2010年04月18日

「分掌」(ぶんしょう)

仕事・事務を手分けして受け持つこと。分担。

私は「分掌」という字に馴染みがありませんでしたが、
・職務分掌規程*
・業務分掌規定**
・職務分掌表
・公務分掌
・事務分掌
企業や公的機関・学校などで使われていました。

ところで「規程」も「規定」も“きまり”という意味を持ちますが、
違いは、
*「規程」は、官公庁・会社の執務規則
**「規定」は、法令の条文として定めること

「掌」の読みは、
ショウ・たなごころ・てのひら・つかさど-る

「手の平/掌」(てのひら)には、他の言い方もあります。
・たなごころ(手の中心の意)
・たなうら(手の裏の意)
・たなうち
・たなぞこ(手底)
「手のひら」と言った時、指は含まれず、
手首から指の付け根までの、手を握ったときに内側になる面を指します。

外側は「手の甲」ですが、こちらはこの言い方のみのようです。

手を握ると「拳」(こぶし)になり、
握りこぶし・拳固(げんこ)・拳骨(げんこつ)とも言います。
語源を見てみると、
元々は「こぶし」のことを「拳子(けんこ)」と呼び、
そこから「固く握りしめたこぶし」の意味で「拳固」と表され、
次第に「げんこ」との発音に転じたとのこと。
それから拳固を使って殴ることを「拳固殴ち」(げんこうち)と指すようになり、それが訛って「げんこつ」に。「拳骨」は当て字。

「掌」に関した語を拾ってみました。

「落掌」(らくしょう)
手紙・品物などを受け取ること。手に入れること。「落手」

「掌上に運らす」(しょうじょうにめぐらす)
てのひらの上で自由に操る。意のままに行う。

「掌中の珠」(しょうちゅうのたま)
手の中の珠。また、大事なものや最愛の子のたとえ。

「掌を反す」(たなごころをかえす)
1、物事がきわめてたやすくできるたとえ。
2、急に態度が変わるたとえ。
「手の平を返す」 「手の裏を返す」

余談ですが、
手の親指を伸ばして反らした時、親指の付け根に出来る三角形の窪みを「解剖学的嗅ぎタバコ窩」というWikipediaの記述を見つけました。
「嗅ぎタバコ窩」なんていう、妙な名前が目を引きました。
Webで説明を探しましたら、
* *
親指を伸展した時にできる長拇指伸筋腱(後方)と長拇指外転筋腱と短拇指伸筋腱(前方)の間のくぼみのこと。
ここを橈骨動脈が通り、その底には大菱形骨と舟状骨がある。
「嗅ぎタバコ」とは、粉末にしたタバコの葉を鼻孔から直接吸入するもの。
* *
手の甲、親指側の手首近くと言ったほうがわかるでしょうか。
その手の窪みに粉を置き、それをつまんで鼻から吸い込んだことから付いた名前のようです。
ちゃんとして学術名なんですね。びっくり。




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2010年04月11日

粛清(しゅくせい)

厳しく取り締まって、不正な者を除くこと。
特に独裁政党などにおいて、反対派を追放すること。

「粛清」という語には、ゾワリとする恐怖と凄みを感じます。
「粛む」(つつしむ)と「清める」この2文字から生まれた熟語が、いつの間にか血なまぐさい歴史をまとって、虐待・拷問・処刑・迫害・残虐・凄惨と同じイメージに染まっています。

「粛」が持つ意味は、
シュク・つつし-む
1、つつしむ
2、うやまう
3、おごそか
4、ただす
5、そこなう
6、しずか

・場内は粛として声もなかった
・粛として襟を正す
・隊列は粛々と行進した

同じ「しゅくせい」でも
「粛正」は、
おもに制度や規則などを対象として、厳しく不正を除くこと。

「綱紀粛正」(こうきしゅくせい)という四文字熟語があります。
乱れた規律や風紀を正すこと。
「綱」は太いつな、
「紀」は細いつなの意で、
国家を治める大法と細則。また、一般に規律。

「粛啓」(しゅくけい)は、
手紙のはじめに用いる敬意を表す語で、「拝啓」と同じ「つつしんで申し上げる」ということです。

「粛殺」(しゅくさつ)は、物騒な意味かと思ったら、
秋の厳しい気候が草木を枯らすこと。

「粛清」よりも「粛殺」の方が相応しいのではと思ってしまいました。

さて、
「粛む」「謹む」「慎む」の違いは、
*「粛む」
身をひきしめてつつしむ。厳粛
*「謹む」
言動に注意してかしこまる。謹呈
*「慎む」
手落ちのないように気を配る。慎重

「謹製」(きんせい)は、
心をこめ、つつしんで作ること。また、その製品。
多く、食品の製造業者が用いる、とあります。
森永ミルクキャラメルの裏側には「森永謹製」と記されているとのこと。
そういえば、「謹製」という文字を目にしたかもしれません。
意味を知ろうともせず、見過ごしたままにしていました。
今度、「謹製」を探してみます。



posted by 空凛 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月04日

「人事不省」(じんじふせい)

事故や病気などで、意識がはっきりせず、知覚を失っているさま。

・人事不省に陥る
・人事不省の重体

「人事不省」→ → →「意識不明」
この意味転換に私は悩みました。

「人事」と聞けば、会社の人事異動をすぐ思い浮かべてしまい、
「人事を省みず」ならば、
権力者の横暴な人事のことかと思ってしまいそうです。

辞書には、
「人事」はここでは、人のなしうることの意。
「不省」はわきまえない、かえりみない意。
とありましたが、
“人のなしうることをかえりみない”がどうして“意識不明”になるのか腑に落ちません。

「人事」に何か隠されているのでしょうか。

<大辞林>
「人事」
1、(自然の事柄に対して)人間に関する事柄。
2、人としてなしうる事柄。人としてすべき事柄。
・人事を尽くして天命を待つ
3、(会社や組織内での)個人の地位・職務・能力などに関する事柄。
4、人としての知覚や感覚。意識。

<デジタル大辞泉>
「人事」
1、人間社会の出来事。人世の事件。自然の事柄に対していう。
2、人間の力でできる事柄。人間が行う事柄。
3、社会・機構・組織などの中で、個人の身分・地位・能力の決定などに関する事柄。
4、俳句の季語の分類の一。天文・地理などに対し、人間に関する題材。

1・2・3までは共通ですが、4が違いますね。
大辞林は“意識”という意味をとっていますが、大辞泉はのせていません。
一方、
「省」も"かえりみる"や"はぶく"という意味の他に、
"安否をたずねる"という意味がありました。
ますます「人事不省」のことがわからなくなりました。

さて気をとりなおして、
「省」のほうに目を向けますと、
「帰省」(きせい)は、
「故郷に帰って親の安否を気遣う」という唐の漢詩が語源だそうです。
辞書には、
郷里に帰ること。また、郷里に帰って父母を見舞うこと。帰郷。
とあります。
私は“親の安否を気遣うという”意味があることは知らずに単に帰郷という意味で使っていましたが、実際はまさに親の顔をみるための里帰りでした。

“帰郷”の意味に、今では耳にしない「薮入り」という言葉があります。
江戸時代、商家に住み込みの奉公人たちは、正月と盆の年に2回だけしか休みをもらえないというのが一般的でした。
その休みを「薮入り」といいました。
他にも「宿入り」「宿さがり」「六入り」などの言い方があります。
薮入りは初めは正月だけでしたが、江戸中期からは7月にも薮入りをさせるようになり盆のものは「後の薮入り」と言いました。

薮入りの語源は、諸説あるようです。
*奉公人が親元に宿入りするから(宿は生家のこと)
*草深い田舎に帰るから
*父を養うために帰るから「養父(やぶ)入り」
*祭祀には野巫(やぶ)と呼ばれる陰陽師が欠かせないから「野巫要り」(やぶいり)
漢字からすれば、草深い田舎へ帰る「薮入り」ですけど、語源の信憑性はわかりませんね。
ところで、
「藪」(やぶ)という語は、弥生(やぶ)の意味で、
“益々生える、いよいよ生える”からきています。 




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2010年03月28日

逆ねじ(さかねじ)

1、非難したり抗議したりしてきた人に対して、逆に非難したりして攻撃し返すこと。
2、逆方向にねじること。

昨今あまり耳にしませんが、
“やり返す”という表現に「逆ねじ」があります。
「逆ねじを食う」「逆ねじを食わす」と言い方をします。
「口答え」は、
目上の者に言われたことに対してさからった言葉を返すこと。
「逆ねじ」は目上の者だけに限らず、相手をやっつけ返すこと。

「抗弁」は、
相手の主張に対して、誤りを指摘したりなどして反論すること。

“強引に押し込む”“責める”“押しかけて抗議”するという表現に、
「ねじ込む」があります。

ところで、
「ねじ」といえば「右ねじ」--(時計回りに回すと、締め付けられるもの)がほとんどですが、これは右利きの人が多く、右手にねじ回しを持つと、右ねじは締める時に力が入り易いためだそうです。
「逆ねじ」は機能的に有効な箇所などの特殊な用途に用いられています。

「ねじ」は「捩じる/捻じる」の連用形からきていまして、
漢字は「螺子/捩子/捻子」が当てられています。

「螺」は、巻貝の意。または巻貝のようにぐるぐるとまいたもの。

「螺旋」(らせん)は、
1、巻貝のからのように渦巻形になっていること。また、そのもの。
2、ねじ。

「旋」は“ぐるぐる回る”意です。
難読に、
旋毛(つむじ)・旋風(つむじかぜ)・旋網(まきあみ)

「捩じ上戸」(ねじじょうご)という言葉を見つけました。
酔うと理屈を並べたて人にからむくせ。また、その人。

過去に「下戸(げこ)/上戸(じょうご)」で取り上げましたが、
酒をよく飲む人を「上戸」、
お酒が飲めない人を「下戸」と言います。
また「○○上戸」の形で、酒に酔ったときに出る癖を表します。
・笑い上戸
・泣き上戸
・怒り上戸
この三つを「三人上戸」と言います。
これに「説教上戸」が加わって、お酒の癖は大きく4パターンに分かれそうです。
他にも、
・空上戸(そらじょうご)
酒を飲んでも酔いが少しも顔に出ないこと。

・盗人上戸(ぬすびとじょうご)
1、酒も甘い物も好む人。両刀使い。
2、酒を多量に飲んでも顔やようすに酔いの現れないこと。また、その人。

「盗人」も「ぬすびと」と言うと、なにやらわけありの情を感じますが、「ぬすっと」には突き放した蔑みを感じます。
「ぬすっと」は「ぬすびと」が転じたものです。




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2010年03月21日

物相飯(もっそうめし)

物相に盛った飯。盛りきりの飯。
特に、近世の牢獄で囚人に与えられた飯。

浅田次郎の「ハッピー・リタイアメント」で見つけました。
「物相飯」がどんな飯なのか、まったく想像できませんでした。

「物相」とは、
飯を盛って量をはかる器。
また、飯を一人分ずつ盛って出す器。

こう辞書にはありました。
ご飯をはかる軽量カップみたいな物?
どういう存在かよくわからなかったので、検索してみましたらやっと実態がわかりました。
ご飯の型抜きのことをいうようです。
「相」は木型のことで、同じ形の物を沢山作るための木型です。
お弁当に梅や松の形で抜かれたご飯が入っていますが、あれを「物相ご飯」といい、その形を作る型のことです。
和菓子用の型も物相型というようです。
田舎では祝いの時に押し寿司を作っていましたが、「物相寿司」というのもありました。

「相」には、
“すがた・ようす”という意味の
風貌・相貌・様相・面相・形相・血相・
という熟語があります。

「血相」(けっそう)って、
手相・家相・印相の後に並んだら、血液占いみたいに思いません?
「血相」は、“顔の表情・顔色”という意味ですが、
・血相を変える
という決まりきった言い方でしか使われていませんね。

「形相」(ぎょうそう)も“顔かたち”という意味ですが、
・必死の形相
・鬼のような形相
恐怖や怒り嫉妬など激しい感情の表情にのみ使われます。

「面相」(めんそう)は「相貌」や「容貌」「容姿」と同じニュアンスでは使われません。
・よくその御面相で・・
・怪盗20面相

「貌」は1字で、“顔立ち”“容姿”という意。

ちなみに、
「美人」は“美女”の意ですが、古くは男子もさしたようです。
「美貌」(びぼう)は、“美しい顔かたち”で、性別のことには触れていませんが、ほとんど女性の誉め言葉になっていますね。




posted by 空凛 at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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