2009年11月15日

趨勢(すうせい)

ある方向へと動く勢い。社会などの、全体の流れ。
類義語は「動向」「傾向」

「時代の趨勢」などとよく聞く言葉ですが、
「趨」の意味を調べたことはありませんでした。

「趨」
スウ・シュ
1、はしる(走)
2、おもむく(赴)
3、なりゆき

「趨向」(すうこう)
物事がある方向へ向かっていること。なりゆき。

旁の「芻」のつく漢字は4つありました。
趨・皺・雛・■(表示不可)
「皺」は“しわ”
「雛」は“ひな・ひよこ”
■は中国の国名。

「芻」による共通項を何も見出せませんでした。
それでは、「芻」自体の意味は何かと思いました。
「芻」
ス・スウ・シュウ・まぐさ
思わぬ“まぐさ”が出てきました。

手を広げて草(艸)を集め取る様子から草刈り。
転じて、まぐさ。
「まぐさ」とは“牛や馬の飼料にする草。かいば”
「秣/馬草」(まぐさ)=飼い葉(かいば)=芻=芻草(すうそう)

「芻」の付く熟語に、「反芻」がありますが、今頃なるほどと納得しました。
「反芻」(はんすう)
1、一度飲み下した食物を口の中に戻し、噛み直して再びのみこむこと。
2、ことばや思考などを繰り返し考え、よく噛み締めて味わうこと。

さて「趨勢」に戻りますと、
古川元久内閣府副大臣の最近の発言に、
「長期金利が趨勢的に上がらないよう注意しなければならない」というのがありました。
私には「趨勢的」という表現が目新しかったのですが、
・趨勢的傾向
・趨勢的側面
・趨勢的な動き
・趨勢的増加
けっこう使われている表現なんですね。

また「趨勢法」という言葉もありました。
「趨勢法」(指数法)
ある年度の財務データを100として、その後の年度の同項目の財務データを百分比で示すこと。
複数年度の数値の推移を見て、経営成績や財政状態の変化をつかむ財務分析法の一つ。







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2009年11月08日

「任せる」と「委ねる」

「任せる」と「委ねる」の違いはなんだろうと思いました。
辞書を見ると、

「任せる/委せる」(まかせる)
1、仕事などを他にゆだね、その自由にさせる。
・子どもの自主性に任せる
2、相手の好きなようにさせる。
・運を天に任せる
3、そのままにしておく。ほうっておく。
・成り行きに任せる
4、自然の勢いのままにする。
・足に任せて歩く
5、従う。

「委ねる」(ゆだねる)
1、処置などを人にまかせる。また、すべてをまかせる。
・全権を委ねる
2、すべてをささげる。
・政治に身を委ねる

それぞれが持つ意味の広がりに違いはありますが、
「まかせる」はそもそも「任」「委」どちらの字も当てられていますし、1の意味においてはどちらも“ゆだねる”“まかせる”と言葉が重なっています。
違いを発見したかったのですが、ほぼ同じ意味のようです。
個人的には、比べると「任せる」の方にやや重圧を感じます。

この二つの漢字が合体したのが、
「委任」(いにん)
ある物事の処理を他の人にまかせること。
似た意味に、
「委託」(いたく)があります。
自分の代わりを人に頼みゆだねること。

この意味の説明から「委任」と「委託」の違いは認められませんが、法律用語としての使い方には区別があります。
他人にものを頼むことが「委託」で、
法律行為を頼めば「委任」になります。
そして、委託契約には「委任契約」と「請負契約」があります。
「委任契約」は、行為(作業や事務)に対して報酬を支払い、
「請負契約」は、行為の成果に対して報酬を支払います。
「委任」の場合は、業務の遂行責任を負うというもので、必ずしも結果が目的ではありません。
「請負」の場合は、いくら労務を提供しても仕事が完成しなければ報酬は得られません。




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2009年11月07日

早急(さっきゅう/そうきゅう)

非常に急ぐこと。至急。

先週、政治家の発言で「さっきゅうに」という言葉が耳に入ってきました。
そういえば「さっきゅう」という言い方があったことを思い出しました。
「早急」
でも、普段「そうきゅう」と使っているような・・・。
・早急な対応を望む
いったいどちらの言い方が正しいのだろうという疑問が湧いてきました。
これもまた移行期にある言葉なのか。

Webで調べてみると、
「早急」の読み方に関しては、いろいろな説があることがわかりました。
1>
もともと「さうきふ」からきた言葉で「そうきゅう」が正しく、
「早速」などの影響から「さっきゅう」が後で生まれたという説。
2>
もともとは「さっきゅう」で、「早朝」などの影響から「そうきゅう」が後で生まれたという説。
どちらの説も決定的ではないようです。
放送局によっても読み方は異なっていて、
民放各社が<1>の見解をとって「そうきゅう」を使い、
NHKが<2>の見解をとって「さっきゅう」としているそうです。

「早」の読みは、
ソウ・サッ・はや-い
難しい読みには、
早乙女(さおとめ)、早苗(さなえ)、早生(わせ)、早稲(わせ)

「早」には“夜明け”“朝”という意味があります。
対義語は「晩」
ちょっとおもいつきませんでした。
早---晩
速---遅

「早晩」(そうばん)
名詞)早いことと遅いこと。また、朝と夕。
副詞)おそかれはやかれ。いずれ。




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2009年11月01日

あり得る(ありうる)

起こる可能性がある。当然考えられる。

・あり○るよね
・あり○る気がする
・あり○るんじゃない
私はよく「う」と「え」の間で舌が迷うことがあり、
常々「ありうる」って言い回しずらいなーと思っていたんです。
今回調べてみると、苦手な文法の話しが全面に出てきて理解に苦しみましたが、そのあたりの事情がわかりました。

元々、古語に「あり得」(ありう)という語がありました。
意味は“生きていることができる”
それが「ありうる」に変化し、口語として定着したものです。
一方、単体で使う「得る」は、
元々古語の「得」(う)という言葉で、
それが「うる」と「える」の二つに変化しました。
今では「える」の方が一般的になっています。

「ありうる」は文語の「うる」の活用が残ったものです。

以下に活用を並べてみます。
■文語「うる」(下二段活用)
ありえ(ず)---ありえ(たり)---ありう---ありうる(こと)---ありうれ(ども---ありえよ
■口語「える」(下一段活用)
ありえ(ない)---ありえ(ます)---ありえる---ありえる(こと)---ありえれ(ば)---ありえよ

●現状の「ある得る」の活用
ありえ(ない)---ありえ(ます)---ありうる---ありうる(こと)---ありえれ(ば)---ありえろ

否定形が「ありえない」なので、「ありえる」と誤読する人も多く、「ありえる」派の勢力は増しているようす。
語の自然な活用からも、そのうち「ありえる」に移っていくような気がします。
NHKでも単体で「得る」を使う時は「える」と言うようになっているそうです。
・職を得る(える)
・知識を得る(える)




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2009年10月31日

瀟洒(しょうしゃ)

すっきりとあか抜けしているさま。
俗っぽくなくしゃれているさま。

「瀟洒」というと、マンション・ホテル・邸宅・館など、建物のイメージが浮かびます。
例題に「瀟洒な身なり」とあるように他にも形容できるのでしょうが、あまり建物以外の表現を見聞きしたことがありません。
ちょっとおもしろい現象だなと思いました。

「瀟」ショウ
1、清くすがすがしい
2、風雨がはげしいさま

「洒」シャ・サイ
1、すすぐ。水をかけて洗う
2、さっぱりしている

見ても書けない難しい漢字の「瀟」は「瀟洒」以外にはほぼ使われていません。
「洒」のつく熟語には、「洒脱」「洒落」があります。

・洒脱(しゃだつ)
俗っぽくなく、さっぱりしていること。あかぬけしていること。

「瀟洒」に贅沢で華美なイメージを持っていましたが、「瀟洒」は「洒脱」とよく似た意味だったんですね。

「洒落」は、「しゃらく」と「しゃれ」の読みがあります。

・洒落(しゃらく)
心がさっぱりとしてわだかまりがないこと

・洒落(しゃれ)
1、気のきいたようす
2、身なりをかざること。おしゃれ。
3、言葉のしゃれ(人を笑わせる文句)

「洒落」(しゃれ)は当て字です。
語源は、晒れ/戯れ「され」が転じたものということです。
室町時代以降に「され」から「しゃれ」になり、
“心がさっぱりして物事にこだわらない”という意味の「洒落」(しゃらく)という漢語が意味上も音も似ているということで当て字に使われました。

駄洒落の「しゃれ」には「戯落」のほうが似つかわしいような。

女子がしょっちゅう口にする「おしゃれ」も漢字で書くと「お洒落」。
「おしゃれする」と言い方が普通になっているので、
洒落る「しゃれる」という言葉が変に聞こえてしまいます。




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2009年10月25日

敷衍(ふえん)布衍/敷延

1、延べ広げること。
2、(文章・談話などに)説明を加えて判りやすくすること。

この言葉も知りませんでした。
例文としては、
・憲法を敷衍して人権向上を図る
・環境負荷という観点で敷衍してみようと思う。
・誤差が±5%で全体に敷衍できる統計
・ノウハウの敷衍で防げた可能性のある事故

さて、「衍」はどんな意味をもっているのでしょうか。

「衍」エン
1、水が流れる
2、あふれる
3、ひろがる=延

「衍」の付く熟語でおもしろい発見だったのは、
「衍字」(えんじ)
“文章の中に誤って入った余計な文字”
これも馴染みのない語だと思うのですが、
対語が「脱字」と知ると、ホーっと思ってしまいました。
「衍入」「衍文」なる言葉もあります。
誤って挿入された文字・語句・文のことです。

これだけ copy&pastしまくりのワープロでの文書作成で、ミスも多いでしょうから「衍入」(えんにゅう)という言葉が飛び交ってもよさそうですが、聞きませんね。
「衍入」使ってみませんか。

レトリックの一つに「敷衍」というのがあるのを見つけました。
必要以上に詳しく並べて述べる技法です。
対象のことを詳しく述べることによって、その対象を強調する効果があります。




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2009年10月24日

賽の河原(さいのかわら)

三途の川(さんずのかわ)の河原。

親に先立って死んだ子どもが孝行をつくせなかった罪のつぐないに、この河原で父母供養のために小石を積んで塔を作ろうとするが、石を積むとすぐに鬼がきてこわしてしまう。
そこへ地蔵菩薩が現れて子どもを救うという俗信。
このことから「賽の河原」は、“報われない努力”“徒労”の意でも使用されます。
仏教の教えかと思っていましたが、民間信仰による俗信だということです。

「三途の川」(さんずのかわ)は、
此岸(しがん)と彼岸(ひがん)すなわち、現世とあの世を分ける境目にあるとされる川。
「三途川」(さんずかわ)というのは、実際に 群馬県・千葉県・宮城県・青森県にあります。

「賽」の付く語でまず思い受かべるのが「賽銭」。
「賽子」(さいころ)がありますが、漢字で書く人は少ないかもしれません。
パソコンでも変換できません。
料理の切り方で「賽の目切り」というのがあります。

そもそも「賽」とはどんな意味なのでしょうか。
「賽」サイ
1、まつる
2、参詣する
3、勝負をあらそう
4、さい。さいころ。

「賽」は神様と関係のある漢字のようですが、
それがなぜ「サイコロ」につながるのでしょう。

Web上に解説がありました。
賽子(さいころ)には、神との関わり合いがありました。
占いの道具だったのです。
偶然に支配されるために、あのような正確な立方体の形に。
天地四方をかたどったものです。
1が天、6が地、5が東、2が西、4が南、3が北を表わし、
対応する両面の数の和が7になります。
やがて勝負事につかわれるようになりましたが、
本来は神に関わり、神に問い、神に捧げ奉る祭祀のものでした。




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2009年10月18日

塗抹(とまつ)

1、塗りつけること
2、塗り消すこと

私は「塗抹」という言葉を知りませんでした。
パソコンの変換にもでてこないので、ほとんど使われていない言葉かと思いましたが、検索してみると「塗抹検査」でたくさん引っかかりました。

「塗抹検査」
微生物検査において検体をそのまま、あるいは遠沈してスライドグラスに塗抹し、グラム染色という方法で染色して、顕微鏡で観察して微生物の有無や種類を調べる検査。

それぞれの漢字を見てみると、

「塗」
ト・まみ-れる
1、ぬる。----塗装・塗布・塗抹・塗料
2、泥。泥にまみれる。---塗炭・泥塗
3、道 (途)

「抹」
マツ
1、する。なでる。一抹
2、ぬる。----塗抹
3、消す。----抹消・抹殺
4、こな。----抹茶

「塗」も「抹」も“ぬる”という意味なのでした。
「まみれる」に「塗」の漢字は浮かんできませんでした。

「塗れる」(まみれる)
汚いものが一面について汚れる。
・一敗地に塗れる(いっぱい ちにまみれる)

「塗炭」(とたん)
泥にまみれ火に焼かれること。
転じて、ひどい苦痛。きわめて辛い境遇。
・塗炭の苦しみ

「一抹」(いちまつ)
(絵筆のひとなすり・ひとはけの意から)
ほんのわずか。かすか。
・一抹の不安が残る

さんずいの「沫」は“あわ”“しぶき”の意で、
「飛沫」(ひまつ)があります。




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2009年10月17日

新参者(しんざんもの)

新たに仕えた者。新たに加入した者。

「新参」とは、
1、新しく仲間に加わること。新入り。
2、新たに仕えること。新たに奉公に来たこと。

「新参」だけでも「新入り」という意味があります。
対語は「古参」

新参・新顔・新人・新米
に対して、
古参・古顔・古手・古株

「ベテラン」は軍人を指す言葉でもありました。
veteran(ベテラン)
名詞)老練者/老兵、退役軍人、使い古したもの
形容詞)歴戦の/老練な

「老練」(ろうれん)
経験を多く積み、物事によく慣れていて巧みであること。

ところで、
「新米」ですが、
収穫したばかりの新米にたとえているのかと思っていましたら、違いました。
昔、商家に就職した奉公人は、前掛けをしていました。
新入りの前掛けは新しい。新しい前掛け。
ということで、新前「しんまえ」と呼ばれていました。
それが、だんだん前掛けをしなくなったため、
「前」の字が音転化し、「米」になったということです。
他にも、
「米」という字は「マイ」と読むと“小粒”という意味があり、駆け出し社員は小さくなっているので、新米という表現になったという説もあります。

お米の「新米」は、その年に収穫された米のことで、
前年に収穫されたのが「古米」。
同様に、前々年に収穫された米を「古古米/古々米」(ここまい)、
以下同様に、
「古古古米/古々々米」(こここまい)、
「古古古古米/古々々々米」(ここここまい)と、
「古」を収穫した年から現在までの年数分呼びます。

ずいぶん長たらしい呼び方です。
何年物まで保管されているのか知りませんが、
「古2米」「古3米」「古4米」としたらどうでしょう。

「新参者」といえば、東野圭吾の新作タイトルでもあります。
図書館に予約をして、ただ今196人待ちです。
待ち遠しい。



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2009年10月11日

多数が支持して定着した読み方

今回は、誤った読み方が定着した例を集めてみました。

「慣用読み」とは、
正式な読み方以外によく用いられる読み方。

「本来の読み」(慣用読み)
固執「こしゅう」(こしつ)
確執「かくしゅう」(かくしつ)
情緒「じょうしょ」(じょうちょ)
端緒「たんしょ」(たんちょ)
独壇場「どくせんじょう)(どんだんじょう)
断截「だんせつ」(だんさい)
直截「ちょくせつ」(ちょくさい)
撹拌「こうはん」(かくはん)
重複「ちょうふく」(じゅうふく)
執着「しゅうじゃく」(しゅうちゃく)
忌諱「きき」(きい)
消耗「しょうこう」(しょうもう)
減耗「げんこう」(げんもう)
口腔「こうこう」(こうくう)
膏肓「こうこう」(こうもう)
稟議「ひんぎ」(りんぎ)
漏洩「ろうせつ」(ろうえい)
捏造「でつぞう」(ねつぞう)

まだ勢力が半々くらいの過渡期のものから、ほぼ慣用読みが定着したものまで、いろいろあるものです。
言葉って、ほんとに揺れ動いているものなんですね。

*病膏肓に入る(やまいこうこうにいる)
病気がひどくなり、治る見込みがないこと。
物事に熱中して抜け出せなくなるたとえ。

「膏」は胸の下の方、
「肓」は胸部と腹部との間の薄い膜。
ともに治療し難いところとされる。
これは中国の昔話しからできた言葉です。
その故事の説明がいろいろだったので、
3例紹介します。
*1
晋(しん)の景公が、病魔が膏と肓の間に入り、名医も治療できないという夢をみたという故事から。

*2
中国春秋時代、晋の景公が病気になり、病気が二童子となって、肓の上と膏の下に隠れようと話している夢を見た。医者が診察すると、病根が肓の上と膏の下に入ってしまっているから治療できないと言ったという。

*3
景公は、大国の秦で名医の誉れ高い「高緩」に治療を依頼した。
で、「高緩」が晋国に到着する前に景公はまた夢を見る。
今度は病気が2人の子供になって話をしている夢であった。
一人の子供がいう。
「高緩は名医だからな、きっとひどい目にあわされるよね。
どこに逃げたらいいだろう?」
と、もう一人の子供がいう。
「膏(横隔膜の上の方)の上と肓(心臓の下の方)の下にいれば大丈夫! 
名医とてどうすることもできないさ」
まもなく「高緩」が来、景公を診察していうには、
「この病気はとても治療いたしかねます。
病気が膏の上、肓の下にありますから、治療してもだめで、針も届かず、クスリも行きわたりません。手の施しようがございません」
これを聞いた景公は
「たしかに名医だ」と賞し、たっぷりの礼物を与えて「高緩」を帰した。

1の説明は名医の登場も夢の中のことになっていますね。




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2009年10月10日

屈託(くったく)

1、ある一つのことばかりが気にかかって他のことが手につかないこと。
くよくよすること。
2、疲れて飽きること。
することもなく、退屈すること。

「屈託」は、何かおもしろい話しが隠されている故事成語の匂いがしたので、調べてみたんですが、予想は外れ、普通の熟語でした。
ただ、意味を勘違いしていたことがわかりました。
・彼は屈託のない笑顔を向けた
などという「屈託」を、
私は“無邪気な”とか“わだかまりがない”という意味で使っていました。
「屈託」って“くよくよすること”だったんですね。
それに、
“飽きること”“退屈する”という意味があったとは知りませんでした。
現在、2の意味での「屈託」を見たり聞いたりすることはほとんどありませんが、夏目漱石の作品に使用例があります。
* * *
『草枕』 
軒下から奥を覗くと煤けた障子が立て切つてある。
向ふ側は見えない。
五六足の草鞋が淋しさうに庇から吊されて、屈託気にふらりと揺れる。
* * *
「屈託」のそれぞれの漢字を見ると、
「屈」
1、かがむ-----屈伸
2、強いさま---屈強
3、勢いよく立ち上がる

「託」
1、たのむ-------委託
2、たよる-------託生
3、かこつける---託言
4、神仏のおつげ--託宣

・仕事にかこつけて飲みに行く
・視察にかこつけて旅行へ行く
「かこつける」は、知っていても
「託ける」とあったら、読めませんでした。
直接には関係しない他の事と無理に結びつけて、都合のよい口実にする。
他の物事のせいにする。

それにしても、
どうして「屈」と「託」から
“くよくよすること”“退屈”になるんでしょうね。





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2009年10月04日

乱入(らんにゅう)

大勢が乱暴に入り込むこと。

「爆笑」でも私は同じような勘違いをしていましたが、
どちらも“大勢”という要素があります。

「乱闘」は“敵味方入り乱れてたたかうこと”

「乱」は、
“みだれる”“混乱する”“礼儀をうしなう”
“みだりに”“むやみに”などの意味があります。
熟語も多く頻出の語ばかりです。
戦乱・動乱・内乱・反乱・
混乱・錯乱・狂乱・波乱・酒乱・散乱・乱雑・
乱打・乱調・乱読・乱造・乱伐・乱発・乱用・乱立

「乱獲」を検索していておもしろいページを見つけましたので、紹介します。
http://www.geocities.jp/zetumetu2005/zetumetu-genin.htm
動物たちがどんな理由で絶滅してしまったのかをかわいらしいイラストつきで説明してくれています。


辞書に、
「乱れ箱」(みだればこ)というのがありました。
着物や手回り品を入れるふたのない浅い箱。
「乱れ籠」は、
風呂場などに置いて脱いだ衣類などを入れる浅い籠。

私の回りで「乱れ箱」「乱れ籠」は聞いたことがありませんでしたが、検索してみると現代でも使われている呼び名のようです。
ヤフーショッピングでも木製の衣装箱が売られていましたし、香道の道具を入れる高級な漆の箱もありました。
ちょっと古風なこの名前が気に入りました。
普段の生活でも、ちょっとした小物などをとりあえずまとめて置いておく箱を「乱れ箱」と呼んだらいいのではと思いました。




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2009年10月03日

諫める(いさめる)

1、目上の人に不正や欠点を改めるよう忠告する。
諫言(かんげん)する。
2、禁止する。制止する。

※「諌」は俗字です。

もともと「諫言」は 自分の地位や命をかけるほどの重いものでした。
「諫死」(かんし)なる言葉もあります。
死を覚悟していさめること。
また、
「諫議大夫」(かんぎたいふ)というのは、
昔あった中国の官職で、天子の過ちを諫める役。
検索すると、
唐の2代目名君「太宗」と彼の諫議大夫達との政治上の議論を集大成した『貞観政要』(じょうがんせいよう)という本のことが出ていました。
治道の規範書として歴代皇帝の必読書だったようです。

同じ「かんげん」でも、利害関係者間でよく聞かれるのが「甘言」ですね。
対語は「苦言」。
「諫言」のような上下関係がないものが、「忠告」でしょうか。
逆に、主に目下の人に対して、軽く注意を促すのは、
「窘める」(たしなめる)です。

それでは「戒める」も見てみましょう。
「戒」は、ホコを手に持って警戒する意です。
「戒める」(いましめる)
1、まちがいをしないように前もって注意する。教えさとす。
2、してはいけないと命ずる。禁止する。
3、同じ過ちを犯さないようにしかる。
4、警戒する
5、(縛める)自由がきかないようにしばる。
6、忌み嫌う。

「戒律」は、
仏教において守らなければならない道徳規範や規則のこと。
解説によると、
戒律はひとつの言葉として使われますが、本来は「戒」と「律」は別のものです。
「戒」は自分を制する誓いで、
「律」は集団が円滑に活動するルールです。
「戒」は自発的なものですから、守れなくとも罰則はありませんが、
「律」には罰則があります。




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2009年09月27日

とんでもない

「おぼつかない」でも取り上げましたが、
「とんでもない」もひとかたまりの形容詞で、
「ない」の部分だけを「ございません」に変えることは文法的に誤っています。
×とんでも−ありません
×とんでも−ございません
○とんでもないことです
○とんでもないことでございます

補助的な形容詞「ない」と、
否定の助動詞「ない」が混同された例です。

他にも例えば、
「やるせない」は 形容詞で、「やるせぬ」とすることはできません。

「とんでもない」を巡る書き込みはWeb上にもたくさんあり、いろいろ読んでみますと、「とんでもございません」を認める記事がちらほら目に付きました。
さらに、H19年発表の文化審議会答申の「敬語の指針」には、「とんでもございません」を容認する記述がありました。

*
謙遜して、相手の褒め言葉や賞賛などを打ち消すときの
「とんでもございません」という言い方はかなり広まっている。
褒められた場面で「とんでもないことでございます」と言ったのでは、
「あなたの褒めたことはとんでもないことだ」という意味にも受け取られるおそれがあるので、注意する必要がある。
例えば、
「あの人のしていることはとんでもないことだ」
と表現したい場合には、
「あの方のなさっていることはとんでもございませんね」
などとは言えないが、
「とんでもないことでございますね」
などは普通に用いることができる。
「とんでもございません」と「とんでもないことでございます」は、表そうとする意味が若干異なるという点に留意する必要がある。
*

また辞書のなかには、
「とんでもない」の丁寧な言い方は、
“思いもかけない”“あってはならない”“とほうもない”の意味では、
「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」
相手の発言を否定する時には、
「とんでもありません」「とんでもございません」が多く使われる。
というように使い分けを説明しています。

当初、書き出しのような文法尊重派の内容にするつもりでしたが、文化審議会の容認は強力でした。
今後は、安心して「とんでもありません」を口にできます。




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2009年09月26日

他人事(ひとごと)

私は、この「他人事」をいつも「たにんごと」と読みそうになり、なんと紛らしい漢字かと不満を持っていました。

ちなみに、パソコンで「ひとごと」と入力すると、
他人事
人事
ひと事
人ごと
他人ごと
人毎
・・が出てきます。

辞書を見ると、
「人事/他人事」(ひとごと)
自分に関係ない事。他人に関する事。たにんごと。
とあります。

あれ、「人事」と「他人事」両方の表記があります。
「ひとごと」=「他人事」と覚えていた私は、ちょっと混乱してしまいました。
なにも紛らしい「他人事」でなく、「人事」を使えばいいのに。
何かあるのかとWebで探してみると、ありました。

まず、「ひと」には「他人」の意味があります。
もともと他人のことを意味する語には、
「ひとごと」という言い方しかありませんでした。
戦前の辞書は主に「人事」という漢字をあてていたようです。
ところが、「人事」は「じんじ」と区別がつかないため、「他人事」という書き方が支持されるようになりました。
これを誤って読んだものが「たにんごと」です。
私だけでなく、大勢の人が「他人事」を見て「たにんごと」と読んでしまうわけです。
そして近年では「たにんごと」が定着してしまって、辞書にもパソコン変換にも「たにんごと」という言葉が載るようになったというわけです。

NHKや新聞社での扱いを見てみると、
読みは「ひとごと」
表記は、
NHKが「ひと事」
新聞社が「ひとごと」「人ごと」
になっているそうです。

みなさんは「ひとごと」のこんな経緯、ご存知でした?







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2009年09月20日

言を俟たない(げんをまたない)

あらためて言うまでもない。

「まつ」の漢字には、「俟つ」と「待つ」が当てられていました。
「俟」は 常用漢字ではないため、あまり目にすることもありませんが、「俟」と「待」の違いが気になりました。

「待」は“相手が来るのを心まちにする”
「俟」は“事態が起こるのをじっとまっている”
“心まちする気持ち”のある・なしということでしょうか。
今まで意識したことはありませんでしたが、
「待」には、期待する気持ちやもてなす意が含まれていました。
歓待・招待・接待・優待・待望・待遇・待機・虐待
もてなす熟語ばかりの中にあって「虐待」だけが異色です。
「待機」は、
準備をととのえ、よい機会がくるのを待つこと。

「言をまたない」と似た言葉に、
「論をまたない」があります。
自明であって、論じるまでもない。当然である。

「言」(げん)で始まる表現には、
「言を左右にする」(げんをさゆうにする)
はっきりしたことを言わない。あいまいな返答をする。

「言を構える」(げんをかまえる)
つくりごとを言う。

“つくりごとをする”という表現に、
・口実を構える
・虚言を構える


今回は、角ばった表現ばかりで肩がこりました。




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2009年09月19日

金城湯池(きんじょうとうち)

1、守りが堅固で容易に落城せぬ城
2、ある勢力が強く、他の勢力の容易に入り込めぬ地域。

出展は、前漢のことを記した歴史書「漢書」(かんじょ)です。

お恥ずかしい話、私は「金城湯池」を見て、ゴールドの城と温泉を思い浮かべまして、「酒池肉林」的な贅沢三昧方向の意味を想像してしまいました。

「金城」は、金ぴかの城ではありません。
説明によっては「銅」だったり「鋼」とありましたが、要するに金属でできた城。
「湯池」は、熱湯をたたえた堀。

さて、ここで「堀」と「濠」の違いが気になりました。
「ほり」(堀/濠/壕)
1、地面を掘って水を通したもの。堀割。
2、地面を深く掘って敵の侵入を防ぐ防御施設としたもの。
(必要に応じて水をたたえたりする)

「ごう」(濠/壕)
土を掘って作ったみぞ。また、城の周囲に設けた堀。
水をたたえたものを「濠」、水のないものを「壕」として区別。

城の場合は「濠」ですが、ほぼ同じものを指すようです。

「金城湯池」の類義語には、
金城鉄壁(きんじょうてっぺき)、難攻不落(なんこうふらく)、
金剛不壊(こんごうふえ)、要害堅固(ようがいけんご)

あら、また自分の無知発見。
「不壊」は「ふかい」ではなく、「ふえ」と読むんですね。
破壊・倒壊・崩壊・壊滅など「カイ」と読むことが多い「壊」ですが、壊死(えし)・壊疽(えそ)など、「エ」という読み方もありました。

最後に「金城湯池」の使用例を、
・自民党の金城湯池を攻める
・共和党の金城湯池であり続ける保守的なアメリカ中西部
・グーグルはマイクロソフトの金城湯池であるパソコンOS市場に進出




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2009年09月13日

身上

「身上」には、二つの読みがあります。
「しんじょう」と「しんしょう」です。
辞書をよくよく見ると、
どちらの読みにも“身の上”“本来のねうち”という意味をもっていました。
ですが、実際に使われている例では、
「しんじょう」は“身の上”“本来のねうち”
「しんしょう」は“財産”“暮らし向き”“地位”
という使い分けになっているようです。

●「しんじょう」
・一身上の都合により退職
・誠実が私の身上だ
・身上調査を依頼する
・身上書を書く

●「しんしょう」
・一代で身上を築く
・放蕩息子が身上をつぶす
・身上の苦労

「身上」と同じ意味に「身代」(しんだい)があります。

福島県の民謡「会津磐梯山」(あいづばんだいさん)はご存知ですか?
ここに「しんしょう」が登場します。
*
会津磐梯山は 宝の山よ
笹に黄金(こがね)が エーまた
なりさがる

ことしゃ豊年 穂に穂が咲いて
道の小草(こぐさ)も エーまた
米がなる

小原庄助(おはらしょうすけさん)さん
なんで身上つぶした
朝寝 朝酒 朝湯が大好きで
それで身上つぶした
あ〜もっともだ、もっともだ
*
久々に思い出しました。
知っているのは、小原庄助さんのくだりだけですが。

唄はもっと続きます。↓
http://aiduwakamatu.client.jp/report/report/aidu-history/aidubandaisan/aidubandaisan.htm

ところで、
お見合い時に用意する「身上書」(しんじょうしょ)は、
「釣書」(つりがき/つりしょ)ともいいます。
私は字を見て、何の疑いもなく 相手を釣り上げるための文書と思っていましたが、語源は お互いの釣り合いを取るためということです。




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2009年09月12日

提灯(ちょうちん)

この週末 街は秋祭りで、商店街や神社には大量の提灯がディスプレイされ、和のムード一色です。

「提」は“手にさげてもつ”という意味で、
「提灯」は携行できる灯りを意味しています。

「提灯持ち」という言葉があります。
他人の手先に使われて、その人の長所を吹聴して回ったりすること。
頼まれもしないのに他人を誉めたり宣伝したりすること。
もとは、夜道や葬列などで、提灯を持って一行の先頭に立つ役のことでしたが、今は 媚びへつらう意味になってしまいました。

この表現をもじった、
「提灯記事」(ちょうちんきじ)
団体・企業・商品・個人を持ち上げるために書かれた雑誌・新聞などの記事。

株の世界では、
「ちょうちん買い」という言葉もありました。
仕手筋や大手証券会社の大口の買いに乗って、同じ銘柄の株を買うこと。

ちなみに、
提灯の数方は、
一個・一張(はり)・一帳(ちょう)・一本・一挺・丁(ちょう)

今さらながら「提」の“手にさげる”意味を知った私ですが、
「提」のところで気になったのは、
「菩提」(ぼだい)
知っているようで、知らなかった「菩提」について、

1、修行を積み、煩悩(ぼんのう)を断ちきって到達する悟り。
2、死後の冥福のこと。
菩提とは、
悟りを開いた仏の境地を表すことから、涅槃と同義と考えられました。

「菩提」の意味を理解したものの、
「菩提を弔う」という言い方にまた疑問がわきます。
‘悟りを弔う’? ‘冥福を弔う’?

「菩提を弔う」(ぼだいをとむらう)とは、
死者が涅槃に向うように供養すること。

ある説明によると、
一般的には、菩提=涅槃=仏の状態と捉えているところから、
「菩提」→ 「死者」で、
「菩提を弔う」→「死者を弔う」
というようなことではないかとありました。

「菩提寺」(ぼだいじ)とは、
先祖代々の墓をおき、葬式や法事を行う寺。檀那寺。




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2009年09月06日

ひねる

「ひねる」には、物・手足などを“ねじる”意味と、
“深く考える”という意味があります。
・蛇口をひねる
・手首をひねる
・アイデアをひねる
・俳句をひねる
・ひねった問題
漢字は「捻」「拈」「撚」の字が当てられています。

「捻」
ひねる。ねじる。つまむ。
捻挫・捻出

「拈」は「捻」とほぼ同じ

「撚」
ひねる。よりをかける。
撚糸


「ひねる」には「陳ねる」というのもあります。

「陳ねる」(ひねる)
1、年を経る。古くなる。
2、子供が、年齢より大人びている。
・ひねた大根
・ひねた子供

「陳ねる」は「ひね」の動詞化したものです。

「陳」(ひね)
1、古くなること。
2、古くなった穀物や野菜。
特に、一年以上前にとれた穀物。
3、老熟していること。ませていること。
4、おくての稲。晩稲。

「ひねる」「ひね」を変換しても「陳」という字は出ません。
漢和辞典でも「ひね」と読むことは記されていませんでした。
でも、確かに「陳」には“古い”という意味がありました。
「陳」 チン
1、つらねる 陳列・開陳
2、のべる 陳情・陳述
3、ふるい 陳腐・新陳代謝

「ひねくれる」となると、漢字は「捻」のみ、
「捻くれる」です。
1、まがる。ゆがむ。
2、性質が素直でなくねじけている。

そして、
“古くさくなる”という意味の
「陳くれる」(ひねくれる)なる言葉もありました。

「ひねる」も「ひねくれる」もほとんどひからがな表記ですから、漢字に直すと別の言葉のようです。




posted by 空凛 at 22:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする