2017年10月31日

したたか

「強か」が読めませんでした。
長崎生まれの私は「つよか」と読んでしまいます。
ちなみに、
私の故郷の方言では「・・・か」という言い方をします。
強い----つよか
大きい--ふとか
良い----よか
優しい----やさしか
うるさい--やぐらしか

さて、
「したたか」を引くと「強」と「健」の字が当てられていました。
「健」にはちょっと違和感がありますが、
ほとんどは「強か」表記のようです。

「強か/健か」
<副詞>
1、たくさん
2、ひどく。

<形容動詞>
1、粘り強くて、他からの圧力になかなか屈しないさま。しぶといさま。
2、強く、しっかりしているさま。
3、強く勇猛であるさま。
4、度がはなはだしいさま。
5、分量がたいへん多いさま。

・久しぶりにしたたかに酒を飲んだ
・ころんで頭をしたたかに打った。
・したたかに発展し続けてきた港町、横浜。
・想像していたより数段したたかな女だった
・相当したたかな経営者らしい。

「したたか」の使用例を見ると、
人物評以外は “お酒を飲みすぎた” と “打った” “ぶつけた”
といったことがほとんどでした。

国語研究に関するPDFの中に、「したたか」についての記述がありました。
*古典から明治に至るまで「したたか」と仮名表記になっている。
*常用漢字表には「したたか」の訓はない。
*日本国語大辞典では「強」と「健」の2字を載せている。
*「したたか」の語源を以下のように解説。
「か」は接尾語。
「したた」は「確か」の意の語構成要素と考えられる「した」を重ねたものの変化。
語源的には「強」の字と結びつく要素はない。
よって、先に存在していた和語「したたか」に対して、
後から「当て漢字」をしたものと考えられる。
*紙媒体では仮名表記の「したたか」だが、
電子媒体ではネットの普及とともに「強か」という表記が増えている。
*現在においては、実際の漢字の使われ方は、携帯やパソコンの変換システムによって決まっていく。

人物評の「したたか」には誉め言葉プラス警戒心がにじみます。
「しぶとい」と比べても含むものがありますよね。

「しぶとい」(形容詞)
強情で臆するところがない。
また、困難にあってもへこたれずねばり強い。

「したたか」は人により場合によって、いろんな意味が込められていそうです。




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2017年10月30日

逋脱(ほだつ)

1、追及などを逃れること。
2、租税をのがれること。脱税。逋税。

「逋」ホ・フ・のが-れる
1、のがれる。にげる。
2、(返済を)引き伸ばす。

「甫」は “草の芽” の象形と “田畑” の象形から成る会意文字。
田に稲を一面に植える意味を表し、
そこから “大きい” “多い” “美しい” 意に。

「圃 」ホ
囲いをした畑。菜園。

「税」の偏(へん)は穂先が垂れかかる稲の象形。
旁(つくり)は「脱」と同様の意味があり、
収穫した稲から一部を抜き取ることを表しています。
「私」にも禾偏がついています。
「私」の旁の「ム」はかかえ込むさまを表し、
“かかえ込んだ自分の稲” から「わたくし」の意味になりました。
収穫した稲のうち、国に納めるものが「税」で、
自らのために保管するものが「私」なのでした。

古くは確定した納税義務の履行を免れることを「逋脱」、
納税義務の確定を免れることを「脱税」といいました。
国税や税法のWebページでは今も「逋脱」の語が見られます。

税の熟語を見ていて、珍しい読みを発見しました。
「税稲」(ちからしね)
「税倉」(ちからぐら)
古代日本では「税」を「ちから」と言っていました。
「ちから」は民から国家への貢物。
「力」の源泉でした。

のぎ偏の漢字は多いですが、いくつか字源を見てみます。

「穣」ジョウ・ゆたか
穀物が豊かに実る。

「稼」ケ・カ・う-える・かせ-ぐ
穀物の栽培。とった穀物。

「秒」ビョウ
元は稲や麦など穀物の実の先端にある針状の突起
「のぎ」を表していましたが、
近世になって時間の概念が認識されるようになって、
“わずかなもの” の意で使われるようにとされます。

「稠」チュウ・おお-い・し-げる
びっしり集まる。
「稠」はあまり目にしない漢字ですが、
熟語に「稠密」という熟語がありました。
知らない語でした。




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2017年10月29日

「悲しい」と「哀しい」/「寂しい」と「淋しい」

◇「悲しい」と「哀しい」の違い
違いがあると思っていましたが、
辞書には、「悲しい/哀しい」と載っていて、同じ意味でした。
とはいえ、それぞれの漢字がもつ意味は違うはず。

「悲しい」
「非」--- 羽が左右反対に開いた形から割れる意。
非+心 → 心が裂けること。胸が裂けるような切ない感じ。
古くは、
心が強く痛むさま。切ないほどいとおしい。かわいくてたまらない。
悔しい。残念。
など、激しく心が揺さぶられる状態をいいました。
「悲」と「愛」には、通じるものがあり、
「愛しい」は「かなしい」とも読みました。

「哀しい」
口+衣 → 衣で口を隠してむせぶさま。
思いを心の中に閉じ込め、胸がつまるような悲しい心情。

「悲しい」も「哀しい」も常用漢字ですが、
「哀しい」は常用漢字表外音訓で、
「かなしい」という読みは登録されていません。
新聞や公的な文章に用いられるのは「悲しい」です。

◇「寂しい」と「淋しい」の違い
こちらも辞書には「寂しい/淋しい」と載っています。
「寂」--- 家の中の人声が細く小さくなったさま。
「淋」--- 水が絶え間なくしたたるさま。
本来、「淋」に “さびしい” 意はないんです。

「寂しい」は「さびしい」とも「さみしい」とも読みます。
「さみしい」は「さびしい」が音変化したものです。
古語「さぶし」が転じて「さびし」になり、
近世以降に音変化して「さみし」に。
江戸時代以降に「さみしい」が現れます。

「寂」は常用漢字で、「淋」は表外漢字のため、
新聞などでは「寂しい」が使われます。
放送では「さびしい」を標準形としています。



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2017年10月28日

愚の骨頂(ぐのこっちょう)

この上なくばかげていること。

「愚の骨頂」は元々は「愚の骨張」で、
“愚かな意地を張る” という意味でした。
「骨張」 → 「骨頂」
古くは “意地を張る” が「骨張る」(ほねばる)、
「意地っ張り」を「骨張り」(ほねばり)といいました。
それを音読みしたのが「骨張」(こっちょう)で、
「愚の骨張」がしだいに “愚かさの頂上” だと勘違いされ、
「愚の骨頂」という当て字が現れました。
そこからさらに勘違いが進み、
「骨頂」に “頂上” “最上” などの意味ができ、
“真に最上” という意の「真骨頂」が生まれました。

「真骨頂」(しんこっちょう)
そのものが本来もっている姿。真面目(しんめんもく)。

「骨頂」
1、程度がこれ以上ないこと。
初めは善悪いずれにも用いたが、現代は好ましくないことについて用いる。
・野暮の骨頂
・バカの骨頂
・アホの骨頂
・無駄の骨頂
2、意地を張ること。強く主張すること。
3、強く言いたてる人。中心人物。張本人。

「骨張る」(ほねばる)
1、皮膚の下で骨がいかにもごつごつ角ばっている。
2、意地をはる。がんばる。

骨のつく表現は当然ながら固いです。

「骨立」(こつりつ)
やせ衰えて、骨が高く現れること。骨ばること。
・農民は身体骨立し、満足な働きも出来なかった。
・日に日に痩せ疲れて骨立甚だし。
・焦がれた林木の見るも情けない骨立した姿

「骨立つ」(ほねだつ)
からだがやせて、骨がごつごつと目立ってくる。

「きこつ」には3つの熟語がありました。
「気骨」
自分の信念を守って、どんな障害にも屈服しない強い意気。

「肌骨」
肌と骨。全身。

「奇骨」
風変わりで個性の強い性格。普通にはないすぐれた性格。


Webで渥美次郎の「骨頂節」という歌を見つけました。
http://j-lyric.net/artist/a0013be/l0027a8.html
七つ負けてもにっこり起きて
あとの一つを勝ちにゆく




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2017年10月27日

お正月の縁起担ぎ

言葉を調べていると、
昔の日本人はよくよく縁起を気にしていたものだと思わされます。
その多くは今に生きているので、
現代人もけっこう気にしているのかも知れません。

お正月に関するものを見てみます。
お節の「節」(せち)とは、
季節の変わり目「節日」のことを指します。

「節日」(せちにち)
季節の変わり目にあたって祝事をする日。

「節句」(せっく)
節日に食物を供する意。

以下の五節句は現代までお祝い事の習慣が残っています。
・1/7 人日(じんじつ)-- 七草粥
・3/3 上巳(じょうし)-- 桃の節句
・5/5 端午(たんご)---- 端午の節句
・7/7 七夕(しちせき)-- たなばた
・9/9 重陽(ちょうよう)-- 菊の節句
陰陽道で、縁起の良い陽の数字とされる奇数が重なった日です。

本来、おせち料理はお正月だけのものではありませんでしたが、
江戸時代に一般大衆に広がると、
節日の中で最も重要なお正月の料理をさすようになりました。

元旦には「年神様」(としがみさま)をお迎えします。
年神様をおもてなしするために、
様々な正月行事や風習が生まれました。

おせち料理は年神様へのお供え物として作り、
大晦日にお供えし、
年が明けてから神様からのおさがりをいただきます。
昔は三が日は、炊事をしないというしきたりがありましたが、
これはすっかり崩れましたね。

〇お節を重箱に詰める
めでたさを重ねるという意味も込められています。
四段重ねが一般的で、
上から順に 一の重、二の重、三の重、
そして四の重ではなく“与の重”です。
各段の料理の数は、
5種・7種・9種の吉数で詰めると縁起が良いとされています。

〇お節料理
・海老
身を曲げたかたちが老人のように見えることから健康長寿の願い。
・黒豆
まめで健康に暮らせるように。黒は邪気を祓う。
・蓮根
穴がいくつもあり、そこから将来を見通せる。
・蒲鉾
赤いふちどりを日の出に見立て、白は清浄さを表している。
・数の子
子孫繁栄
・昆布巻
よろこぶ(語呂合わせ)
・栗きんとん
「金団」は“金の団子”もしくは“金の布団”という意味で、
金塊や金の小判などに例えられ商売繁盛・金運を願う。


〇羽子板市
邪気をはね返す。




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2017年10月26日

忌み言葉/忌み詞(いみことば)

特定の場面で使用を避ける言葉。
不吉な意味の語を連想させる言葉。

忌み言葉を拾ってみました。
・「梨」“無し”→「ありのみ」

・「摺り鉢」“する”→「あたりばち」
・「するめ」→「あたりめ」

・「終わる」→「お開きにする」
「鏡開き」は鏡餅を「切る」という語を言い換えたもの。
鏡は古くは円形で、形が似ていたことから「鏡餅」に。

・「猿」“去る” → “得て” “得手”「えてこう」「えてきち」
「得手」は “最も得意なこと” を意味し、
他の者に勝る(まさる)というダジャレもかけています。

・「塩」“シオ” が死を連想させる →「波の花」
元は女房言葉で、波の白くあわだつのを花にたとえたもの。

・「おから」“空” に通じるとして → 「卯の花」
「おから」は “絞りかす” の意で、
茶殻の「がら」などと同源の「から」に丁寧語の「御」をつけた女房言葉。

・植物の「葦」(あし)は “悪し” に通じるということで、
「葭」(よし)に変えられてしまいました。
葦=葭 なんです。


☆婚礼の忌み言葉
「去る」「切る」「帰る」「戻る」「別れる」など。
お祝いごとには終止符を打たないため、
招待状や席次表、席札の文章には、
「、」「。」といった句読点を使いません。

☆お悔やみの忌み言葉
「重ねる」「重ね重ね」「返す返す」「再び」など。


「厄年」(やくどし)
災難や不幸に遭遇することが多いとされる年齢のこと。

<男> 25歳・42歳・61歳
<女> 19歳・33歳・37歳
特に、男の42歳と女の33歳は大厄(たいやく)。
42が「死に」、33が「さんざん」に通じるため。

陰陽道の考えにもとづいていて、平安時代に広まりました。
大厄は頃はちょうど責任も増え、心身ともに疲労がたまる年齢でもあります。
現代でも厄年を気にする人は少なくないようで、厄除け(やくよけ)をする風習は続いていますね。

日本の厄年のような考えは世界にもあり、厄除けに似た風習がみられます。



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2017年10月25日

とんぼがえり

「大阪に出張だが、夜にはトンボがえりだ」
などと使われている「とんぼがえり」。
トンボが飛びながら、急に後方へ身をひるがえす様子から、
行った場所からすぐに引き返してくることをいいます。
もとの場所に戻ってくるようなイメージがあるので、
「とんぼ帰り」と書かれることが多いようですが、
正確には「とんぼ返り」です。
帰ってくるという意味は含まれず、
すばやく方向を変える、向きが逆になるという意。

歌舞伎の宙返りは「とんぼ返り」「とんぼを切る」といいますね。
とんぼの漢字が読めませんでした。

「蜻蛉」
「セイレイ」はトンボの別名。
古くは「秋津」(あきつ/あきづ)と呼ばれていました。

「かげろう」の漢字は「蜻蛉/蜉蝣」
飛ぶ姿が陽炎(かげろう)の立ちのぼるさまに似ているところから。

トンボはよく人の頭上あたりで止まっていたりします。
蜂や蝶などは、花の蜜を求めて飛んでいるのがよくわかりますが、
トンボの飛行はよくわからない動きです。
私には 何か諜報活動でもしているような、わけありな行動に見えてしまいます。

この後、編集後記で「アリ」を取りあげましたので、
「蟻」について付け加えておきます。

アリの語源はいくつもありますが、
・ありく(歩く)
・くびれがあり(有り)
の2つが有力のようです。
「蟻」は規律正しい共同生活を営むことから
→ 行儀ただしい →「義」が旁(つくり)になっています。

○蟻のつくことわざ・慣用句
・蟻の甘きにつくが如し
・蟻の穴から堤も崩れる
・蟻の一穴 天下の破れ
・蟻の這い出る隙もない
・蟻も軍勢




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2017年10月24日

秋波(しゅうは)

1、美人の涼しい目もと。
また、女性のこびを含んだ目つき。流し目。色目。
2、秋のころの澄んだ波。

この記事は、2010年の7月に書いたものです。
当時の様子がうっすらと浮かびます。

「秋波を送る」という表現は、
女性が色目を使うという意味で理解していましたが、
昨今はほとんど耳にすることはありません。
一方、
「民主、第三極へ秋波」
2010年 6/28の日経で目にした見出しです。
こういう「秋波」は時々目にします。

Webで検索すると他にも、
・共産党に秋波を送る農協
・民主党が一転してみんなの党へ秋波?
・参院選支援求め秋波
・アナリストたちが秋波を送る発売直前のiPad
・大手中国ブランドに秋波
・ヤフーがオーバーチュアに秋波を送る

女性とは関係なく使われていますね。
そこで、再度「秋波」の意味を確認してみました。

図書館で分厚い「言泉」を引いてみると、
1、秋の頃の澄み切った水の波
2、美人のきれいな目元
3、色っぽい目つき。色目。
追記として、
相手への関心をそれとなく知らせる行為・態度にもいう。
とありました。

そう、現在では “色目” としての「秋波」はすたれ、
組織同士や政治での駆け引きにおいて使われています。

私は「秋波」がなぜ女性の色目なのかと疑問に思っていましたが、今回謎が解けました。
元々は “秋の澄んだ水波” だったものが、
美しい女性の涼しい目元になぞらえられ、
そこから女性が男性にする色っぽい目つきになったんですね。
そして現在の用法へ。
美しい字と響きをもつ「秋波」が、語源とかけ離れた政治記事に多く見られるというのもおもしろい変遷です。

最後に「秋」のつくことわざを。
・一日三秋
・一日千秋
・一刻千秋
いずれも1日が非常に長く感じられること。
待ちこがれる気持ち。

・千秋晩成
長い時間をかけてついに完成すること。

・春秋に富む
年が若く、将来が長いこと。

・物言えば唇寒し秋の風
よけいなことを言うと、災いを招くということ。


衆議院選挙2017 が無事終わりました。
台風の影響で、期日前選挙をする人が過去最高の2137万人余だったそうです。
私もその1人。

2017年の「秋波」を拾ってみました。
・小池に最初に秋波を送った蓮舫の裏切り
・5G−通信業界が自動車業界に秋波を送る
・日本へ秋波を送るインドネシアに焦った中国





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2017年10月23日

噴飯もの(ふんぱんもの)

ばかばかしくて思わずふき出して笑ってしまうような事柄。
おかしくて食べかけの飯をこらえきれずに噴き出してしまう様から。
この語も勘違いが進んでいます。
平成24年度の調査では以下のような結果になっています。
× 腹立たしくて仕方ないこと ---- 49%
○ おかしくたまらないこと ------ 19.7%

軽蔑や怒りの対象になっている使用例が多く見られます。
おかしくて噴き出すという語の成り立ちを知らないと、
噴飯はたんに “飯を噴く” という熟語です。
噴射や噴火から受ける激しい勢いのイメージが、
怒りのイメージに結びついたかもしれませんし、
同じ音である憤慨や憤怒の「憤」の影響もあるかもしれません。
いずれにしろ、
「噴飯」はだいぶ “笑い” のなごやかさから遠のいてしまいました。

「失笑する」「にやける」も意味の取り違えが起きている語です。

「失笑する」
○ こらえきれずに吹き出して笑う
× 笑いも出ないくらいあきれる

私も「失笑」には吹き出す笑いではなく、
ひっそりとした軽蔑の笑いをイメージしていました。
「失笑」は “笑いを失う” と読めてしまいますし、
「失笑を買う」という形でよく用いられますが、
失笑を買うは “愚かな言行をして笑われる” という意味です。
また、「失笑が広がる」「失笑が漏れる」などは
あきれる様子と結びついて使わることが多いため、
愚かな行いに対する冷笑の意味で用いられことが多くなったものと思われます。
ちなみに、
「爆笑」は大勢の人がドッと笑うこと。
一人の大笑いには用いません。

「にやける」
○ なよなよとしている
× 薄笑いを浮かべている

私はTwitterも何か起きた時くらいしか覗きませんし、
掲示板もSNSも距離を置いているので知らなかったのですが、
「軽率」や「あざとい」がちょっと違ったニュアンスで使われているようです。

「軽率」
“軽はずみな” 意ではなく、“軽く” “気軽に” といった感じの使われ方。
“ちょっと自虐的なネガティブ感” らしいです。

「あざとい」
1、やり方があくどい。ずうずうしく抜け目がない。
2、小利口である。思慮が浅い。あさはかだ。

ほめニュアンスを含んだ表現が見られるそうです。
「あざとい」が嫌悪でなく評価されるなんて、興味深い傾向ですね。





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2017年10月22日

やるせない

1、思いを晴らすすべがない。せつない。
2、施すすべがない。どうしようもない。
3、気持ちに余裕がない。

「やるせない」は“苦しい” “ 辛い” “切ない” といった気持ち。
漢字にすると「遣る瀬無い」
語源がうっすら覗いてます。

川で舟に乗っていて、舟を岸に着けたい。
でも、着ける瀬が見つからない。
心もとなく、いつまでも川に漂っている。
そんな状況を言い表した語です。

「やるせない」を「やるせぬ」とする誤用が見られます。
× やるせぬ思い
「やるせない」は形容詞で、
名詞「やるせ」+ 否定の意味の形容詞「無い」
誤用は「無い」を打消しの助動詞と勘違いして、
同じ打消しの助動詞「ぬ」で言い換えたもの。

「切ない」の「ない」は接尾語です。
「切」は“心が切れるほどの思い”の意。
「切なし」(せつなし)は、
元は “大切に思う” といったポジティブな意味も含む
“切実な気持ち” を表す語でしたが、
時代と共にネガティブな意味のみで使われるようになりました。

「大切」(たいせつ)
大いに迫る(切る)= 「切迫」から。
大切を音読みさせた和製漢語。
“緊急を要するさま” の意。
それが “肝要なさま” の意味でも用いられました。
中世には “かけがえのないもの”の意から、
“心から愛する” の意味でも使われました。

「やる気」の漢字は「遣る気」でした。

「遣る方無い」(やるかたない)
1、心のわだかまりを晴らす方法がない。
2、きわめて程度がはなはだしい。

「憤懣(ふんまん)やるかたない」はよく聞きますね。

「やりきれない」(遣り切れない)
1、やり遂げることができない。
2、がまんできない。耐えられない。

北海道夕張郡由仁町に「ヤリキレナイ川」があるんですね。
TVで何度も取り上げられていましたが、知りませんでした。
アイヌ語の “魚の住まない川” を意味する「ヤンケ・ナイ」、
または “片割れの川” を意味する「イヤル・キナイ」
からと言われています。
夕張になんとも皮肉な名前の川があったものです。




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2017年10月21日

赤貧(せきひん)

きわめて貧しいここと。

・赤貧にあえぐ
・赤貧の身に落ちぶれる
・赤貧のうちに死んでいった
・赤貧洗うがごとしの貧乏生活

赤貧とは何もない貧しさ。
「赤貧洗うが如し」は、
ひどく貧しくて洗い流したように何もない様。

昭和を境に赤貧という語は消えつつあるように思います。
昔と今では貧しさの度合いが違っていました。
日本の未来に赤貧という語が復活しませんように。

「赤」は “明るい” と同一語源で、“暗い” の「黒」に対する語。
<名詞>
明白であること。疑う余地のないこと。
<接頭語>
名詞に付いて強調。“明らかな” “全くの”

・赤の他人
・赤恥・赤っ恥
・赤面(せきめん)
・赤裸(あかはだか)
・赤裸々(せきらら)
・真っ赤な嘘
・赤心 (せきしん)---- いつわりのない心

「赤手空挙」(せきしゅくうけん)
手には何の武器も持たないで立ち向かうこと。
また、助けを借りずに独力で物事を行うこと。

「赤手」は手に何も持たないこと。
「空拳」は拳(こぶし)だけで武器を持たないこと。
徒手空拳。

古代の日本で色を表す形容詞は4つでした。
「赤し」「黒し」「白し」「青し」
赤を表す漢字には、
「紅」---- 鮮紅色のような鮮やかな赤
「朱」---- 橙色に近い赤
「丹」---- 赤土の色
「緋」---- 濃い赤

「丹精/丹誠」(たんせい)
辞書によっては漢字を区別しないものもあり、
それぞれに意味を分けて載せているところもありました。
「丹精」---- 心をこめて何かをすること
「丹誠」---- まごころ。誠意。丹心。赤心。

・丹精を尽くす
・丹精を込める
・丹精をこらす
・丹誠込めて作られた手料理
・丹誠して育てた盆栽

「たんせい」ってこんな漢字だったんですね。
思えば久しく丹精という語を使っていませんでした。

紅白饅頭・紅白幕など縁起物に使われる「紅白」ですが、
なぜ「赤白」(せきはく)ではないのでしょう?
「セキ」という意味が中国では「赤裸々」「赤貧」などのように
“裸” “むき出し” などの悪い意味を持つため。
現代でも中国では「赤」と言う文字は使用せず、
「紅」の文字が使われています。




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2017年10月20日

「ぞっとする」と「ぞっとしない」

「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定と思っていました。
間違いです。

「ぞっとしない」
面白くない。あまり感心しない。
× 恐ろしくない

「ぞっとする」 は、
恐ろしいものを見たり体験した時などの恐怖の感情で、
「ぞっと」は恐ろしさで身の毛がよだつさま。
一方、「ぞっとしない」の「ぞっと」は、
恐怖の感情ではなく、強い感動が身体を走り抜けるさま。
整理すると、
「ぞっと」には2つの意味がある。
1、寒さや恐ろしさのために、全身の毛が逆立つように感じるさま。
2、強い感動が身体の中を通り抜けるさま。

ということで、
「ぞっとしない」は
特に驚いたり感動していないことを表し、
そこから “感心したりするほどではない” という意に。

「ぞっとしない」使用例
・それはいささかぞっとしない案で、できればやりたくなかった。
・このまま一時間、太陽の下でぼうっとしているのはぞっとしない。
・ぞっとしないことだが、選択の余地はないのである。
・この二つの役廻りはどちらに廻ってもぞっとしない。
・部屋にママの写真を飾る男って、ぞっとしないわ。

意味を知っても、
私はどうしても怖いほうの「ゾっとする」がかぶってしまいます。

感嘆した時に「すごい!」といいますが、
「すごい」は、
度を超していることを表す「過ぐ」から来ています。
古くは、
“寒く冷たい” “骨身にしみる” といった意味でも用いられました。
「ぞっと」と似た体感ですね。
漢字は「凄い」で、ひらがなとまた違った印象を受けます。

「凄」セイ
1、肌寒い。
2、すさまじい。すごい。

「凄」だと、悲惨なほうにすごいというイメージがあり、
「酷い」に近いものを感じます。

「酷」コク
1、容赦がなく、きびしい。むごい。
2、程度がひどい。

「酷く」(ひどく)は、
物事の善し悪しにかかわらず、程度のはなはだしいさま。とても。非常に。

・兄はひどく喜んだ。
・ひどく疲れ切ってアパートに戻った。
・二人ともひどく空腹だった。
・ひどく気にいったらしい。

「ひどい」は「非道」が形容詞化された「非道い」から。
“非常識だ” → “残酷だ” “むごい”
など悪い意味になり、形容詞「ひどい」に。
でも副詞の「ひどく」は良いほうにも悪いほうにも用います。

「やばい」も “あぶない” という意味でしたが、
今や “すごい” の意で、若い子たちの会話ではじけています。



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2017年10月19日

蕩めく(とろめく)

1、眠けを催してとろとろする。うとうとする。
2、うっとりする。

「とろめく」の漢字が「蕩」だったのが意外でした。
「蕩」ですぐ思いつくのは「放蕩息子」。

「蕩」トウ・とろ-ける・とろ-かす
1、揺れ動く。ゆらゆら動かす。
2、酒色などにおぼれる。しまりがない。
3、豊かに広がっている。
4、洗い流す。

「たゆたう」は 漢字にすると「揺蕩う」です。
1、ゆらゆらと揺れ動いて定まらない。
2、気持ちが定まらずためらう。心を決めかねる。

「揺蕩」(ようとう)の意味のところに「動揺」があって、
えっ?という思いでした。
改めて「動揺」の意味を見ると、
他からの作用で、動き揺れること。
転じて、気持などが不安定になること。不安。
とありました。
現在は “心の揺れ” で使っていますが、元の意味は “動き揺れること” で、
「揺蕩」と根は同じでした。

「たゆたう」という音から春の日向のような、
のどかさを感じていましたが、
いくぶんネガティブ感漂う語なのだと気づきました。

「とろ」と読む漢字を探すと、
「瀞む」(とろむ)という語がありました。
水面が波立たないで油を流したように静まる。
私は初めて目にしましたが、漁師さんが使っていそうです。

“とろりとした状態” の「とろみ」はひらがな表記です。
話しは料理にそれますが、
あんかけ料理のとろみはデンプンの熱結合を利用しています。
デンプンに水を加えて加熱すると糊状になります。
でも時間が経つと具材から水分が出て、とろみが消え水っぽくなってしまいます。
とろみをキープするには、水溶き片栗粉を入れてからもグツグツとしっかり沸騰させ、よく掻き混ぜないといけません。
コーンスターチを使うという手もあります。
コーンスターチはトウモロコシのデンプンですが、片栗粉に比べて温度が下がっても粘りに変化がありません。



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2017年10月18日

「ねぎらう」と「いたわる」

「ねぎらう」と「いたわる」はどちらの漢字も「労」なんです。
恥ずかしながら読めませんでした。

「労う」(ねぎらう)
苦労や骨折りに感謝し、いたわる。
現代では、同等または下の人に対して用いる。

「労」は労働・労務・労災など、“働く” のイメージが強くて、
「ねぎらう」「いたわる」に結びつきませんでした。

「労わる」(いたわる)
同情の気持ちを持って親切に接したり、気を配って大切に世話をすること。

「労わる」の語源は、奈良時代の「労ぐ」(ねぐ)から。

「労ぐ」(ねぐ)
1、神の心を慰め、加護を願う。
2、慰労する。ねぎらう。

古語辞典を見ると、

「労ぐ」(ねぐ)
ねぎらう。いたわる。

「祈ぐ」(ねぐ)
祈る。祈願する。

本来、「ねぐ」は神を慰め恵みを祈るという意味でした。
そこから「禰宜」(ねぎ)「ねぎらう」「ねがう」などの語が生じています。

※「禰宜」は神職のこと。

「労」は「勞」の略体で、
「勞」は、力を出しつくして燃え尽きた様を表します。
改めて「労」を見ると、
単に “働く” ではなく、“精を尽くして” 働く。
“精が尽きて” 疲れるという意味でした。
労働は、力を出し尽くして働く。
功労は、力を出し尽くし成果をあげる。

▽労(ろう)を使った表現

「ろうをねぎらう」は漢字にすると
「労を労う」で妙な感じです。

「労を取る」
骨をおること。
・仲介の労を取ってくれた
・調整の労を取る

「労多くして功少なし」
苦労した割には効果が少ないこと。

「労を多とする」
相手の苦労を評価し、ねぎらい感謝すること。

「多とする」(たとする)
ほめる。ありがたく感謝する
ねぎらいや感謝の気持ちで使います。

・関係諸氏の労苦を多とするものである
・チームの努力を多としたい
・委員会の協力を多としたい




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2017年10月17日

勘違いの多い語

「気が置けない人」(きがおけないひと)
気遣いする必要がない人。遠慮がない人。
× うちとけられない人
気が置けない(気遣いをしない)/ 気が置ける(気遣いをする)


「御の字」(おんのじ)
非常に結構なこと。きわめて満足なこと。
× ひとまず納得する


「奇特な人 」(きとくなひと)
特別にすぐれていること。行いが熱心なこと。殊勝。
× 風変りな人


「うがった見方」
物事の本質を捉えようとする鋭い視点で見る。
「穿つ」は “穴をあける” 意。
× 疑ってかかるような見方


「琴線に触れる」(きんせんにふれる)
「琴線」は物事に共鳴する胸奥の心情。
× 怒りに触れる
「逆鱗に触れる」からの連想か。


「憮然」(ぶぜん)
失望してぼんやりするさま。
失望や落胆、驚きのためにぼんやりしたり呆然とする様子。
× 腹を立てた様子
最近の辞書は、変わってしまった意味も載せています。
思い通りにならなくて不満なさま。不機嫌なさま。不興なさま。


「他山の石」(たざんのいし)
中国「詩経」にある故事。
よその山から出た粗悪な石も自分の宝石を磨くのに利用できる。
→ 他人のつまらぬ言行からも自分の人格を育てる助けとなる。
「人の振り見て我が振り直せ」に近い意味。


「対岸の火事」(たいがんのかじ)
自分には関係のないこととして、傍観すること。
× そうならないように参考にしたり、教訓とすること。
「他山の石」と「対岸の火事」で混乱したものか。


「姑息」(こそく)
しばらくの間 息をつくこと。
転じて、一時の間に合わせに物事をすること。
一時しのぎ。その場のがれ。
× 卑怯
「姑息」の類義語は「弥縫策」(びほうさく)


「話が煮詰まる」
議論や考えがなどが出尽くして結論を出す段階になること。
×行き詰る


「敷居が高い」(しきいがたかい)
不義理・不面目なことがあって、その人の家に行きにくいこと。
× ハードルが高い


「さわり」
話しの最も重要な点や感動的で印象深いところ、曲の聞かせどころなど。
浄瑠璃用語。
× 話の導入部分


「破天荒」(はてんこう)
誰もできなかったことを初めて成し遂げること。
×八方破れで乱暴者のイメージ


「天荒」とは、何も無く混沌とした世界の始めの状態をいいます。
昔、中国の科挙試験で、
まだ誰も合格者の出なかった土地から初めて合格者が出たとき、
「天荒を破る」と言われたことから。





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