2017年10月15日

語感を感じてみる

黒川伊保子著「語感対決77」という面白い本を見つけました。
誰しも言葉の音から何かしらのイメージを浮かべていると思いますが、それはぼんやりとあいまいなもの。
この本は、語感対決というおもしろい切り口で、言葉の持つイメージを表現してみせます。

発音体感は小脳を経由して潜在意識に作用。
語感は脳に様々なイメージをもたらしています。
言葉の音は絶対的な感覚もたらすものではなく、受け手の脳の状況によって違ってくる相対的なもの。
語感が受け手の脳の生理状態に合っているときに、よい言葉と感じます。
言葉の音を長く研究してきた黒川氏は
「爽やかS音」「癒しのM音」「華やかなR音」「相手を威嚇するI音」など、
音を分解して語感をスパっと分析してみせます。

例を1つ紹介します。

〇コシヒカリ vs ササニシキ <ツヤ対決>
− KoSHiHiKaRi −
しっかりしたK音ではじまり、
湿り気のSHi(シ)、
温かさを感じさせるHi(ヒ)、
語尾のRi(リ)が放つ輝きとかたさ。

− SaSaNiSHiKi −
湿度を持つSが3つもあり、十分な水分量を感じさせ、
語尾のKi(キ)が弾力を伝える。

どちらも優劣つけがたいが、
ササニシキにはないR音が米のツヤ感をだして、
コシヒカリの勝ち。


音のイメージをこんな風に表現した学者もいました。
あ --- 広厚
か --- 堅牢
さ --- 窄小
た --- 剛直
な --- 和順
は --- 混沌
や --- 進前
ら --- 形状
わ --- 操曲

「窄小」という語は中国語辞典に載っていました。
狭くて小さい。せせこましい。

「窄」は “せまい”“せばめる”意。
「狭窄」という語があります。

「操曲」という語は、どの辞書にもWebにも見つかりませんでしたが、
「操典」(そうてん)の説明に「騎兵操典」という語が出てきました。
旧日本陸軍が作成した、各兵種の教育および戦闘についての典拠書。


以前、怪獣の名前を集めてみたことがありました。
怪獣のネーミングは「ラ」と「ゴン」を展開していました。
語感はどうなっているでしょう。
「ラ」は “華やかなR音”そして “形状”
「ゴ」は喉を絞め出す音で、脳がストレスを感じる音。

☆「ラ」のつくネーミング
ゴジラ (ゴリラ+クジラ)
エビラ
モスラ (蛾=moth)
キングギドラ (モスラの幼虫)
ガメラ (亀)
原始鳥 リドラ
冷凍怪獣 ペギラ
四次元怪獣 トドラ
古代怪獣 ゴモラ
海獣 ゲスラ

☆「ゴン」のつくネーミング
ナメゴン
カネゴン
ステゴン
レオゴン
ゴダイゴン

☆「ドン」のつくネーミング
ガヴァドン
テレスドン
メガドン
スカイドン

ゴジラのヒットで、怪獣の名前に「ラ」をつけるようになったそうです。
どれも怖いというより、かわいさを感じます。



posted by 空凛 at 09:19| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月14日

相克と相生

「相剋/相克」(そうこく)
1、対立・矛盾する二つのものが互いに相手に勝とうと争うこと。
2、五行説で互いに相手に勝つ関係にあること。
対語: 「相生」

「剋」 コク・か-つ
重い兜を身に着けた人の象形。
原意:重さに耐える・打ち勝つ。刀で打ち勝つ。殺す。
1、耐え抜いて打ちかつ。=克
2、きびしい。むごい。
剋薄=刻薄=酷薄

「相生」(そうせい/そうじょう)
五行説で、木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生じるということ。

「相生」は「あいおい」と読むと、
1、一緒に生育すること。
2、1つの根元から2つの幹が分かれて伸びること。

「あいしょう」とも読みますし、ややここしいですね。


「そうせい」と読む熟語に「早世」「早逝」がありますが、
どちらも “若くして死ぬこと” = 夭折(ようせつ)
「早世」は古くからある語ですが、
「早逝」は後から自然発生的に生まれた語で、辞書によっては載っていません。
「逝去」「急逝」などの「逝」と「早く」が結びついて「早逝」となり、広まったようです。

「相」の読みは ソウ・ショウ
読み別に熟語を並べてみました。
「ソウ」
手相・家相・骨相・死相・人相・面相・
形相・血相・滅相・瑞相・真相・世相・
「ショウ」
首相・宰相・相国寺(京都にある禅寺)
「ショウ」と読むものは限られていて悩まずにすみます。

「五行説」
世の中のすべての事象は、
木・火・土・金・水という5つの要素で説明できる。
という考え方。
互いが相乗効果で良い相性を生む「相生」(そうじょう)
もうひとつはお互いに力を弱め合う「相剋」(そうこく)
陰陽説は古くから存在したのに対し、
五行説は陰陽説よりも後から出来たもので、
当初から陰陽説と一体となり「陰陽五行説」といわれます。
「陰陽五行説」は風水をはじめ中国のあらゆる占い、漢方医学や鍼灸医学などでも用いられています。

◆相生の関係
木をこすりあわせると火が生まれる
→ 火は燃えて土に還る
→ 土の中から金が生まれる
→ 金を冷やすと水が生まれる
→ 水は木を育てる

◆相克の関係
木は土を破って出、
土は水をせき止め、
水は火を消し、
火は金属を溶かし、
金属は木を切る、
それぞれ支配し合う関係。

↓ わかりやすい相関図
http://bikancha.com/wp/wp-content/uploads/2012/09/%E4%BA%94%E8%A1%8C%E5%9B%B3.png




posted by 空凛 at 09:35| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月13日

ちょっと懐かしい言葉

今回は最近拾ったちょっと懐かしい語を紹介します。

「得恋」(とくれん)
恋愛が成就すること。失恋に対していう語。

失恋の対語を想像したこともありませんでしたが、
こんな語があったんですね。
でも、ほとんど使われていないような・・・
・得恋話し
・お礼参りで、得恋感謝
・失恋より得恋が多かった

「片思い」の逆は「両思い」(りょうおもい)と言ってますが、
対語は「相惚れ」(あいぼれ)とありました。
片思いに似た語に「岡惚れ」があります。
時代劇でたまに出てきます。

「岡惚れ」(おかぼれ)
親しくしたことのない人や他人の恋人を、わきから恋すること。
自分のほうだけがひそかに恋していること。

なぜ「岡」の字なのでしょう。
「おか」は “傍ら(かたわら)” の意味。
小高いところの意の「岡」と同源。
人々の生活の中心であった平地。その傍らには岡。
平地と岡 = 中心と傍ら → “わき” の意味が生じたもの。
「岡目八目」や出前用の箱「岡持ち」の「岡」も同じです。

「秋の扇」も失恋に類する語です。
知らない語でしたが、なんとなくイメージできました。
帝の寵愛を失ったわが身を秋の扇にたとえて嘆いた妃の故事から。
愛を失って捨てられた女のたとえ。
とても優美なたとえですけど、ひっそりとした哀しみが痛々しい。

「近劣り」(ちかおとり)
近くで見ると遠くで見るよりも見劣りがすること。
対語は「近優り」(ちかまさり)

「お平らに」
「膝を崩して」お楽にして下さいという意味。
とても柔らかな言い方ですね。

「お膝送り」は、昔 法事などで聞いた覚えがあります。
座ったまま膝を動かし詰めることです。
後から来た人のために、
「お膝送りをお願いします」と声をかけて譲ってもらいます。
「膝行」(しっこう)という語もあります。
「いざる」とも言います。
椅子の生活が多くなって、あまり聞かれなくなりました。




posted by 空凛 at 08:16| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月12日

粘稠(ねんちゅう)

ねばりけがあって密度の濃いこと。
「稠」は “びっしり集まる” 意。
「稠」の読みは「チュウ」なのですが、
多くの人が「ちょう」と誤読して、多くの人がそれに気づかず、誤読が広まっている語です。
日常で耳にすることはまれですが、専門的な分野で使われていました。
・大量の砂糖を溶解させたものは粘稠な液体となる。
・濃硫酸も粘稠な液体であるが、発煙硫酸はそれ以上に粘稠である。
・化膿は、組織の損傷部が炎症を起こし、好中球を主とした白血球の浸潤と炎症組織の溶解により、粘稠な浸出液を形成すること。
組織内に貯留するものは膿と呼ばれ、上部気道炎症では痰として排出される。

痰・血液・唾液などの医学的形容で使われています。
唾液もストレスがあるとネバっぽくなるそうです。

「稠」の熟語に「稠密」(ちゅうみつ)があります。
一つのところに多く集まっていること。こみあっていること。
稠密も使ったことがないので、どんな風に使われているか見てみました。
・狭小な国土に稠密な人口。
・人口が稠密な大都市圏の出生率は低い。
・様々な生きものが稠密にひしめいていた。
・稠密な乗合バス路線が運行されている。

旁が「周」で「ちょう」と読む漢字には「調」と「凋」があります。

「凋落」(ちょうらく)
草木がなえてしぼむ。勢いが衰える。
こちらは「しゅう」と誤読されることが多いようです。

間違いも多くの人が使うようになると辞書に登録され、受け入れられていきます。
「耳ざわり」も変化の兆しがある語です。

「耳障り」(みみざわり)
聞いていて不快に感じること。
“差しつかえる” “じゃま” の「障る」ですが、
最近は「耳触り」も載せている辞書があります。
肌触り・舌触り・手触り・歯触りなどに加えて、
「耳触り」が “聞いたときの感じ・印象” の意で使われています。
・キーキーというひどく耳障りな音がした。
・耳触りのいいメロディ
・耳触りの良いことばかり口にする政治家は信用できない。

「目障り」「耳障り」「気障り」は眉根の寄るものですが、
「耳ざわり」は嫌悪/好感の両方に用いられるようになっています。





posted by 空凛 at 08:24| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月11日

刹那(せつな)

きわめて短い時間。瞬間。
仏教用語で時間の最小単位を意味します。
本来「短い時間を大切に過ごしなさい」と言う教えで、
「刹那主義」は、現在の瞬間を生きることに全力を尽くすという考え方。
それが今では一般に、
一時的な快楽を求めようとする考え方になっています。

一方「快楽主義」は、
「人生の目的は快楽であり、快楽こそが最高の善である」
というエピクロスという哲学者が説いた考え。
一見、自堕落なことのように思えますが、
ここでいう「快楽」とは、
肉体において苦しみのないことと、魂において乱されないということ。

仏語の「快楽」は「けらく」と読み、
煩悩から解放されて得られる安楽。
けっして酒池肉林的な快楽ではありません。

仏語には時を表す難しい語がいくつもありました。

「弾指」(だんし/だんじ)
指を1回弾いて出る音の長さ。
曲げた人指し指の爪を親指の腹にかけて強くはじくこと。
密教系や禅系で使われる所作で、
許諾・警告・不浄の除去などに使われます。
「指弾」「爪弾き」はこの所作から来ています。

「須臾」(しゅゆ)
短い時間。しばらくの間。
仏語では一昼夜の三十分の一の時間。
見慣れぬ語ですが、以前は小説などでも多く使われていたようです。
・槍は兵士を追い、かれらを須臾の間に血まみれの骸と変えていった。
・その巨大・強力な勢力には、須臾の弛みも許されない。
・須臾にして、五感が一つ一つ、嗅覚を先にして恢復して行った。
・20世紀なんてものは、人類生存の年限からいったら、ほんの須臾のあいだだ。

「玉響」(たまゆら)という珍しい語も時を表します。
漢字といい音といい神秘的な感じしませんか。
なんだかいわくありげに見えます。
玉が触れ合ってたてる微かな音のこと。
転じて “ほんのしばらくの間”
あるいは “かすか” を意味する古語。
・日々のたまゆらの慰めになった
・たまゆらのよろこびに浸っている
・たまゆらの充足をもとめて、永遠のむなしさに陥ってしまう。

○時を表す熟語
一瞬・ 瞬間・瞬刻・瞬時・瞬息・瞬目・咄嗟・片時・
寸時・寸隙・寸刻・寸陰・
永遠・永久・永劫・久遠・恒久・長久・悠久・無窮




posted by 空凛 at 08:13| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする