火がついた

「ぼっくい」は「木杭」で、切り株や杭のこと。
「棒杭」(ぼうくい)が音変化したもの。
一度 炭化した杭は火が付きやすいことから、
すぐに燃え上がる関係、
特に恋愛関係について言うようになりました。
私は煤けた松ぼっくりの絵を思い浮かべていました。

× 一つ返事で快諾した
○ 二つ返事で快諾した

「二つ返事」(ふたつへんじ)
気持ちよく、すぐに承諾すること。
「はいはい」と2度言う意味もあります。

めんどうくさそうに「はい、はい」と返事するイメージがあって、「一つ返事」という表現が生まれたのでしょうね。

× 肉迫
○ 肉薄

本来は体と体が触れ合うほど大勢が密集して、敵に攻め寄ることを意味しました。
そこから、相手に鋭く詰め寄る意に。
「肉」は “肉体”、「薄」は “迫る”
辞書には「肉迫」も載っています。




posted by 空凛 at 08:10| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする