2017年11月15日

下種(げす)

1、心根の卑しいこと。下劣なこと。
2、身分の低い者。
3、下司(げし)に同じ。

「げす」の語源は、「下 」+ 「す」(種/衆)
“下々の種姓” の意。
「種姓」は “血筋・家柄” という意味。
すじょう = 素性/素姓/素生/種姓

「上衆」「下衆」は源氏物語にも登場する古い語で、
元々はこちらが使われていたのかもしれません。
江戸時代の用例では「下司」が多く使われていました。

現代の辞書では、
「下種」「下衆」「下司」と3通り載っていて、
どれを使ってもいいようです。

それぞれの対義語は、
下種 ---- 上種(じょうず)
下衆 ---- 上衆(じょうず)
下司 ---- 上司(じょうし)

「上種/上衆」は 身分のよい人。貴人。
「上司」は 役職が上の人。

「ゲス」単独で口にすることは、あまりありませんが、
「下種の勘繰り」「下種の極み」 などの表現で、今に使われています。

「下種の勘繰り」(げすのかんぐり)
品性の卑しい者はひがみっぽくて、物事を悪く考えがちである。

「下種の極み」は漫才「ハマカーン」のネタでよく耳にしました。
固い言葉がお笑いの中に挟まれると新鮮に響きました。

新聞広告に、
心屋仁之助「ゲスな女が、愛される」という本がありました。
「ゲス」が際どく効いているタイトルです。
読んではいませんが、
ダメな自分を受け入れて、がんばること・愛されようとすることをあきらめよう。
そのままの自分でいいんだよ。
という内容らしいです。
「ゲスの極み乙女」というバンドもありますね。

「下種」には「げしゅ」と読む仏語があります。
信仰の種を人々にうえつけるという意。
仏・菩薩が衆生に仏となる可能性を与えること。




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2017年11月14日

一切合財/一切合財(いっさいがっさい)

1、全部。残らず。すべて。
2、(後に打消しの語を伴い)全然。いっさい。

同義語の「一切」と「合切」を重ねて意味を強めた語。

日常よく使う「いっさい」ですが、漢字の「一切」を見ると、
えっこんな字だったのって思いません?
「ひときれ」なのに “全部” なんてこれいかに!
「切」を見ればすぐに「切る」イメージが浮かびますが、
深く心に感じるさまも意味します。

「切」セツ・サイ・き-る
1、刃物などで切る。
2、こすり合わせる。
3、ぴったりする。
4、さし迫る。

「切」セツ
1、心をこめて。
2、身にしみて。
3、さし迫った。

「切なり」(せちなり)古語
1、ひたむきだ。
2、痛切だ。
3、感極まる。

というわけで、
「親切」は親を “切る” ではありません。
「親」は “親しい” “身近に接する”
「切」は刃物をじかに当てるように “身近である” “行き届く” 意。
「親切」は、身近に寄り添い、行き届くようにすること。

思いやりの深いようすを表す「深切」という語も中国から伝わり、
古くは「深切」が使われていました。
用例を検索してみると、
太宰治・芥川龍之介・泉鏡花などの文章に見られ、近年まで使わていました。

また、「親」には “みずから” という意味があり、以下のような熟語があります。

「親展」(しんてん)
みずから「展」あける意。
本人みずから開封してくださいね、という意味です。

「親書」(しんしょ)
1、自筆の手紙。
2。国家元首が他国の元首に宛てて送る手紙。

「親政」(しんせい)
天子がみずから政治を行うこと。

知らなかった「切」の熟語も記しておきます。

「切所」(せっしょ)
山道などの通行困難な所。難所。

「切要」(せつよう)
きわめて大切なこと。



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2017年11月13日

宗主国(そうしゅこく)

従属国に対して宗主権をもつ国家。

わかりずらい説明です。
簡単に “支配国” と言ったほうが理解が早いと思います。

宗主権
他国の内政・外交などを支配・管理する権能。
植民地などが独立する過程で、本国がその植民地に対してもつ例が多い。

宗主
1、本家の長。本家の嫡子。中心として尊び仰がれる人。
2、古代中国、封建時代に諸侯を支配していた盟主。


〈シュウ〉
一派をなす教義。また、それを奉ずる団体。
〈ソウ〉
1、祖先を祭る所。
2、同族の中心。本家。
3、中心として尊ぶ。尊ばれる人。

「宗主国」の類語:「支配国」「盟主国」

盟主」(めいしゅ)
同盟の主宰者。仲間のうちで中心となる人物や国。


固い約束を交わす。誓う。誓い。

・盟主となる
・支配者となる
・統治者となる
・覇者となる
・覇権を握る


1、武力で天下を取る者。
2、力によって支配すること。競技で優勝すること。

覇道」(はどう)
儒教の政治理念で、武力や権謀をもって支配・統治すること。

対義語は「王道」なんですね。

王道」(おうどう)
有徳の君主が仁義に基づいて国を治める政道。


今回のタイトル「宗主国」は難民問題を調べていて、目に留まりました。
そして「無辜の民」という語も。

無辜の民」(むこのたみ)
「辜」は “つみ” の意。
罪のない人々。
為政者の暴政や国家間の争い事などに巻き込まれる人々などを形容して言うことが多い。
天災や人災などに巻き込まれた人々にも使われます。




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2017年11月12日

正々堂々(せいせいどうどう)

1、軍隊などの陣構えが整い、勢いが盛んなさま。
2、態度や手段が正しくりっぱなさま。

「正々」(せいせい)
正しく整っているさま。

「堂々」
1、りっぱで威厳のあるさま。
2、なんの隠しだてもないさま。こそこそしないさま。

出典は「孫子の兵法」で、
「正正の旗、堂堂の陣」から。
“旗の列が整い、士気の盛んな軍隊”を意味します。

「堂々の陣」(どうどうのじん)
規律が整然として士気の盛んな陣。

「堂々巡り」(どうどうめぐり)
1、祈願のために、仏堂などのまわりをぐるぐるまわること。
2、同じようなことが何度も繰り返され、進行しないこと。

「堂に入る」(どうにいる)
物事に習熟している。身についている。

「堂に入る」は、論語の「堂に升りて室に入らず」から。
「堂に升(のぼ)りて室に入らず」とは、
「堂」は中国の建物で客に応接する表座敷、
「室」は奥の間の意。
堂に昇ってはいるが(お屋敷には上っているが)、
室には入っていない(奥の間には入っていない)。
と孔子が弟子を評したもの。
お屋敷に上り奥の間に入るところまでいくと名人。
学問や技芸がかなりの段階に達しているが、
まだ深奥には達していないたとえ。
それが、中が省略されて「堂に入る」となり、
意味も“習熟している”に変わっています。

「堂」の字源
土地の神を祭るために柱状に固めた土の象形

1、神仏をまつる建物。
2、多くの人を入れる建物。


「がらんどう」
だれもおらず、何もない状態。がらんとして広いこと。

がらんどうの語源は伽藍堂だとする説があります。
「伽藍堂」は 寺院で、伽藍神を祭ってある堂。
「伽藍神」は 寺院を守護する神。
伽藍堂の中は何もなくて広々としていました。
本来は広い建物に人や物がないさまをいいましたが、
最近では狭い部屋でもがらんどうと使われています。


「〇〇〇堂」という名称は多いですね。



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2017年11月11日

顰に倣う(ひそみにならう)

1、ことの良し悪しを考えず、やたらに人まねをすること。
2、他人にならって物事をするのを謙遜していう言葉。

「顰」(ひそみ)は動詞「顰む」の連用形。
眉間にしわを寄せて顔をしかめること。

「顰に倣う」は使う人も意味を知っている人も稀かもしれません。
私も語源を知ってようやく意味が理解できました。
語源は中国の故事からきています。
春秋時代、越の国に西施(せいし)という美女がいました。
西施が胸を病み、顔をしかめて歩いているのを見た醜女が
自分も眉間にしわを寄せれば美しく見えると思い、
郷里に帰って西施を真似ねて顔をしかめて歩きます。
しかしそれを見た村人はあまりの醜さに気味悪がって、
逃げ出したり、家に閉じこもったりしました。
そこから、善し悪しも考えずに人の真似をする意に。

「顰」ヒン
顔をしかめること。まゆをひそめること。

「顰め面」(しかめつら)

「顰蹙」(ひんしゅく)
不快に感じて顔をしかめること。まゆをひそめること。

「蹙」シュク・スク
縮こまる。

「顰蹙を買う」
回りにいる人の眉をひそめさせるような行為をして軽蔑されること。

「ひんしゅく」って、こんな込み入った漢字だったんですね。
でも画数は多いですが、よく見ると知っている漢字に分解できます。
「顰」歩+頁+卑
「蹙」戚+足

ずいぶん前に、鬱という字の覚え方を紹介しましたが、
私はもう半分くらい忘れていました。

「鬱」
「リンカーンはアメリカンコーヒーを3杯飲んだ」
 (「林」「缶」「ワ」「※」「コ」「ヒ」「彡」)
「※」のような部分は米を表していて、
「※+ヒ」部分は、器の中に米を入れ、
香草とともに酒をかもしている状態を表しています。

「鬱」
1、木がこんもりとしげるさま。
2、気がふさがること。

「萩」と「荻」はよく似ていて読み間違いが多いと思いますが、
最近、覚え方を見つけました。
「萩」(はぎ)秋の葉 → 葉の「は」
「荻」(おぎ)獣偏 → 獣の尾「お」




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2017年11月10日

蹉跌(さてつ)

(つまずく意から)
物事がうまく進まず、しくじること。挫折。失敗。

「蹉」
つまずく。失敗する。

「跌」
足を踏み外す。つまずく。

蹉跌は “つまずく” を重ねた熟語でした。

中国語の「蹉跌」
(文語文) つまずいて転ぶ。うっかり過ちを犯す。

・母もまた同じように人生に蹉跌したのであった。
・これまでの半生は蹉跌の連続であった。
・この計画が完全に蹉跌することを意味している。
・過ぎた楽観が、安易さが、油断が、蹉跌の最大の原因といえた。
・やることなすことに蹉跌をきたした。
・日本は蹉跌するであろうか?
・歴史認識の蹉跌
・事業は蹉跌を来した。

すこし前から蹉跌という語が気になっていました。
「青春の蹉跌」(石川達三1968出版)という本の存在で、
蹉跌という語は知っていましたが、
(本は読まず、意味はずっと後になって知るのですが)
現在、蹉跌はほとんど使われていないように思います。
使用例はたくさん見つかるので、昭和の頃まではよく使われていたようです。
それが平成に入って、いつしかあまり聞かれない存在になっていました。
何か時代背景があるのでしょうか?
いろいろ検索してみましたが、残念ながら何もでてきませんでした。

そんな時、ロイターのニュース見出しに
「ドラギマジックの蹉跌、期待制御の難しさ露呈」とありました。
まだ使われているんだと、なんだか嬉しくなって今回取り上げました。
言葉も流行り廃りがありますから、蹉跌という語もちょっともてはやされた時期があって、あきられたのかもしれません。
もし何かご存じの方がいらしたら教えて下さい。

現在はもっぱら「挫折」を使いますが、
本来重い響きの「ざせつ」も多用されて、
ちょっと軽めになっている気がします。

「挫折」(ざせつ)
仕事や計画などが、中途で失敗しだめになること。
また、そのために意欲・気力をなくすこと。

「挫」
1、くじいて痛める
2、途中でつまずく。くじける。




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2017年11月09日

荏苒(じんぜん)

何もしないで、月日がいたずらに過ぎていくようす。
また、物事がはかどらず のびのびになっていくようす。

・荏苒と日を送る。
・捜査当局の焦慮のうちに、荏苒として月日がたっていったが・・
・このまま荏苒時を過ごして、老いさらばえるのかと考えると、 実になんとも情けないのであります。

現代はほとんど目にしなくなった荏苒ですが、
明治から昭和初期あたりの小説には登場しています。

「荏」ニン・ジン・え・えごま
1、エゴマの古名。
2、やわらかである。力らがぬけてだらしない。
3、大豆またはエンドウのこと。

「苒」ゼン
1、草がしげるさま。
2、のびのびになるさま。

各々の漢字の意味を書きましたが、
「荏苒」という熟語の成り立ちは「荏」「苒」の意味からでなく、
音のイメージを借りた擬態語。という説もあります。

エゴマの写真を見ると、ほんとにシソによく似ています。
種子から絞った油は「荏の油」(えのゆ/えのあぶら)と呼ばれました。
菜種油が普及するまでは、日本で植物油と言えばエゴマ油であり、灯火にも用いられました。
最近またエゴマ油が見直されているようです。

地名の 「品川区荏原」、 東急大井町線の「荏原町駅」の荏原は、“エゴマの茂る原” からきています。
焼肉のたれのエバラ食品工業(株)も地名の荏原由来だそうです。

私は「荏原」の「え」がなかなか覚えられなくて、何度もノートに書いた振り仮名を確認したものです。

「老舗」も「しにせ」がスルリと言えず、「ろうほ」と出そうになります。
「ろうほ」という読みもあるのですが、通常は誤読と思われます。
「しにせ」の語源は “似せる・真似る” 意の「仕似す」(しにす)。
「しにす」の連用形が名詞化され「しにせ」に。
江戸時代に家業を絶やさず守り継ぐ意味となり、
長年商売をして信用を得る意味で用いられるようになりました。
「しにせ」と読まれる前に中国から入ってきた「老鋪(舗)」という熟語があり、
この熟語に「しにせ」という読みを当てたものです。

もう一つ私が引っかかった読み間違いは「六義園」(りくぎえん)です。
「ろく」ではなく「りく」ですね。
「六」の漢音は「リク」、呉音は「ロク」
呉音は古く伝わった音で、仏教語などに多く残っています。
漢音は後から伝わった音で、
漢文のほか一般の “熟語” の多くは漢音読みです。
漢文の世界では原則として漢音を使うことになっています。
六朝時代(りくちょうじだい)、六尺の孤(りくせきのこ)、
六展(りくてん)、六国史(りっこくし)

六義園という名前は、中国の古典「詩経」の詩の分類法「六義」(りくぎ)から。
園を設計した柳沢吉保は庭園で和歌の世界を再現しようと試みました。




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2017年11月08日

読みが複数ある語

前回に続き、読み方が複数あって読みに迷う語を取り上げます。

貼付」(ちょうふ/てんぷ)
正しくは「ちょうふ」でしたが、
「てんぷ」も慣用読みということで認められています。
「張」「貼」とも読みは、チョウ・は-る
「貼」は “のりではりつける” 意。
・切手を貼る
・絆創膏を貼る
「貼」が常用外の漢字であるため、
原則 常用漢字表に基づいている新聞は「張る」を使っています。
熟語は「貼付」「貼用」のみ。
しかも「貼用」はあまり使われている風もなく、変換もできません。
「貼用」(ちょうよう)
はりつけて用いること。
実際にどう使うのかわからなくて検索してみると、
「貼用印紙」という語で使われていました。

分泌」(ぶんぴつ/ぶんぴ)
私は「ぶんぴ」のみ認識していましたが、
今回はじめて2つの読みが拮抗していることを知りました。
若い人ほど「ぶんぴつ」と読む人が多くなっていて、
今後 優勢になっていくと予想されます。
旁(つくり)の「必」から「ひつ」と誤読されて広まったようです。
NHKでも読みを「ぶんぴ」から「ぶんぴつ」優先に変更したそうです。

施工」(しこう/せこう)
本来は「しこう」ですが、
法律の「施行」も同じ音なので、区別するために、
工事関係者が「せこう」と読むようになり、一般に広がったものです。
「施術」も「しじゅつ」「せじゅつ」の両方が認められるようになりました。
こちらも医療行為の「しゅじゅつ」と区別するために、
あえて「せじゅつ」を使うようになったことから。
「施」の読みは、シとセがあって混同しやすいですね。
施策(しさく)・施政(しせい)
施主(せしゅ)・施行(せぎょう)・施錠(せじょう)

先を越す
これは読みに疑問を持ったこともなく、
「さきをこす」だと思っていましたが、
本来は「せんをこす」が正しく、現在は両方の読みが存在します。
「機先を制する」(きせんをせいする)
「先手を打つ」(せんてをうつ)
「先を争う」(さきをあらそう)




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2017年11月07日

元凶(げんきょう)

悪者のかしら。転じて、諸悪の根源。

以前は「元兇」と書きました。

」キョウ
人をきずつけること。また、悪者。

先日、TVから「がんきょう」と聞こえてきて違和感がありました。
「がんきょう? げんきょう?」
両方 口にしてみると、どっちが正しいかわからなくなりました。
変換は「げんきょう/がんきょう」どちらもできます。


ガン・ゲン・もと・はじめ
ガン>唐音
元旦・元日・元年・元来・元金・元利・元祖
ゲン>漢音
元凶・元気・元号・元素・元物
元首・元帥・元老・元徳・元服
還元・紀元・復元・多元・次元

「出生」も読みに迷う熟語です。
出生」(しゅっしょう/しゅっせい)
どちらの読みも辞書に載っています。
出生届・出生地・出生前診断・出生率
一般的には「しゅっしょう」、
法律や医学関係では「しゅっせい」が使われるようです。
戦前、兵隊が戦地に赴く「出征」(しゅっせい)と区別するために、
戸籍や住民票を扱う役所では「しゅっしょう」と読みました。

<<基本は、「生」が頭につくと「セイ」、後ろに付くと「ショウ」となる>>
とWebにあったので、書き並べてみました。
ショウ
相性・養生・往生・一生・畜生・衆生・今生・後生
セイ
生産・生活・生存・生徒
※「学生」は、学校生徒の略であるため。
ところが、
後ろにつく<セイ>もこんなにありました。
発生・衛生・共生・寄生・再生・更生・半生・人生・晩生

御用達」の読みはどうでしょうか?
“宮内庁御用達” “王室御用達” など「ごようたし」と言っていますが、
辞書で確認すると「ごうようたし/ごようたつ」どちらも載っています。
本来は「ごようたつ」だったのが、「ごようたし」が広まったようです。
その詳しいいきさつを解説したページがこちら。↓
http://www.asahi-net.or.jp/~YY8A-IMI/20040913/jikken/goyou.htm
宮内庁の御用をさせていただく側からいうと、
文字の区切りは “宮内庁御用−達” で、
御用を達するので「ごようたつ」
宮内庁から見れば、そこを使って用を足していることで、
“宮内庁御用足し”
この “御−用足” と “御用−達” が混ざって、
「ごようたし」になったのではという推理です。
「御用命」も “宮内庁御用−命” で、
宮内庁の御用を命じられたという形です。




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2017年11月06日

「先日」ってどのくらい前?

皆さんは「先日」をどのくらい前と認識しています?
Webにも質問が寄せられていました。
答えをみると数日から数か月、1年という人まで、想像以上に幅がありました。

「先日」は「この前」「この間」の改まった表現。
いつまでという具体的な決まりはなく、
はっきり日が思い出せないか、日付が重要でない時に使います。

ご承知のように私もかなり便利に使っています。

「先日」に似た言い方に、
以前・先ごろ・先だって・先般・過日 などがあります。
「先般」(せんぱん)・「過日」はやや改まった言い方になります。
- - - -
自2015年○月○日
至2016年○月○日
- - - -
このような表記がありますが、
この「自」は起点の意。 “〜より(から)”
同じ意味の熟語に「出自」(しゅつじ)があります。

明日(あした)
明後日(あさって/みょうごにち)
明々後日(しあさって)はまだ耳にしますが、
「やのあさって」という語がありました。
「しあさって」が “今日から数えて4日目” で、
「弥の明後日」(やのあさって)が “今日から数えて5日目”
「弥」は “物事が重なること” “程度がはなはだしい” 意。
西日本では「ごあさって」「ろくあさって」と言い、
地域によって違うようです。


「生まれてから5日目」「○駅から3つ目の駅」
といった「目」の使い方ですが、
どの地点からカウントするのでしょう?

原則、起点を1として数えます。
「○世紀」や「○回忌」は1が起点です。
起点を 1 とする数え方が「数え」、
起点を0とする数え方が「満」。
「目」の場合は “数え” と “満” 両方で使われていたりするので、
場所などの場合は間違いがないように確認が必要です。

ところで、
駅の発車案内の表示が東京と大阪で違うのですね。
東京では、
(1)こんど (2)つぎ (3)そのつぎ
大阪では、
(1)先発 (2)次発 (3)次々発

確かに「こんど」という語は紛らわしいですよね。

「今度」(こんど)
1、このたび。今回。
2、この次。次回。
3、最近。このごろ。

誰にもわかりやすい1番目、2番目、3番目・・
と数字表記のほうがいいのでは。




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2017年11月05日

通り言葉(とおりことば)

ある世界やある仲間の間で用いられる言葉。

「隠語」(いんご)
特定の社会・集団内でだけ通用する特殊な語。

「通り符牒」(とおりふちょう)
同業者の間だけに通用する符牒。

ということで、
刑事ドラマに出てくるような語を拾ってみました。

「インチキ」
詐欺的賭博。本物でないこと。
「いんちき」は明治時代の賭博仲間の隠語。
いんちきが広まったのは昭和になってからで、
それまでは「いかさま」が使われていました。
インチキの「イン」は「いかさま」の「いか」が変化したもの。
「チキ」は「高慢ちき」や「とんちき」など
人の状態を表す接尾語「ちき」から。

「ペテン師」
詐欺師。
「ペテン」は詐欺を意味する中国語「bengzi」が訛ったもの。
日本では明治初期から用例が見られます。

「ガセ」
偽物。まやかし物。嘘。
元は的屋の隠語で、「お騒がせ」の「がせ」
刑事ドラマの「ガセネタ」でお馴染みです。

「デマ」
根拠のない、いい加減な噂話のこと。
“扇動” “扇動政治” を意味するドイツ語「デマゴギー demagogie」の略。
デマは昭和初期頃から使われています。

「でっちあげ」
捏造。
「捏」は、呉音「ねつ」/漢音「でつ」
捏「でつ」が動詞化され、「捏ち上げる」となり、「でっちあげ」に。

「バッタもん」
極端な安値商品。
古道具商の隠語。「ばった」は投げ売りを意味。
「バッタ」は物が落ちるときの擬態語と考えられています。
そこから商品を格安で売る店を「バッタ屋」と呼ぶようになり、
正規ルートを通さず仕入れた商品を売る店もいうようになりました。
バッタ屋で売られている物が「バッタもん」。
さらに、偽物や粗悪品なども「バッタもん」と呼ぶようになりました。

「エセ」
「似非」(えせ)は「似て非なるもの」という意味からの当て字。
語源は諸説あり。
「似非」は接頭語。
1、似てはいるが本物ではない、にせものである意を表す。
2、つまらない。質の悪い意を表す。

「えせ」と「にせ」似てますね。

「偽/贋」(にせ)
本物に似せて作ること。本物のように見せかけること。

「にせ」は “似るようにする” “まねる” を意味する「似す」(にす)の連用形が名詞化した語。
本物ではないというところから “ごかます” “偽造する” といったマイナスイメージがありますが、似せる・真似るが必ずしも悪いことではないように、「にせ」自体に悪い意味は含まれていません。

「為」は象を手なずけることを表す会意文字で、
人偏が付いて人間の作為によって姿を変える、うわべをつくろう意に。

「贋」は雁と貝からなり、
雁は格好よく飛ぶ鳥を、貝はお金を表しています。
形よく整えた財物 → 形だけ整えて似せた偽物の意に。




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2017年11月04日

けなげ

辞書で「けなげ」の意味を見て、自分のイメージとのズレにとまどいました。
まず 漢字が「健気」で、えっ!と思いました。

「健気」(けなげ)
「けなりげ」(殊なり気/異なり気)の音変化。
普通とは異なって格別であるさまの意から。
1、殊勝なさま。心がけがよく、しっかりしているさま。
特に、年少者や力の弱い者が困難なことに立ち向かっていくさま。
2、勇ましく気丈なさま。
3、健康であるさま。

“年少者や力の弱い者” というところは近いイメージですが、
だいぶ私のイメージするものから遠いものです。
では、私がイメージしている「けなげ」はどんなものか。
そうして語を探してみると、
じれったいくらいにしっくりするものがありません。
要素が含まれる語としてあげれば、
いじらしい・ひかえめ・一生懸命・耐える、など。
一般の人は「けなげ」をどう捉えているのでしょう。
するとこんな書き込みを見つけました。
*
「不平不満は言わないで淡々と生きている。
抱き締めたいほどいじらしい頑張り屋さん。」
な人を一言で「けなげ」と言うと思い込んでいましたが、
辞書を読むとどうも違うみたいです。
*
私と同じように感じている人がいました。

語源の説明には、
ほかと異なることを示す「けなり」(異なり)という形容動詞があり、
他より勝っている意でも使われた。
中世になると「けなりい」という形容詞ができ、
さらにそこから「けなりがる」「けなりげ」などの語が派生し、
それが略されて「けなげ」となった。

「けなげなり」は古くは “勇敢である” “毅然としている” という意味でした。
江戸時代には「殊勝なり」に近い意味で、
「女にしてはけなげなり」「子供にしてはけなげなり」
という風にして使われすぎたため、
“女子供が毅然としている” という風に変化しました。

「いじらしい」
かいがいしい。 殊勝なこと。感心なこと。

「殊勝」(しゅしょう)
1、とりわけすぐれているさま。格別。
2、心がけや行動などが感心なさま。けなげであるさま。
3、神々しいさま。心打たれるさま。

「殊勝」の類語を見ると、
大胆不敵・壮絶・大胆・壮烈・放胆・堂堂たる・不敵・
雄壮・勇壮・豪勇・勇猛・勇敢・勇烈・剛勇・凛凛しい・
雄々しい・堂々たる・甲斐甲斐しい・・
“雄々しさ” が前面に出ていています。

「けなげ」を検索していて、「けなげ組」を見つけました。
http://www.e-kakinotane.com/kenage/
亀田製菓「柿の種」のキャラクターです。
包装裏側に注目。
けなげに生きる「物」たちのつぶやきシリーズです。
ずいぶん前から続いていたようなのですが、“けなげさ”に気づきませんでした。




posted by 空凛 at 09:31| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月03日

賢しら(さかしら)

「ら」は接尾語。
1、利口ぶること。
2、自分の考えで行動すること。
3、よけいな世話を焼くこと。おせっかい。
4、おけいな口出しをすること。

「賢しら」は古風な言い方なので、あまり口にしませんが、
「小賢しい」という語で「賢しい」が出てきます。
古語の「賢しい」を参照すると、
1、利口ぶること。こざかしいこと。
2、おせっかい。差し出がましいこと。
3、告げ口。密告。
ほぼ同じ意味ですね。

古語の「かしこし」の意味は、
1、もったいない。恐れ多い。
2、恐ろしい。
3、身分が高い。貴い。
漢字は「畏し/恐し」
自然に宿ると信じられた精霊に対する畏怖の念を表します。
その後 “恐れ多い” という感情ではなく、
恐れ多い “対象” に対して「かしこし」を用いるようになりました。
・自然現象や神々 → 恐ろしい
・天皇や貴人 → もったいない
・人材 → 優れている、賢い
特に優れた人材に対して「かしこし」と使われるようになり、
区別するために「賢し」という字が当てられました。

質問コーナーに「賢い」と「利口」の違いは?
とありましたが、並べてみるとほぼ同じ意味です。

■賢い
1、頭の働きが鋭く、知能にすぐれている。利口だ。
2、抜け目がない。要領がいい。

■利口/悧口/利巧/悧巧
1、頭がよいこと。賢いこと。
2、要領よく抜け目のないこと。

どちらも “抜け目ない” という意味が含まれていて、
100%褒め言葉になっていないところも似ています。
「小利口」という語もありますしね。

「賢い」と「利口」共通の類語を並べてみると、
利発・賢明・怜悧・明達・明晰・明敏
英明・鋭利・鋭敏・聡明・明達・俊秀

漢字の字源を見てみます。

「怜」
「令」の原義は神からのお告げで、心に曇りがなく賢い意。

「賢」
奴隷のうち、財貨を扱えるほど能力の高い者。

「聡」
さとい。かしこい。耳がよく聞こえる。

「敏」
さとい。感覚がするどい。すばやいこと。

「俊」
すぐれている。さとい。

「晰」
他から切り出してはっきりさせる意。

「悧」(こざとい)
かしこい。
以前「利口」は「悧口」と表記。




posted by 空凛 at 08:26| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

複合動詞

・光り輝く
・開け放つ
・仰ぎ見る
・思い起こす
・盛り上がる
・使い果たす
・騒ぎ立てる
・借り換える
・積み立てる

何ら意識することなく普通に使っている言い方ですが、
2つの動詞がつながって続いています。
これらを「複合動詞」と呼びます。
前の動詞を「前項動詞」、後続の動詞を「後項動詞」と言います。

複合動詞はアジアに見られるもので、
特に日本では表現の多さが群を抜いているそうです。
「複合動詞」という存在を知って、
動詞が重なっていることに気づいたくらいで、
今まで気にしたこともありませんでした。
複合動詞は日本語を学ぼうとする人にとっては、手ごわい存在なのだそうです。

複合動詞を拾ってみると、確かに多い!
・飛び回る ・吐き出す ・書き上げる ・申し込む
・呼び寄せる ・届け出る ・受け付ける ・走り寄る
・作り続ける ・煮詰まる ・嘲り笑う ・握りつぶす
・払い下げる ・聞きとがめる ・呆れ果てる ・飲み下す
・笑い飛ばす ・遊び暮らす ・恥じ入る ・投げ入れる
・上り込む ・つかみかかる ・押し倒す ・殴り殺す

☆「て」で接続
・持って行く
・食べてみる
・仕舞っておく

複合動詞のデータベースもありました。
http://vvlexicon.ninjal.ac.jp/db/

「複合動詞」のことを知ったきっかけは、
「尽くす」という語を調べていて、行き当たりました。
(ほらもう複合動詞を使っている)

「尽」ジン
1、全部出しつくす。
2、全部。
3、つきる。きわまる。

「尽くす」
1、ある限りを出しきる。
2、きわめる。
3、果たす。全うする。
4、尽力する。
5、(動詞の連用形に付いて)全部…する。

「尽くす」は後項動詞としてたくさんの使用例がありす。
・知り尽くす ・やり尽す ・語り尽す ・言い尽くす ・見尽す
・考え尽す ・食べ尽す ・売り尽くす ・焼き尽くす
・立ち尽くす ・利用し尽くす ・使い尽くす ・遊び尽くす

近い表現に「切る」があります。
・思い切る ・断ち切る ・乗り切る
・張り切る ・打ち切る ・使い切る
・言い切る ・語り切る ・割り切る
・食べ切る ・歩き切る ・踏み切る

■「尽くす」と「切る」の違い
「尽くす」
残余がなくなる、ゼロになるというほうに重点あり、
やり残しのないことを表す。

「切る」
事態の完全達成を表す。

やり切った感は「切る」>「尽くす」でしょうか。





posted by 空凛 at 08:47| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月01日

拉ぐ(ひしぐ)

1、押しつけてつぶす。
2、勢いをくじく。頓挫させる。

「拉」には読みが複数あるのですが、ことごとく読めませんでした。

・拉ぐ(ひさぐ)
・拉ぐ(ひしぐ)
・拉ぐ(ひしゃぐ)
・拉げる(ひしげる)
・拉げる(ひしゃげる)
・拉げる(へしゃげる)

「拉」の字源は、
1、くだく
2、ひく。両手でひっぱる。
3、まねく。

「拉げる」(ひしげる)
押されてつぶれる。ぺしゃんこになる。

「拉」は拉致の漢字だとすぐ思い出しましたが、
その漢字が「ひしゃげる」の意味になるのが意外でした。
「ひしげる」で思い浮かんだのは「菱げる」。
「菱」(ひし)は三菱や菱形でお馴染みの漢字ですが、
由来は意外にも水草なのでした。
「菱形」は水草の「ヒシ」の形からきていますが、
“葉の形” “実の形” 両方の説があります。

「ヒシ」
ヒシ科の一年草の水草。池沼に生え、種子は食される。
http://www.hana300.com/hisi00.html

「拉」にはもう一つ読みがありました。
「拉く」(しだく)
※辞書によっては、ひらがな表記になっています。
1、形を壊したり、状態を乱したりする。くだく。荒らす。
2、乱れる。荒れる。

「しだく」だけだと見知らぬ語ですが、
「噛みしだく」「踏みしだく」「揉みしだく」となると見知った語になります。
きれいな表現ですよね。

ところで、
「ひさぐ」には、「鬻ぐ」という別の語もあります。
全く見たこともない漢字ですが、「販ぐ」とあればわかります。
春を鬻ぐ(はるをひさぐ)は 今も耳にします。

「鬻ぐ/販ぐ」
品物を売る。商売をする。

「鬻ぐ」(古語・雅語)売ること。

「雅語」とは、
平安時代、和歌などに遣われた洗練された上品な言葉。
対義語は「卑語」



posted by 空凛 at 09:14| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする