2017年11月30日

反射代名詞(はんしゃだいめいし)

一人称・二人称・三人称の別に関係なく実体そのものをさす。
「反照代名詞」「反射指示代名詞」「再帰代名詞」ともいいます。

ながく言葉を取り上げてきましたが、
「反射代名詞」に行き当たりませんでした。
文法が苦手で、その方面を避けてきたからかもしれません。
そんな私ですから、説明を読んでもピンときませんでした。

反射代名詞をあげると、
自分・自己・己(おのれ)・みずから・・

英語における再帰代名詞は myself・yourself・himself・・ など。
再帰代名詞は同じ節の中に主語を先行詞として持ちます。
英語の再帰代名詞 myself・yourself を訳す時、
“わたし自身” “あなた自身” などの語が作られました。
元々 日本で「反射(反照)代名詞」と呼ばれていたものに、
ヨーロッパ語が入って「再帰代名詞」という名称が加わった。
という経緯のようです。

反射代名詞の例文
・やっと強い私という殻を破り、弱い自分を見せることができた。
・君が自分でやりなさい。
・彼は自分を傷つけた。

「自分」は和製漢語。
自分の「分」は、本来備わっている性質を意味する「本分」の「分」で、
「自らの分」=自らの力量をさす語でしたが、
古くから “私自身” を意味する語としても用いられました。
「自分」は そもそも再帰代名詞ですが、
現在では、一人称の「自分」や二人称の「自分」もあります。
一人称の「自分」は、
軍隊で、自分のことを “私” “僕” とは言わず、
「自分」というように統一されたことからきています。
二人称の「自分」は関西発祥です。
関西芸人たちの「i自分」「you自分」の入り混じったおしゃべりが笑えます。

「己」(おのれ)も反射代名詞ながら、二人称としても使われます。
二人称としての「おのれ」はケンカ腰の時。
さらに荒っぽく変化したものが「おどれ」や「おんどれ」。
古語では、自分を卑下する一人称の「おのれ」もありました。
また、悔しさ・怒りを表わす感動詞としての「おのれ〜」まで。
おもしろい広がりです。

最後に「己」のつく四文字熟語を紹介します。

「已己巳己」(いこみき)
互いに似ているもののたとえ。

四文字熟語の本でパッと目に飛び込んできました。
古代文字のような、暗号のような、インパクトある熟語です。
「已」訓読みは「すでに」「のみ」、音読みは「イ」
「己」訓読みは「おのれ」、音読みは「コ」「キ」
「巳」訓読みは「み」、音読みは「シ」、12支の6番目へびです。
覚え歌もあります。
-----------------------------------------------------
「み」はうえに、「すでに」「やむ」「のみ」中ほどに、
「おのれ」「つちのと」下につくなり。
-----------------------------------------------------
4文字並んでいますが、漢字は3文字というのも、
ひっかけ的なユーモアを感じます。




posted by 空凛 at 08:38| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月29日

大和言葉

図書館の棚を眺めても、大和言葉に関する本は少なくない印象があります。

「一目置かれる大和言葉の言いまわし」 山岸弘子
「日々の会話が華やぐ大和言」 山下景子
「さりげなく思いやりが伝わる大和言葉
常識として知っておきたい美しい日本語」 上野誠
「大和言葉の便利帳」

そして今回 紹介する大和言葉は、 
高橋こうじ著「日本の大和言葉を美しく話す」からです。

■ ほんのお口汚しですが
「口汚し」とは、
食物が少量なため口を汚す程度で満腹しないこと。
“わずかな量です” と謙遜する言い方。

■ ○○様には御清祥のこととお慶び申し上げます。
手紙の形式として、
○○「様は」ではなく「様には」とします。
文法的にはおかしいのですが、
尊敬する人の名を主語として直接的に語ることを失礼ととらえる日本文化が生んだ習慣です。

■「月影」(つきかげ)
月の放つ光、あるいは光を放つ月そのもの。
大和言葉の「影」には「光」という意味もあり、
「星影」は星の光のこと。
光を影で表現するなんて、なんて繊細な感性。

「影」
1、ひかり。
2、かげ。物が光に照らされできる、暗くなっている部分。
3、すがた。かたち。また、水面や鏡に映った形。
4、うつしとる。


■「きざはし」 階段のこと。
きざ=刻、はし=橋

■「かわひらこ」 蝶のこと。
“河原でひらひら飛ぶ” というところから。
今風な省略形ネーミングでした。

■「和毛」(にこげ)
「にこにこ」「にこやな」の「にこ」。
「にこ」は、柔らかで穏やかな様子。

■ 「天地」(あめつち)
1、大空と大地。
2、天の神と地の神。
昔の人にとっては空と地面が全宇宙でした。
畏敬の念をもって眺め崇めたことでしょう。
「あめつち」は言霊(ことだま)と共に、
日本人の遠い記憶をよびさますような、心に響くものを感じます。


読者様から質問がありました。
●日本語の「かわいい」と中国語の「可愛」の関係は?

大和言葉の「かわいい」に
元々、中国にあった “かわいい” 意の「可愛」を当てたものだと思われます。
「可愛い」は当て字。

「かわいい」は「顔映し」から転じたもの。
▼「かわいい」の変遷
かほはゆし (顔映し)
↓ かははゆし --- 音変化
↓ かはゆし ---- 短縮
↓ かわゆい ---- 口語
↓ かわいい




posted by 空凛 at 09:01| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月28日

捨象(しゃしょう)

(デジタル大辞)
事物または表象からある要素・側面・性質を抽象するとき、
他の要素・側面・性質を度外視すること。

「捨象」という語を全く知らなかった私は、
この説明に? ? ?
もっとわかりやすい説明はないものか。

(goo辞書)
概念を抽象する際に、
抽出された諸表象以外の表象を考察の対象から切り捨てること。

(漢和辞書)
多くのものの中で、
共通するところを抜き出して一つの考えをまとめる時、
共通していないものは捨てさること。

Webによりわかりやすい説明がありました。

「抽象化」とは、
思考における手法のひとつで、
対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して他は無視する方法。
抽象化において無視することについては「捨象」するという。
「捨象」は、
事物を抽象化するために本質的では無い要素を捨て去ること。
「捨象」と「抽象化」は表裏一体の関係にある。

「抽象」とは、
ある事物の全体から特徴だけを抜き出し把握すること。
「抽象化」とは、それを一般化すること。

さらに、こんなWebの記述に行き当たりました。
“「抽象化」は「帰納」という操作の一種でしかない”

「帰納」とは、
個別的・特殊的な事例から
一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする
論理的推論の方法のこと。

「抽象」の対義語は「具象/具体」
「抽象的」の対義語は「具体的」
「抽象化」の対義語は「具体化」
「帰納」の対義語は「演繹」

ちなみに、英語では「抽象」と「捨象」を区別せず、
どちらも「abstruction」です。

最後に、
「捨」と「象」に思わぬ意味が隠れていないか確認します。

「捨」 シャ・す-てる
1、すてる
2、ほどこす --- 喜捨

「象」 ショウ・ゾウ
動物のゾウの形にかたどった象形文字。
1、ゾウ
2、物の形
3、物の形をかたどる




posted by 空凛 at 08:42| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月27日

馴致(じゅんち)

1、なれさせること。なじませること。
2、次第にある状態になるようにしむけること。

ブリタニカ辞典の解説には、
人間が動植物を飼育栽培し、繁殖させることをいう。
とありました。

Webにもほとんどが動物の飼育や繁殖に関するものばかりです。
競馬の世界では、
馬具を装着するところから馴らしていく「馴致調教」が行われます。
ハミ馴致 → 調馬索馴致 → 腹帯馴致 → 装鞍馴致 → 騎乗馴致
というような流れだそうです。
他には、
牛の放牧馴致、豚の馴致、魚養殖での海水馴致・塩分馴致水槽、子犬の馴致などの記述が見られました。

動物に関連しない「馴致」の使用例も紹介しておきます。
・心を観じて悲しみを得、悲しみを馴致して思想の一組織を得た(小林秀雄)
・千年万年の間に馴致された習慣を私一代で解脱する事ができないので・・・(漱石)
・急に殺到してくる<社会>にたいして馴致しようとしてもがき・・(吉本隆明)

「馴致」はこのような使い方もできるわけですが、
これから使うことがあるかどうか・・・・。

「馴」
ジュン・なれる・ならす

「なれる」には「慣れる」と「馴れる」がありますが、
「慣れる」は 物や経験など。
「馴れる」は 動物がなつく。人になじむ。
「馴れ合い」「馴れ初め」は「馴」です。

「磯馴松」(そなれまつ)という語も拾いました。
「磯馴れ」(そなれ)とは、
潮風のために、木の枝や幹が地面にはうように生えていること。

「馴」の付く熟語は私には見慣れないものばかりです。

「馴化/順化」(じゅんか)
1、生物が高地移動・季節変化などの環境の変化に
数日から数週間かけて適応していくこと。
2、野生の動物を人間の生活に役立てるために馴らすこと。

「馴養」(じゅんよう)
動物を飼いならして育てること。

Webには微生物・細菌などに関して多く使われていました。
・メタン菌の馴養
・活性汚泥馴養
・酵母の馴養
・乳酸馴養
・馴養堆肥

「活性汚泥」とは、
下水や廃水中に生じる細菌などの微生物からなる汚泥。
通常の汚泥との違いは有機物質や無機物質を摂取して分解する能力をもつこと。
下水や工場排水などの処理に活性汚泥法が使われています。

「雅馴」(がじゅん)
文章や態度に品があって洗練されていること。

「がじゅん」って、音が濁っていて洗練のイメージから遠い響きです。
この語も明治の文豪が使って以後、消えつつあります。




posted by 空凛 at 08:36| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月26日

「最近」と「近頃」と「このごろ」

以前、
<先日ってどのくらい前?>というタイトルで、
「先日」を取り上げました。
先日に具体的な決まりはなく、
人によって数日から1年まで、
かなり幅があることがわかりました。

「最近」も人によってだいぶ開きがありそうです。
こうした語は曖昧なところに意味があると思うので、
どのくらいと、こだわものではないでしょうが、
「最近」「近頃」「このごろ」の違いは気になります。
辞書の意味を比べても、違いがわかりませんが、
時間の幅が違うようです。
時間の幅が長い順に、
最近 > 近頃 > このごろ

「最近」(さいきん)
現在より少し前のある時。少し前から現在までの間。

「近頃」(ちかごろ)
このごろ。最近。近来。

「このごろ」(此の頃)
1、少し前の時から現在にかけての期間。近頃。最近。
2、ちかいうち。近日。
3、今のこの時期。今時分。

<使い分け>
「近ごろ」「このごろ」は、
状態・継続・反復される動作について用いられ、
一回限りの事象、瞬間的現象には使えませんが、
「最近」は、これらすべてに使うことができます。

「最近就職したばかりだ」のように、
現在に近い過去のある特定の時点をさす場合、
「このごろ」や「近ごろ」が使われることはめったにありません。


「きょうび」という言い方はしませんか?

「きょうび」
今日このごろ。今どき。

漢字にすると「今日日」。
「今日」を強調するために「日」を付けたものですが、
ダブった「日」が、入力ミスに見えます。
・今日日珍しい美談だ

大阪弁・京都弁・甲州弁としても載っていましたが、
普通に通じますよね。


“この間” “先日” という言い方も複数あります。
「先だって」「先般」「過日」「過般」

「先達て」(せんだって) 名詞
さきごろ。先日。
・先だってはお招きいただき、ありがとうございました。

紛らわしいことに、goo辞書にはこう載っています。
「先達て/先立って」(さきだって) 副詞
「さきだちて」の音変化
1、さきごろ。先日。
2、前もって。あらかじめ。
・イベントに先立って説明会を開催したいと思います。

「先達て」を「さきだって」と読むのかと思いました。
Webには、「さきだって」と読むと説明している記事もありました。
混乱しましたが、
「先達て」「先立って」と漢字を書き分けてあればわかりますね。
「せんだって」(先達て)は
過去のことを取り上げていうときに使い、
「さきだって」(先立って)は、
何かを他より先にすること。




posted by 空凛 at 08:21| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする